文章力要る、要らない問題(解決せず)
よく、なろうで人気が出るには文章力が要る、要らないなんて議論を目にする。
私は人気が出る、出ないはともかく「あるに越したことはない」派です。
そりゃあ、無いよりあったほうが良いよね。
では小説を書く上での文章力とは何だろうか。
これは私の個人的な考えでしかないが、「ゲームにおけるグラフィックス」あたりに該当すると思っている。
素晴らしいグラフィックスは、それだけで人を感嘆させる力がある。
でも。
それだけで「面白いゲーム」と言えるかどうかだ。
ロマンシング・サガというゲームがある。
国産RPGにおいて伝説的なゲームだから、説明なんて不要かもしれないが。
プレイしたのはもうかなり前だが、私はその中で、今でも心に残る演出が二つほどある。
ひとつは、ロマンシング・サガの初作。
ラストバトルを迎えたプレイヤーが、敵のボスへとゆっくり歩み寄る。
そして、姿を見せたボスとともに流れる専用BGMの格好良さ。
思い出すだけでも、当時の興奮が蘇る気持ちだ。
これはゲームならでは、という表現だと思う。
もう一つが、同作の二番目、ロマンシング・サガ2だ。
詳しくは書かないがこの2は、どんどん主人公が代わるというゲームのシステム上、主人公の影が薄い。
そんな中、私が今でも心に残る演出は、初代主人公にちなんだものだ。
初代の主人公、皇帝の次男ジェラールは心優しい青年ゆえ、周囲に少し頼りなく映っている。
兄からも「ジェラールは戦いに向いていない」と評される。
そんな評価をジェラール自身も受け入れながらも、皇帝の次男として、皇帝とともに戦いに赴く。
皇帝と共に戦い、戦果を上げ戻ったジェラールだったが、そこで留守中に別の勢力との戦闘があり、城を守っていた兄が戦死する場面に出くわす。
皇帝は復讐を誓うが、それを果たすにはある条件があった。
それは皇帝自身の命に代えて相手の技を見切り、ジェラールへと受け継がせること。
皇帝はそれを見事に果たし、ジェラールへと技と意志を託す。
皇帝から意志を託されたジェラールは、父と兄の仇討ちの為に出陣する。
「ジェラール様にはついていけないよ」
などという者がいる中、ジェラールの出陣を城内に伝えるために、伝令の兵士が叫ぶ。
「ジェラール様の⋯⋯」
そこまで言った兵士は己の過ちに気づき、自分の言葉を訂正しながら叫ぶ。
「皇帝陛下の御出陣ー!」
見事としか言えない。
その兵士の言い直しだけで、普段は優しさが目立ち、周囲に少し甘く見られていたジェラールが、兄と父の死を乗り越え、皇帝として相応しい威厳と意志を周囲に発しているというのが、ありありと伝わる。
当時は最先端とはいえ、今見れば懐かしいとしか言えないグラフィックス。
表情なんてわからないし、グラフィックスよる細かい心理描写なんて皆無だ。
そして、くどくどとした説明もない。
それが、この兵士のちょっとした言い直しだけで、何年も私の心に残る場面を演出してるのだ。
面白さとは人によるとは思うが、つまりそういうことなのだろうと思う。
誰かの心に残せる場面を描くのは、文章力でも、シンプルな演出でも良い。
などと思った次第です。
では、またなにかあれば。




