迫られる選択
前回の続きめいた話になります。
主人公が正当な評価を回復する、という物語として、追放、ざまぁが現在選ばれているわけですが。
よく「なろうを読む奴は、普段はうだつの上がらない三十代、四十代の人間で、追放、ざまぁでスカッとする歪んだ奴らだ!」みたいな論調を見かけます。
ま、そういう人もいるかも知れません。
先日の事ですが、小学生の娘が動画サイトで何やら見ていました。
のぞき込むと、何やらストーリー仕立ての動画で、漫画の1コマを連続させるような感じでした。
内容は、典型的な『ざまぁ』ものでした。
配偶者を蔑ろにした夫または妻、またはその子供であったりが痛い目に合うとか、非常識な振る舞いをした人物が懲らしめられる、といった内容です。
私は子供に聞きました。
「これ、面白い?」
「うん、悪い人が懲らしめられると、スカッとする」
との事でした。
こんな出来事から、私は、最初に述べたような『三十代、四十代の~』という論調に疑問を覚えました。
かといって、小中学生が追放、ざまぁにおける主な読者層とも思えません。
私の予想は
『追放、ざまぁは老若男女、幅広い層に支持者がいるのではないか?』
ということです。
追放、ざまぁはしつこくなりますが以前書いたエッセイ『何故追放ものを読みたくなるのか~』に書いたとおり、集団生活を営む人の本能に、ダイレクトに訴えかけるものです。
もちろん、『そんな話は嫌いだ』という人もいるでしょう。
で、ですね。
私はブックマークはともかく、評価ポイントを付ける層ってのは、結構若い層なんじゃないかと思ってるわけです。
ブックマークや評価ってのは、最初に付けるのにやや抵抗がある⋯⋯気がします。
私個人の経験でも、動画サイトでチャンネル登録したり、グッドボタンを押すのは結構億劫だったりします。
知り合いも、年齢が高い層ほど上記のグッドボタンを押す、Twitterでいいねやリツイートを面倒がる人が多いです。
一方、若年層ほどそれらの評価行為に抵抗がないように見えます。
ま、これは私の予想というか妄想でしか無いわけですが。
とりあえず、現在のハイファンランキングにおいていわゆる『数字を持ってる』層は、『追放、ざまぁを好む人たち』とした場合。
それ以外の作品を書くのは、当たり前ですが数字は取りにくいでしょう。
一例として。
あなたが昼にテレビ放映する権利を得ました。
次の2つの中から、一つ番組を選ぶ事ができます。
不倫を扱ったドラマ。
本格的な経済ニュース番組。
どちらが『数字』を取れると思いますか?
おそらく昼にテレビを見るのは、主婦や仕事を引退した高齢者でしょう。
私は何も「主婦や高齢者はニュースなんて見ない」などというつもりはありません。
むしろ、こういうのを見たかった! という人も一定数はいるでしょう。
しかし、『その時間帯において、どちらをより好む層が多いか』と聞かれれば、圧倒的に『不倫を扱ったドラマ』だと思います。
よく、『ランキングには、面白い作品が無い』と言った主張を見かけますが、それは簡単な話『昼間に本格的な経済ニュースが無い』と嘆くのと似ています。
ただ単に、多数派ではない、ということです。
邦楽ランキング見ながら『日本の心、演歌が聞きたい』と主張するようなもんです。
そして、小説家になろうの場合、TVと違って時間という階層による、好みの変化はあまり起きません。
好まれるジャンルは、24時間好まれる、となるでしょう。
TVなら、経済ニュースも視聴されやすい時間帯などがあると思いますが、なろうの場合それはありません。
最近のランキングに、すごく面白いと思った作品がありました。
面白いと思ったので、レビューも書きました。
この作品は、間違いなく日間のトップを取るだろうと思ったのですが、堅調にポイントは伸びているものの、残念ながら表紙入りはしませんでした。
つまり、この作品を好む読者は多かったのですが、『多数派』ではなかったのです。
現在、すぐにランキングの一定の順位には食い込めるほどの固定ファンがいるような作家ならともかく、私を含めたほとんどの作家は、ハイファンを書く上で、ランキングを目指すには選択を迫られています。
追放、ざまぁを書くか、書かないか、です。
それ以外の作品を書くのは、上記の『昼間に本格的な経済ニュース』に似た選択です。
で、私個人の考えですが、今のところ書く気は無いです。
追放、ざまぁってのは、ほとんどの場合『多作を書く必要がある』からです。
追放、ざまぁは物語のピークがどうしても「ざまぁ」になりやすく、その先はよっぽど考えて書かないと蛇足になるからです。
一つの話をじっくり書く、というのには不向きです。
次から次に書ける、という人ならオススメです。
私の、今の生活や心情的には、多作はしんどいです。
てなわけで、我々には選択が突きつけられている、といった話でした。
では、また何かあれば。




