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01 違う家族。




ハロハロハロ!

○リポタ目指して、夢に見た内容を取り込みつつ、描いていくつもりです!


まずは三話読んでみてください!




 生きている世界が、違うと感じていた。

 どこかに自分に相応しい世界があるような気がしていたのだ。

 生まれてくる世界を間違えたのかもしれない。

 そうまだ幼いくせに思った。子どもながらの発想なのか。それともよっぽど、今いる場所に違和感を覚えるせい。

 名前はカリー。カトリーナから取って、カリーと愛称を決めたそうだ。

 たまにカトリーナと、両親に呼ばれることもある。

 両親は、共働きの家庭だ。サラリーマンとキャリアウーマン。

 子どもは、私だけ。内気な私に一人の時間を与えられるよう、心掛けているみたい。

 私は基本的にぼんやりとしている。

 ここは違う、とそう感じながら。

 目にする平凡な光景が、違うと思った。

 家庭は裕福な方だ。だから文句を言うなんて、罰当たりなんだと幼いながらも理解していた。

 けれども、小学校で行き交う生徒達を見ても、ちゃんとした授業を受けていても、私はやっぱり違和感を抱く。

 友だちにそのことを話しても、共感されなかった。これは私だけが感じていることのようだ。友だちと距離を感じた。両親もだ。これは打ち明けてはいけない違和感だと思って、黙っていたから内気な性格になってしまった。

 平穏な住宅街、賑わうショッピングモール、静かな広い家。

 どこを見ても、私は……。

 私の居場所がないと感じてしまっていた。

 だから、私は心を閉ざす。

 趣味はスケッチ。主に寝ている時に見る夢に、見たことをスケッチしている。

 私の夢にはよく蛇が出てきて、そんな蛇の絵が何枚も壁に貼り付けた。

 白い蛇。魅力的だと思う。不気味さを感じたことはない。首に巻いて頭を撫でてやるくらい、その蛇を気に入っている。もちろん夢の中の話。

 蛇なんて、実際は動物園で見たくらい。飼いたいってほど好きなのかは、よくわからなかった。だから、ペットにしたいとは言わない。

 蛇をペットにすることも、なんか違うと感じた。

 私の人生は、違うことだらけだ。


「カトリーナ。大事な話がある、こっちに来てくれ」


 父親のサムに呼ばれて、私は蛇のスケッチを途中でやめた。

 だいぶ重たい雰囲気を感じ取って、ちょっと何事かと思いつつも、リビングに向かうと、母のトリーナがもういる。俯いているその姿は、泣いているようにも思えた。

 二人とも黒髪なのだけれど、私は赤みのある茶色の髪だ。それを前下がりのボブにカットしてもらい、右側の髪の一部だけ三つ編みにしている。それが最近のお気に入りの髪型だ。

 向き合うようにソファーに腰を下ろしても、すぐに口を開かなかった。

 父が重たい口を開いたのは、私が「なんの話?」と急かしたあとだ。


「カリーが産まれた病院から連絡があってな……」

「私が産まれた病院?」


 そう言えば、病院はここから離れた場所だと聞いたことがある。

 私の生まれた病院が近所の病院ではないのは、二人でささやかな旅行を楽しんでいたからだ。予定日よりも早く産まれてしまって、近くの大きな病院に駆け込んだという話を聞かされた。

 そんな縁のある病院からの連絡。

 予想の出来ない私は、父の言葉を待つしかなかった。


「……カリーは、取り違えた子どもだそうだ」

「えっ?」


 取り違えた子ども。

 それを聞いても、理解が出来なかった。

 また重たい沈黙になる。


「……どういう意味?」


 理解が出来ないと白状をすると、また父は口を開いた。

 母は泣く。ただ泣いている。


「産まれたあとに……他の子どもと間違えたんだ」


 言葉を失ってしまう。

 ギスギスとした重たい空気の中、私は喉から声を絞り出す。


「じゃあ、私……二人の子どもじゃないの?」

「……」


 父の沈黙が、肯定となった。

 母が声を上げて泣く。

 前にテレビで見かけたことがある話。出産後に子どもが入れ替わってしまって、本来の家族と引き離されてしまうもの。あまりにも似ていない双子が、DNA鑑定して発覚するパターンが取り上げられていたっけ。

 そう思い出していた私は、口を閉ざして、実の父親ではないサムの話を聞いた。

 名前は産まれる前から決めていたため、ちゃんと名前の書かれたベビーサークルに寝かせていたそうだ。

 しかし、時同じくカトリーナという名前の赤子がいた。

 同性同名の赤子が、途中から入れ替わってしまったと病院側から言われたそうだ。

 発覚したのは、私の本当の家族が問い合わせしたからだという。

 十一歳になる年のある日。

 私は、違う家族と生きていたことを知った。

 ずっと抱いていた違和感の原因が、明らかになった春の終わる頃。



 

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