第4話『じゃあ、最初から走るな』
〜前回までのあらすじ〜
東くんは幽霊で、柳下市は心霊スポットで安田は霊感あるみたい。
なんか後付けっぽいよね。
「でも俺、霊が見えるってだけですよ。それが何か役にたつんですか?」
安田はもとより入るつもりは無かったが、疑問に思ったことだけでも質問してみることにした。
「危険度Dの霊体を見る事ができるって事は霊力もかなりあるはずね。その霊力で悪霊を退治して欲しいの」
安田の質問に白下の隣りにいた、髪の短い落ち着いた雰囲気の女性が答える。
「えっ!?悪霊って、そんなのいるんですか?」
安田の声が俄かに大きくなった。
「いるわ。未だ人間界に未練を遺す浮遊霊や自縛霊。それらが突然変化し、人を襲う存在になるの。私達は今のところそれを悪霊と呼んでるけど・・・あれは化け物の類いね」
(それって・・・)
安田はある事を思い浮かべたが、あえて口にはしなかった。
「まぁ、わかりやすく言うなら、ブ○ーチで言うところのホ○ウね」
その女性はさらりと付け加えた。
(言っちゃったよ、この人・・・)
安田が驚いている間にも、その女性はさらに話を続ける。
「防霊課はその原因を調べる研究班と、被害を防ぐ防衛班とに分かれているの。あなたには防衛班に入って欲しいの」
「あの、そう言われてもいきなりでは・・・その頭も整理できてないので」
すべてが突然過ぎて安田の頭は混乱していたが、とにかく゛一度この場を離れたい″という気持ちだけは固まっていた。
(なんとかこの場を逃れられる、うまい理由はないかな)
安田は必死にそれを探したが、たくさんの事が頭を巡り過ぎるために、まともに思考できない。
「ゆっくりここで考えていいのよ」
安田の考えを理解しているかのように、その女性が話す。
まるで牽制されたかのように安田は感じた。
(ピピピピ…ピピピピ…)
その時、話をしていた女性のデスクの方向から高い電子音が鳴り響いた。
デスクの引き出しからそれを取り出すと女性はこう呟いた。
「悪霊出現、危険度はC以上ね」
「・・・」
その女性が手にしているものがド○ゴンレーダーに酷似している事に、安田は触れなかった。
「安田くんと言ったわね、丁度いいわ。伊澤・木津のバディについてみて、悪霊がどんなものか見て来たらどう?」
(そんな急に・・・)
安田が言いかけたトコロに、奥の方に座っていた大柄の男が立ち上がり話しかけてきた。
「伊澤です、よろしくお願いします」
伊澤は体に似合わず丁寧な言葉遣いで挨拶をした。
顔は気の弱そうな、とても“防衛班”と呼ぶには頼りない印象を受けた。
「はぁ、よろしく」
安田が挨拶を返すと「では急いでついて来て下さい」と言って、伊澤は部屋を出て階段を駆け上がっていった。
「強引だなぁ」
安田は一言呟くと目線で木津を探した、が既に姿は無かった。
いつの間にか先に行ったようだ。
安田はとりあえず追いかけてみることにした。
(追いつかなければそのまま帰ればいい。いっそ追いつかなければいい)
そう思いながら階段を駆け上がった安田は、何故かまだ窓口付近にいた伊澤の大きな背中にぶつかった。
「つぅっ・・・」
「大丈夫かい安田くん。でも市役所は走っちゃダメだよ」
<きょきょきょ、今日のハイライト〜>
「つぅっ・・・」
「大丈夫かい安田くん。でも市役所は走っちゃダメだよ」