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二柱の神

 俺達が暮らす世界フラクシオには、元々二柱の創造神がいた。

 光の神、ローリメデス。

 闇の神、アファロア。

 この二柱の神々は、姉、弟関係だったらしく、大昔の文献にも記されていることだ。ただ、仲はかなり悪かったらしく、いつも何かしらの言い争いをしていたり、勝負事をしていたという。


 一度、その勝負事の最中に地上へと偶然にも降り立ってしまい、人々はその光景を見かけ呆気に取られた。それはなぜか? あまりにも二柱が神々しかったから? その勝負事か人知を超えていたから? どれも違う。

 どうやら、あっちむいてほいをやっていたらしいが、神々の勝負事にしては、あまりにも平凡過ぎて大昔の人々は、どう反応したらいいのか困っていたようなんだ。しかし、そのおかげもあってか、二柱は親しみやすい神々ということで、より信仰心が高まったというのだから、なかなかどうして……。


 そんな神々だが、ついに歴史的にも一位、二位を争う出来事が起こってしまった。

 闇の神、アファロアがフラクシオから出て行ってしまったのだ。

 いったい何が起こったのかは、人々にはわからないが、いつもの喧嘩ではないとは理解していた。なにせ、アファロアが去り際に世界中へとこう宣言したからだ。


「俺は、新たな世界を創る!!!」


 この宣言通り、新たな世界が創造された。

 それが。


「魔界、ですね」

「ああ。お前達、魔族なら誰でも知っていることだ。魔界を創造せし闇の神アファロア。アファロアは、どうやら姉が邪魔しに来ないように結界を張っていたらしくて、それが今のフラクシオと魔界を隔てているものだ」


 そして、ローリメデスも、アファロアに対抗すべく、天界を創造し、天使達などが誕生。これにより、迂闊にはこちらには攻めて来れまいと踏んでいたようだが、甘かった。

 そんなもの関係ないとばかりに、この世界に刻まれる最初の魔王を送り込み、人々を恐怖させた。


「あの、アファロア様と仲のいい魔王から聞いた話なんですが」

「なんだ?」

「仲たがいしている今も、ローリメデス様とアファロア様は会っているとか」

「……」

「さ、さすがの兄貴でもそこまでは知らないですよね、すみません」


 と、謝ってくるクルルベルだが、俺は気にするなと言う。


「あ、あのどうして笑ってるんですか?」

「いや、なんでもない」


 おっと、これは失敗だ。思わず、こいつの驚いた顔を思い出して笑ってしまった。


「それよりも、俺達のこれからについて話し合おう」

「は、はい」

「お前もわかっているだろうが、いまや世界中に俺が魔王を子分にしたことが広まっているはずだ。当然、俺は世界中から疑われるだろう」


 魔王を倒したのならば、称えられるだろうが、子分にしたというのだから困惑だろう。俺でも、そんな報告を聞けば反応に困ってしまう。

 だが、俺は後悔はしていない。

 こんなに可愛い生き物を殺すなど、とんでもない。例え、魔王だろうと無害なものを容赦なく殺すほど俺は残忍ではないからな。


「はい……」

「俺の予想だが、近々尋問をされるだろうな」

「い、痛いことはないですよね?」

「それはないだろ。俺がそうさせない。そもそもあっちも、相手が魔王だから迂闊なことはできないはずだ」


 まだ、俺と俺を出迎えてくれた監視役達以外は、クルルベルのことを知らない。とはいえ、見た目などは広まっているだろうけど。


「うぅ、私そんなに凶暴に思われてるんでしょうか?」

「俺は思ってないが、世間では魔王っていうのは世界を侵略せんがために魔界からやってきた魔族の王ってことになってるからな。だが、心配するな! お前が実に無害で、可愛くて、可哀想な奴だって知らしめれば、世間の認識も変わる!!」

「さ、最後のは余計ですよ! 兄貴!!」


 ともかくだ。明日にでも尋問が始まるだろうから、その間に色々とやっておかなくちゃな。どんな質問にも答えれるように対策を練るとか、後は……。


「魔王様ぁ!!」

「来たな、お邪魔虫め」

「あっ、いらっしゃいシルム」

「はい、お邪魔します魔王様」


 話すことも話したので、魔王城から離れようと考えた刹那。タイミング悪く、会いたくない奴が来てしまった。俺があっさりと倒した自称魔王の側近だという男。

 見た目は、美人だが男だ。

 クルルベルと同じく、黒い髪の毛だが、赤が入り混じった不思議な髪の色をしている。どうやら、魔族は血縁関係で、体に色々と変化が生じるらしい。クルルベルのように瞳に現れたり、こいつのように髪の毛に現れたりと。


「ところで、誰がお邪魔虫だ! それは貴様だろうが!」

「俺は、こいつの兄貴だ。お前は女装でもしてるんだな、男の娘」

「誰が女装なぞするか! 僕は、男だ!!」


 そんなことを言われてもその容姿だと誰だって女だと勘違いしてしまう。


「そう思われたくなければ、少しは努力したほうがいい。まずは、見た目からだ。髪の毛を切れば、少しはマシになるんじゃないか? それか髭を生やすとか」

「僕は、魔王様のために髪の毛を長くしている。切るなどもってのほかだ!! そして、髭など一度も生えたことが無い」

「そうなのか?」


 髭が一度も生えないって、魔族の体の構造は便利だなぁ。それにしてもどうして、髪の毛を伸ばさせているのかとクルルベルに問うと。


「か、可愛いから」


 うん、納得だ。


「ということで、魔王様からも男とは思われていないようだが」

「魔王様は特別だ」


 なんという忠義の心よ……こんな露骨なまでの差別はあの馬鹿勇者に匹敵する。


「話はここまでだ! さっさと魔王城から去るがいい!!」


 どうしても、俺をクルルベルから遠ざけたいらしく、柄に手を沿え、いつでも抜けるように構える。


「言われなくても、今から出て行くつもりだったよ」


 俺もそろそろ帰らないと、心配する奴が居るからな。一度凱旋とばかりに帰還した時は、なんとも言えない反応だったのを覚えている。

 それもそのはずだよな。魔王を倒したのではなく、子分にしたという異例。尚且つ、それをやり遂げたのは勇者ではなく、勇者の仲間であるソードマスターという男。ちなみに、一度帰ってすぐこっちに来たのでバッカスには会っていない。あっちから、顔を出してくるかと思ったが、そうでもなかった。やはり、本当に魔王をどうにかしてしまったので、どうすればいいのかわからなくなってしまっていたとか?

 それはそれでざまみろって感じだけど、とりあえずリーミアとエルカにはこのことを話しておかなくちゃな。馬鹿勇者よりは、信用できる二人だし。


「そうか、ならばさっさと去れ。今すぐ、即刻に!!」

「落ち着け、同じような意味の言葉を投げつけるな……まったく。じゃあな、クルルベル。また来るぞ」

「はい、次来る時は、新作のお菓子を用意して待ってますね」

「ああ、楽しみにしてるぞ」


 そうだ。途中の街で土産でも買って行くか。何も持って行かないよりは、土産の一つや二つあったほうがいいだろう。

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