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プロローグ

本日、勇者はファンタジーから逃れられない! の第四話が配信されています。

それを記念して特別編をまた投稿しようと思っています。

本日中には投稿できると思いますので、よろしくお願いします。

「……寒い」

「さ、寒いですね」


 俺達は、黒き森の一件から、何やら異変解決のスペシャリスト的な存在として知られるようになったらしく、ギルドを通して異変についての調査を名指しで依頼がきた。

 しかも、大陸を越えてだ。


 俺達が住んでいる大陸は比較的暖かい気候が多く、冬でもそれほど寒くは無い。変わりに、夏になると大陸一暑い気温になることがあるんだがな。

 そんなこんなで、俺達が現在居る大陸は、そこはまったく逆のところ。


 年がら年中雪に囲まれている冬の大陸。

 そこのとある西方にあるユドルフという街のギルドからの依頼。俺達が住んでいる王都からだと、港へ行き、大陸を船で渡り、更にそこから陸路でユドルフまで行くことになるので、合計四日もかかってしまった。こういうのがあるから、転移魔法が自由に扱えればいいのだが……ママに頼めば一瞬だが、あまり創造神が力を使うのは、世界に影響を及ぼすかもしれないからな。


「いやぁ、着いたのはいいけど、もうちょっと着込んでくればよかったね」

「確かに、そうだが……ふむ」

「あ、兄貴どうかしたんですか? なにか気になることが?」


 ようやく街に到着した俺達は、現在ギルドに向かっている最中だ。今回俺と一緒に来てくれたのは、クルルベルとエルカ、そして。


「魔王様。こいつのことです。どうせ、ろくなことを考えていませんよ。おそらくは、魔王様の防寒着姿を見て妄想にふけっているだけです」

「間違ってはいない」

「やはりか!」

「お前だって、妄想ぐらいするだろ? いや、それよりも俺が心配してるのは、バッカスのほうだよ」


 バッカスは、もう戦えるぐらいまでに回復した。そして、今は世界のために勇者として活動をしている。そう、バッカスは帰還することなく、今起こっている異変の解決のために活動せよと神の言葉があったのだ。……まあ、ママなんだけど。

 ママも今起こっている異変については、ちゃんと解決すべきだと判断したのだろう。


「大丈夫だよ。あっちには、リーミアにカルミナがついてるんだからさ」

「仮にも勇者だから心配するだけ無駄……と言いたいところだが、今までの経緯から貴様が心配するのはわかる」


 さすがのシルムも、俺の意見に同意してくれたようだ。あいつも、前回の事で学習したと思うし、二人がついているから大丈夫だとは思うが……。


「兄貴は、バッカスさんがまた敵に襲われないかって心配なんですよね」

「ほう。貴様がな」


 なにやら、勘違いをしているようなので、俺は訂正を入れる。


「違う違う。敵じゃなくて、味方。カルミナに殺されるんじゃないかって心配なんだよ」

「あー……なんだか想像できちゃうかも」


 最初の頃のカルミナは、勇者の信用を得るためにあえて控えめな性格をしていたようだが。もう、そんんなことをする必要はなくなったと言っていた。 

 何かされたら、リーミアに何かをしたら容赦なくボコるとか宣言していたからな。あいつが、ボコると言ったら絶対やる。容赦なく絶対バッカスをボコボコにするだろう。


「ま、やり過ぎないようにって言っておいたし。リーミアもついてるから大丈夫だろ。それより、ギルドに着いたぞ」


 周りを見渡せば、一面の雪景色。どの建物にも雪が積もっており、それを落とすのが日課かのように屋根の上に登って雪を落としている光景がちらほらと。

 ギルドもそうだ。

 ギルドの従業員であろう男性二人が、屋根に登って雪を下ろしている。屋根から滑らないように、魔力で足を固定しているみたいだな。他の者達もそうだ。

 年がら年中雪に囲まれたところだからか、こういうことには慣れているみたいだな。


「やあ、待っていましたよ。あなた方が、キリバご一行様ですね」


 ギルドに入ろうとしたところで、出てきたのはめがねをかけた優男だった。周りの雪と同じく、真っ白な髪の毛をしており、ふさふさの毛がついたフードをついたコートを着込んでいる。


「ああ。俺がキリバ。そして、子分のクルルベルに、その側近のシルム。そして、勇者パーティーから来てくれたエルカだ」

「始めまして」

「ふん」

「どもどもー」

「よろしくお願いします。僕の名は、オルベ。このギルドのギルドマスターをしています。さあ、中へ。詳しい話は、温かい場所で、温かい飲み物でも飲みながらゆっくりとしましょう」

「ああ」


 さてはて、こんな寒いところで、いったい何が起きているんだろうか……。

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