カーチェイス!!
凸凹な道による振動に体が浮いてしまうのを手すりを握りながら必死に防ぐアイザックは大声で怒鳴る。
「いったいどうなってんだ。俺はただの迎えだろ。中佐に銃を持っていけと言われたから変だなとは思ったけど、追いついてどうすんだリアム」
「やつらがさらったご老人はなにかを知っていた。口封じになる前に助ける」
アイザックがなにか言おうとしていたがリアムはさらにアクセルを踏み込んだ。
「速すぎだ!」
すると少し速度を落としたリアムは思わず叫ぶ。
「見つけたぞ!」
「どこにだよ。畑と田んぼしか見えんぞ」
「日ごろから本ばかり読んでいるから見えんのだ。進行方向の三十度左!!目を凝らしてよく見てみろ」
リアムは速度を落とし細い道へと左に曲がる。そして再び踏み込む。ようやくアイザックにもはっきりと見えてきた。
「リアムやつらの目的がなんなのかは知らないがどこにいくのか見当ついているのか?」
「さあな。だか町じゃない。あっちは何もないが」
「それは怪しいな。新しいネタに使えるかも」
アイザックは嬉しそうに言った。
リアムが運転する車がぴたりと後ろにつけると、車は急に速度を落としてきた。
ハンドルを叩いてリアムが言う
「こしゃくな。追い抜いてやる」
「やめろ。道幅が足りない」
アイザックは落ち着いていた。道幅は車一台半ほどで路肩は、一メートル弱の斜面になっている。
「このやろうめ、これが空の上なら制圧できるのに」
苛立つリアムはクラクションを鳴らしまくる。
「こうなったら地獄の果てまで追いかけてやる」
「むちゃくちゃだ・・・・・・」
アイザックのため息がもれたその時突然車が加速した。進む先には幅の狭い橋があった。
「逃がすか」
車の左後ろの窓から手が伸びていた。その手がなにか握っているのをアイザックは見逃さなかった。黒くて丸い物。
「!?リアム!手榴弾だ!」
アイザックが叫んだのと手榴弾が投じられたのはほぼ同時だった。橋の手前で思いっきりハンドルを切る。
「!!!」
車は草が生い茂る斜面を転がり落ちた。
どかーーーん
と橋が吹き飛ぶ音がしてリアムたちは天井に頭を二回ほどぶつけて車は止まった。
すばやく車内から出ると老人を乗せた車は再び速度を上げて走り去ってしまった。
「おいアイザック?」
「おはようリアム。なんだ朝ごはんはまだか?」
「なにをとぼけている」
アイザックが車内からリアムを見つめる。
「頭を強く打ったが外傷はなしお前は大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ」
「爆弾が見えたか?」
リアムは首を振った。
「危なかったつい悪い癖が出た」
「真面目はいいことだが、ばか真面目は死を早めるぞ」
アイザックはそう言って外にでた。リアムのとなりに立つ橋の向こう側を睨んだ。
「車は?」
アイザックが確認した。
リアムは路肩を駆け上がり地面に落ちていた石を橋の向こうへ投げる。それから、
「くそが」
叫ぶ。