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追憶のリアム  作者: うさみかずと
連邦からの亡命者
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免れざる訪問者

「勤務中ですよ。中佐」


「いいじゃないですか。たまには」


 シンシアはそう言って、家の中に入る。リアムはしぶしぶあとを行く。

 ドアを開けてすぐにテーブルが見えたイスが三つ。壁際にはソファ。ストーブの上でやかんから湯気が立っている。戸際には、ポットとカップと茶つばの缶が用意されていた。


「さあおふたりさん座ってください」


 手際よくポットにお茶を作ってテーブルに持ってきた。ふたりは礼を言ってカップをもらう。


「いやはや。大勢でお茶会はいいものですな」


 久しぶりの来客に嬉しそうに老人が言った。お茶を口にふくんだリアムはこくりと頷いた。


「おいしいです。こんなにおいしい茶葉はどこに売っているのですか」


 老人がにこりと笑った。


「そうですかそれはよかった。お口に合わなかったらどうしようかと思いましたわい」


 それから他愛もない話をした。首都で人気の食べ物の話や何気ない日常のことシンシアは高らかに笑いリアムはたじたじに頷くだけで老人は嬉しそうにしていた。


「今日はありがとうございました。またお邪魔してもいいですか?」


「いつでもきてくださいな」


 リアムがサイドカーのエンジンをかけるとシンシアは老人に会釈をして側車に乗った来た道を戻る途中リアムがサイドカーを止めた。


「うれしそうですね」


「私はリアムさんが褒められるとうれしいですよ」


「中佐。先に帰ってもらっていいですか?」


「・・・・・・わかりました。迎えはアイザックさんにお願いしておきます」


 リアムは運転席から降りるとシンシアと交代した。そして老人の家を再び訪れた。


 外にでていた老人は笑いながら言った。


「忘れ物ですかな」


「ご老人あなたはこの国の住民ではありませんね」


 老人は豪快に笑いいたく感心した様子で言った。


「よく分かりましたな」


「あのお茶の葉はここでは手に入らない俺は昔そのお茶を飲んだことがあった」


「おかわりはいかがですかな」


 リアムが二杯目のお茶をもらった。苦い顔をして小さく頷く。


「やっぱりこれは先生が好きだったお茶の味だ」


 老人は奥の部屋からペンダントを手に持ちイスに座った。そのペンダントに刻まれた麦の紋章に見覚えがあった。


「このペンダントを少し預かって頂きたい。そうだ興味深い話をしてあげましょう。これはある組織の一員であることを示しています。あなたは幼い頃に同じもの見たことがありますね」


 ペンダントを確認したリアムは答える。


「たしかに希望の園にいたとき先生が同じものを身につけていた。それが先生の死と関係があるのか」


「今日、連邦から亡命してきた将校がいますねどうされるつもりですか」


「なぜそんなことを知っている。ご老人あなたは何者だ」


 老人が口を聞くのとノックの音がして扉が開いた。外には三台ほど車が止まっている。


「カール・アンダーソンさんですよね」


 老人がそうだと答えると背広姿の男が入ってきてた。


 リアムの姿を見た男は驚いた表情をしてから老人にていねいな言葉遣いで話しかけた。


「私は軍のものですが、町役場の職員によるとあなたに脱税の容疑がかけられていますご同行願いますか」


 男は老人に詰め寄り有無も言わさず腕をひっぱりあげ強引に外へ出そうとした。 


 突然のことに戸惑いながらリアムは立ち上がって腰に手を添えて言った。


「どこの隊の所属の者だ。軍人が一般人を連行するには正式な書類が必要だが、見せてもらおう」


 男はしぶしぶ鞄を開き中に手をつっこんだ。リアムがリボルバーを抜くのと男が鞄からピストルを取り

出すのはほぼ同時であった。

 リアムは男がピストルを持つ手の方向にすばやく飛び倒れながら引き金を引いた。発砲音が響いて男の右肩に銃弾が命中した。その瞬間車から武装した男たちが飛び出してきた。リアムはテーブルを倒し、たて代わりにして応戦した。


「ご老人」


 老人はふたりの男に抱えられて後部座席に押し込まれ車はそのまま走り去った。


 リアムは飛び交う銃弾の中反撃の糸口を探していた。相手は四人。弾は後十発ほど、やり過ごすにも戦うにも分が悪い。どうする?


「リアムーー‼️」


 バリバリと唸るエンジン音と共に猛スピードで車が突っ込んできて外の敵に体当たりした。


 軍所有の車だ。ドアが開きアイザックが叫ぶ。


「どうなっていやがる。この状況!?」


「説明は後だ。前の車を追うぞ」


 リアムは運転席のアイザックを助手席にどけて勢いよくアクセルを踏んだ。


 

更新を毎週火曜日と木曜日にします

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