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追憶のリアム  作者: うさみかずと
連邦からの亡命者
17/25

静寂の夜に

 ゲルマンの目的は中央政府の重鎮たちを暗殺し帝国に解体される前の軍事国家にすること、そしてその計画を明後日の朝、実行に移そうとしていた。山奥にある旧指令室に残されていた僅かな弾薬と武器をかき集めリアムとアイザックは武装した。


「アイザックお前まで来ることはないぞ。お前はもう軍とは直接関係ないからな」

 どこにあったのか分からない防弾ジョッキをつけマクガイアに借りたハンドガンをホルスターに吊るしていた。

「中佐からの命令はお前のサポート、お前が戦うというなら俺はついていくだけさ。まぁ死ぬ気はないからやばかったら逃げる」

「徹底しているな」

 リアムはマルスが地下室から奪い返してくれた愛用のリボルバーの手入れを始めた。何度かゲルマンの姿が思い浮かばれたがリアムはすぐに打ち消して整備に集中する。

「先輩方準備が出来たら行きますよ。敵が何人いるか分かりませんからこの闇に紛れて先手をうちましょう」

 マルスはバレンタインからの指示を仰いでいた。そしてマクガイアが先行部隊としてさきほどフォアマンと合流したとの連絡がありリアムたちも外に出た。常駐していた車を使い再びセントラルを目指す。

 マルスによるとゲルマンを含む青年将校達はセントラルの本部を占拠すると同時に中央政府の国家公務員を抹殺するつもりである。

「曹長。俺とアイザックはゲルマンを止める。おそらくこのクーデターの主要人物だ。しかし大尉という階級で国を脅かすほどの力があるとは思えない。絶対に協力者がいると思う」

「リアムが引っかかるのはその陰の協力者であるはずのアマルド氏が何者かに殺害されていたこと・・・だろ」

 助手席に座るアイザックが後ろを向いて言った。

「そうだ。アマルド氏は直接的ではないにしろこの事件に深く関わっていると読んでいた。連邦からの亡命者、老人の誘拐、そして国を揺るがすクーデター、全てことが上手く進み過ぎている気がする」

マルスは整備されていないでこぼこ道を慎重に下る。セントラルの街まではあと一時間もあれば到着するだろう。

「ゲルマン大尉とはお二人とも深いお付き合いがあったと大佐から聞いていましたが・・・」

 沈黙の車内に耐えきれなきうなったマルスが尋ねた。リアムは答えなかったがアイザックは口を開いた。

「大尉と出会ったのは俺とリアムが雷撃隊から外されて国土守備隊に配属された時だったな、パスツールという都市が軍の最終デットラインになっていてね。バレンタイン大佐の隊が中心になって連邦の攻撃を食い止めていたのさ」

「大尉はどんな人でしたか」

 マリスの質問にアイザックは少し微笑んで答える。

「今と変わらないよ。正義感が強くて、そして優しい人だった。生まれつき身体の弱い妹がいてね、溺愛していたよ。俺もリアムも空専門だったから銃の使い方に慣れなくてそのたびに大尉に助けてもらったよ。自分が死ぬことより仲間が死ぬことを一番恐れていた人だ。だから・・・」

「アイザックもういいだろ。昔は昔だ、そして今は違う。最悪殺さなきゃいけない相手のことを話すなよ」

「なんだ。リアム、情がうつるってか? そんなことは俺も分かっているよ。分かっているけど大尉は本当に優しい人なんだよ。真実を言って何が悪いんだ」

 フロントガラスを叩き最後の言葉は力なく絞り出るような声でつぶやいたアイザックの顔をリアムは直視できなかった。リアムにとってもアイザックにとってもゲルマンは生きる意味をもう一度見出してくれた恩人であり兄のように慕っていた軍人だった。

「もしかしたら妹さんが病気で亡くなったことが大尉を変えたのかも」

マルスはぼそっとつぶやく。

「そうか大尉の妹さんは亡くなったのか」

「はい。今から二年ほど前に十八歳だったと思います」

 リアムはフロントガラスを下げて夜風に吹かれる。生暖かい風だった。セントラルは暗く闇に包まれていたが微かな殺気が漂っていていやに静かだった。 

 



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