くだらない。
「おはよう。リアム」
アイザックの声が聞こえてゆっくり目を開けると自分がじめじめした薄暗い部屋にいることが分かった。頭を振り視界を正常にすると目の前に鉄格子がありここが檻の中だと察した。
「どうなってんだ。これはいったい?」
「分からない。俺はリアムと大尉が建物の中に入った後武装した奴らがいきなり襲ってきて思いっきり殴られた」
「で、気がついたらここにいたと」
「そうだよ」
「曹長は?」
「それが分からないんだ。突然のことでまったく覚えてない」
リアムは、脱出できるものがないかそこらじゅうを見回したが石ころひとつ落ちてなかった。
「リアム。大尉は?」
「大尉はおそらく俺たちを監禁した首謀者だ」
「本当か」
「信じられないがそうとしか今のところ考えられない」
今にも切れそうな電球の弱い灯りを睨みながらリアムは機会を伺っていた。
「なあ腹減ったな」
「こんなときになに言ってんだ」
「リアムは朝から何も食べてないのに腹が減らないのか?すごいな」
アイザックのお腹の鳴る音とほぼ同時にドアの開く音が聞こえた。コツコツと聞こえる足音に耳を澄ますとそこにはパンとスープを持ったゲルマン大尉の姿があった。
「二人ともお腹空いたろ」
ゲルマンは笑みを浮かべながら食事を差し出した。リアムはそのまま睨みつけて動かなかったがアイ
ザックは本当にお腹が空いてたらしくなんの躊躇もないままにパンを口にした。
「中尉。別に毒とかはいってないから食べなよ」
「大尉。何が目的だ。こんなこと大佐が知ればどうなると思っている」
「きみたちには少し協力して欲しいだけなんだよ」
「答えろなにがしたいんだ」
困ったように髪をかき上げるとため息をついて言った。
「まぁ中尉には知る権利があるだから出来る範囲答えよう」
ゲルマンはあぐらをかいたリアムの目線までしゃがむと静かに話出した。
「まず俺たちの目的はこの国を軍事国家にするために華族中心の政権を転覆させること。そして帝国との不平等な条約を撤回してこの国を再構築させる」
「くだらないことを」
「そこでだ二人には組織に協力してもらいたいんだ。すでに軍の三割が組織の人間だ。お飾りで軍の幹部に居座る能無したちを殺して若い者たちが新しい世界を作るのさ」
「もし誘いを断ったら」
パンを食べ終えたアイザックが横から口を出した。ゲルマンはうーんと唸るとにやりと笑って言った。
「この話を聞いたからには生かすことは出来ないが昔馴染みだ。一生檻の中で暮らしてもらおう」
「断る。お前たちの革命に付き合う義理はない」
それだけ聞いてゲルマンは立ち上がると背を向けて出口に向かって歩き始めた。
「残念だよ」
ドアが閉まる音が聞こえて部屋はまた静寂に包まれた。




