表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラリカ=ヴェニシエスは猫?とゆく。  作者: 弓弦
第一章「ラリカ=ヴェニシエスは猫と出会った」
24/165

エピローグ

 ひび割れた真っ白な世界に、幻想的な銀の髪をした少女が一人(ひざまず)いていた。

 両足の膝をつき、力尽きたかのように両のてのひらは地に置かれている。


 ――なにがしかの戦いの跡なのだろうか?

 少女の周囲は、激しくいびつにゆがみ、傷つき、崩れている。

 その姿は、全てが消え去ってしまった戦場で、ただ一人(独り)残されて泣き崩れているようにも見えた。


 そのままひざまずいた少女がうつむいていると、ぽたり、ぽたりと地面に赤が滲んでいった。


 ――真っ白な世界に、赤い色が点々と散り、華を散らしていく。


「くつ……う……ふぅ……」


 辛そうに少女が苦悶の声を漏らした。

 少女は、地についていた右手を慌てたように持ち上げると、出血を抑え込むように顔に押し当てる。


 しばらくして、少女が顔面に当てていた手を離すと、掌にはべっとりと血が付着していた。

 金色(こんじき)に輝く双眸(そうぼう)が大きく見開かれ、薄い表情の中にも明らかな驚愕の色が見て取れた。


「……しまった。……でも、」


 動揺する少女の声には、なにに対する後悔だろうか、明らかに予想外の事態に対する悔やみの色が混じっている。

 だが、その声はどこか満足げな、何かを成しげたかのような雰囲気も同時にまとっていた。


 ――確かに、後悔することはある。

 ――でも、それでも絶対に無駄なことなんかじゃない。


 あたかもそう世界に語りかけるかのような自信に満ちた声だった。

 今にも溶けて消え去りそうな、雪の結晶を思わせる容貌に似合わず、強い意志が感じられる。


 そして、そのまま満足げな表情で少女は言葉を続けた。


 

「……猫ほづみん、あんなに可愛いとは……卑怯……」



 悔しそうに、でもどこか誇らしそうな声音でそうつぶやいた。


「……ふりふりとか……みゃあとか……『ちょべりぐ』」


 ふふ、ふふと怪しげな笑みを浮かべる少女は、整った顔の中心付近から垂れ落ちる、興奮の滴を拭い去った。


「めざせ、『はっぴーえんど』! ……ほづみんは、『はっぴーえんど』のほうが好き……だから、そのためにも……」


 そうして、真っ白な少女――雪華(ゆきはな)は再び決意を込め、無表情の中にもきりりっとした凛々しい表情を浮かべると、前を見据えて歩き出した。

 数歩歩くと、その姿は白い世界へと溶けるように消えていく。


 ――いつの間にか、その両手や地面を染めていた赤い滴は消え去っていた。


 これにて『第一章「ラリカ=ヴェニシエスは猫と出会った」』はひとまず終了です。

 第2章に関しましては、現在未推敲の状況でおよそ8万字ほどは書き溜めがあるのですが、各章完結後の投稿とする予定ですので、9月の投稿開始とさせていただきます。


 ここまでお付き合いくださった皆様、どうもありがとうございます。

 引き続き、「ラリカ=ヴェニシエスは猫?とゆく。」をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓↓↓読者の皆様から頂いたファンアートはこちら↓↓↓
ファンアート用バナー

                         

◆◇◆ ラリカ=ヴェニシエスは猫?とゆく。 ◆◇◆

「ラリカ=ヴェニシエスは猫?とゆく。」
◆◇◆                   ◆◇◆

いつも応援・ご評価ありがとうございます。
これからも、お付き合い頂ければ幸いです。

*******↓ 『もうひとつ』の物語 ↓******

咲夜修行中リンク用バナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ