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「ねぇ、そういえば…友人のために書いた詞はどうなったの?」彼女が、唐突にそんな昔の話をしてきた。
「あぁ、あれね。」あれとは、自分の心情と愛を重ねたチョッと意味不明な『ⅰ don't need that』という作詞を思い出した。
「使われなかったの?」
「あれはね、使うどころか…それどころじゃなかったんだって。だって、もうバンド解散していたんだから…。」
「…え?」彼女はポカンとして口を開いた。開いた口を閉めるのは難しいのかもしれない。だってそれは、彼女が必死に友達にバックアップしてきたバンドだから。告げていなかったほうも悪いとは思いながら、僕はさらりと交わあした。
「仕方ないよ。」そう僕は言葉を濁して、お茶を飲みあかした。
「まぁ、いいか。」彼女は、吹っ切れたようにお菓子を手にてほお張りはじめた。
「…そんなもんさ。」僕は、彼女の手からお菓子を奪った。
「でもさ、でもさ、あれは出来作だったよ。」ポッキーで人を指しながら、僕に話を吹っかけてきた。
「何のやつ?」僕は、ポッキーを10本咥えて天井を見た。
「『芯』ってやつ。」ポッキーを咥えてもごもごする口で、彼女は応えた。
『芯』という作品は、僕の心情の奥底から産まれた作品だ。誰しもがある感情だと思いたいが、僕が絶望をしたとき…ある声が聴こえた。それが題材にもなっているが、なんとも不思議なもので会話が出来るのだ。口に出さないのだが、なんか実際目と目を合わせて会話をしているかのような対立感に心が震えて、綴ってみたのがこの作品だ。だけど、これといって好きでない。それに、友達を題材とした『Mille-feuillE』…ただの自己満足にしか過ぎない。たとえ自分を題材とした『面接』も…どうも浮かばれない。
「ごめん、海…見たい。」
「うん、いってらっしゃい。」
こうして、僕は考え込み浮かばれないと海を見ることにしている。答えが見つかるわけではないが、何かがきっと応えてくれそうだから海を見る。
ザブンザブンと洗い流してくれるような波音に、僕は第二の安らぎを感じている。もっとも彼女が一番だが。
もうそろそろ、夕暮れ時…今日もまた彼女と陽落ちを見るとするか・・・