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「おいしいよ、このお茶!!」僕は、そう彼女に呟いた。
「誰が入れたと思っているのよ~。このペットボトルさんよ~。」そういって、彼女は2リットルのペットボトルの頭を撫でた。
「うん、知ってる!」僕は、にこやかに頷いた。彼女が料理が出来ないことに怒りはしない。裁縫だって不器用でも、攻めはしない。それは、愛があるからこそ。冗談が言える仲だからこそ、続けられている。どんな時も、そうして僕らは生きてきた。
「ねぇ~?コレ見て、懐かしいと思わない?」彼女がタタタタっと足を鳴らして、僕に近づいてきた。少し黄色みかかったボロくさい紙を、彼女は何も考えず眼中にさらけ出してきた。文字が書いているのは分けるけど、あまりにもの近さで文字が泳いで吐き気がする。僕は右手に持っていたお茶のコップを一度机において、その差し出された紙を自分で手にして見ることにした。
思い出というのは少し、鮮明でないほうが美しい気がする。
また少し、記憶を欠けていたほうが思い出話にも花が咲く。
「これって…」僕は、ゆっくりと口を開いた。
彼女は、今にも朝日に浴びて咲きそうな花のような笑顔で、僕を見つめた。
「…そうなのっ」