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4月13日①

長くなりそうなので二つに分けます


 本日は学校がお休みなので、メイド見習いのお仕事をしました。

 昨日はまだ手首にシップを張っていたし、この一週間は学校のことが忙しかったので見習い仕事は久々です。

 メイド見習いは中等部から始めました。旦那様に少しでもお返しを、という気持ちでした。

 三年間はずっと母や他のメイドの方の後ろについて学び、ときどきお手伝いをする程度でした。上位をキープするのに勉強しなければなりませんでしたし、部活もしていたので休日の日に数時間するのが精一杯だったのです。

 ですが先日、母にそろそろ一人で動いて貰うといわれました。といっても、他の方のように自分で判断して動くのではなく指示されたことをする、という程度ですが。それでも、今まで半人前の半人前だったのが一人前の半人前になったのです。なんだかややこしいですね…。


 本当は、部活をするつもりはありませんでした。白鳳では部活見学は強制で見て面白そうだなと思うものはありましたが、一刻も早くメイドとして働きたかったので入部する気はありませんでした。

 しかし、両親や旦那様に部活はせずにメイド見習いをするといったところ猛反対されました。

 両親は、私が旦那様に負い目を感じていることを困ったように見てはいましたが、それを否定も肯定もしませんでした。だから私が見習いをしたいのなら反対はしないと見習いをすることを許してくれました。ですが、やりたいものがあるのにそれを我慢するのなら見習いも許可しないとも言われました。私が部活見学で弓道部が面白そうだったといったのを覚えていたのでしょう。

 そしてもう少し自分たちを頼ってくれ、とも。学費などの積立金は旦那様もちでしたが、その他の制服などは両親が払ってくれていました。

 一条家の使用人ですから、それなりに裕福です。ですが、白鳳学院は‘それなり‘では通えないレベルの学校です。学費はいりませんが、その他の細かな指定の入った雑多な学用品だけでも結構かかります。

 だから私はなるべくお金がかからないように行動していましたし、両親が忙しいのも分かっていたのでわがままもあまり言ったりしませんでした。我ながら手のかからない子供だったと思います。

 しかし親にとって子供に遠慮されるというのはとてもつらいことでそんな遠慮はいらない、とその時諭されました。

 結局、それ以来私はもう少し両親に頼るようになって、弓道部にも入り時間のある時に見習いをするようになりました。

 今では部活に入ってよかったと思っていますし、両親にはとても感謝しています。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「さらら、今日は廊下の掃除をしてね。穂波ほなみちゃん、さららに迷惑かけないようにね。じゃあ、お多恵たえさんお願いします」

「はい」

「リーダー、さららちゃんより私のほうが先輩なんですけど!後、いい加減三十女に‘ちゃん‘付けっていうのは………」

「見習いをしているさららのほうが仕事がしっかりしているのよ?‘ちゃん‘を取ってほしかったら失敗しないようにね」

「うー、分かりましたー」

 メイドリーダーの母に指示を受け、仕事に入る。穂波さんは4年前に一条家に入った人で、使用人の中では一番若いです。そして元気な人ですが、その分失敗が多くてそのせいで‘ちゃん‘付けで呼ばれ、いつも文句を言っています。いい加減あきらめたらいいと思います。

「あ、さららちゃん今諦めたらって思ったでしょう!他人事だと思って!」

「気のせいでは?それに思いっきり他人事です」

「ひどーい!」

「さらら、穂波無駄口していないで仕事をおし!」

 穂波さんにじゃれ付かれているとお多恵さんから叱責が飛びました。

 お多恵さんは最年長で旦那様の乳母でした。だからこの家でお多恵さんに頭の上がる人はいません。仕事以外では優しい人ですけどね?

「やばっ、はーい」

 穂波さんが離れたすきにほうきを取り、掃除を始めます。


「……ゃん、…ちゃん」

   ぽんっ

 黙々とほうきを動かし、次にモップ、乾拭からぶきをしていると肩に手がかかりびくりとしました。

「ひゃっ。お、奥様?」

 振り向いた後ろにいたのは奥様でした。

「ごめんね、さららちゃん。声はかけたのだけれど…」

 集中しすぎて奥様の声に気づかなかったようです。集中しすぎて周りに目が回らないなんて、メイド失格です。

「いえ、こちらこそすいませんでした。ところで何か御用が?」

「あっ、そうそうさららちゃん時間ある?久しぶりにお茶をしようと思うのだけれどどうかしら。お隣でするのだけど人がいなくて。それに桜ちゃん高等部は茶道部に入るのでしょう?記憶を呼び戻しておかないと」

「えっと…」

 奥様のお誘いを断ることはできませんが、私は仕事中です。どうしようかとお多恵さんを振り向くとうなずきが返ってきました。

「はい。参加させていただきます。でも高等部のは流派が違いますけどね。着替えたほうがよろしいでしょうか?」

「そうね、せっかくだから」

「分かりました。では後で伺わせていただきます。」

「あ、車で行くから玄関にいて。動きにくいでしょう」

「でも・・・・」

 確かに着物で長距離は動きにくいですが、奥様と同じ車というのは…

「わかった?」

「…はい」

 しかし、奥様の笑顔によって遠慮の言葉は消えてしまいました。

「じゃあ、あとでね」

 奥様は笑顔のままお多恵さんに声をかけていかれました。着替えに行くのでしょう。私も行かなければ、主人を待たせてはいけません。

 急いでモップなどを片付けようとしたら、

「ああさらら、いいよ。穂波にやらせておくから。早くおいき。着物は一人で着れるね」

「お多恵さんそんなー。さららちゃんずるい!」

「さららがほとんど掃除したんだから文句言うんじゃない!ほうきくらい何も壊さずいなおせるだろう」

「そのくらいできます!」

「だったらさっさとやんな。ほらさらら」

「はい。ありがとうございますお多恵さん。ごめんなさい穂波さん」

「ああいいよ、いいよ。私が窓割ってなきゃもう終わってたことだし」

「ありがとうございます」

 私はお辞儀をして、足早に部屋に帰りました。

 本当ならお昼を過ぎたこの時間には掃除は終わっているはずでしたが、途中で穂波さんが窓ガラスを割ってしまったのでその片づけなどでこの時間までかかってしまいました。

 とにかく、早く着替えないと…。一人で着ることはできますが時間がかかるのです。




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