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なにYOU天然!  作者: 大原英一
本編
5/47

5.椅子の高さ

5 2012/12/05


 椅子の高さについて考えてみた。

 中学一年のとき、親にねだってマウンテンバイクを買ってもらった。

 マウンテンバイクというやつは、今にして思うと、乗り心地の悪い自転車だった。ただ、当時は見た目がよく思えたのだろう。

 そもそも山道を駆けたり、曲芸のような乗り方でもしないかぎり、マウンテンバイクなど必要ない。むしろ、ふつうに乗るには乗りづらい。サドルも細めで、しかもプラスチック製だったし。拷問か。

 愉快なエピソードがある。ウチの母親が、なにをトチ狂ったか、オレのマウンテンバイクを使っていた時期がある。

 きっかけはたしか、オカンのママチャリ(自転車)が盗まれたかなにかだったと思う。

 家に息子の自転車があるのに、わざわざ新しいものを買う必要はない、という主婦らしい倹約精神が、どうも動機だったらしい。

 オレはといえば、マウンテンバイクにも飽きていたので、別に異存はなかった。

 オカンが自転車を必要とするのは、買い物のときだけだ。が、マウンテンバイクほど買い物に適さない自転車はないだろう。カゴも荷台もないのだ。

 それでもオカンは乗った。根性だ。


 オカンがオレのマウンテンバイクを使った形跡はわかりやすかった。サドルがめっさ高くしてあるのだ。

 マウンテンバイクというやつは、もともと車高が低い。だから、オカンがサドルを高くしてバランスを合わせたい気持ちは、よくわかる。

 いや、今だからわかるのだ。当時のオレは、サドルは低い派だった。ハーレーのように乗るのが、格好いいと思っていた。

 だから、オカンが乗ったあとにいちいちサドルを下げなくてはならないのが、億劫で仕方なかった。

 それにしても、だ。オカンのサドルの上げ方は尋常ではない。中一か中二のころ、オレとオカンの背丈は丁度くらいだった。サドルを目一杯上げると、マウンテンバイクに跨がった状態で、地面に足がつくかギリギリのところだ。どうしてそんなリスキーなことをするのか、当時は不思議でならなかった。


 この謎はだいぶ後、オレが大学生になってから、ようやく明かされることになる。

 オレはバンドで、なんちゃってドラマーをやっていた。中学から高校にかけて、ギターやベースをかじったりしていたが、大学ではふとドラムが叩きたくなったのだ。我ながら、本当に飽きっぽいと思う。

 だが、そのときはわりと真剣に取り組んでいて、教則ビデオ(当時はビデオだった!)を買って、研究したりもした。

 教則ビデオの講師はポ○タだった。けっこう有名なドラマーだ。

 ポ○タは語った。椅子を高くしろ、と。

 オレは当時、椅子の高さを決めかねていた。高くても低くても、バス・ドラムを踏むたいへんさは、変わらなかった。

 ポ○タいわく、椅子を高くすれば、脚をストンと下ろすだけでいいそうだ。


 ……あっ!


 オレは得心した。オカンがサドルを上げていたのは、運動力学的に理にかなった方法だったのだ。ポ○タの言葉を借りれば、脚をストンと下ろすだけでペダルをこげる、というわけだ。

 これはいい、さっそく実践しよう。オレは椅子を高くセッティングして、ドラムの練習に打ち込んだ。

 が、成果はさっぱりだった。


 バス・ドラムのフット・ワークについては諸説ある。椅子を目一杯下げたほうが、力強いキックができるという人もいる。

 結局オレは、高すぎず低すぎず、ちょうどいいところで妥協した。そのうちドラムも飽きてしまった。


 あまり飽きっぽいと、無責任みたいなので、ちょっと弁解しておくが、音楽は今でももちろん好きだ。が、作曲や演奏に時間と金を費やすことは、もうできない。ほかにやるべきことが、ある。

 なろうでの活動は、音楽と比べ、コストがかからないから続けていられる気がする。息抜きみたいな感じで、ゆるくてスミマセン。

 このエッセイは、オレにとって思考の遊び場みたいで、気に入っている。何話続くか楽しみだ。読者の数も……。


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