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なにYOU天然!  作者: 大原英一
最終章 CF(Chotto Fusigi=ちょっと不思議)掌編集
45/47

奇異

「この世に不思議なことなど何もないのだよ、タキオカくん」


 言わずと知れた京極堂の名セリフである。ただしタキオカはうちの同僚でそこはアレンジしてある。いや、ほぼ丸パクリだろ。

「いっぱいありますよーぅ、むしろ不思議なことしかないっすよ」

 例によって職場でこのセリフが言いたくて仕方なくなり、同僚タキオカに試したところ、またしてもきゃつは反対のことを言い出した。

 まあ、タキオカの反応のほうが一般的なのかもしれない。それこそが京極堂の狙いで、つまりは衆目を集めるための戦略である。あえて一般常識と反対のことを言っているのだ。


「しかしだねタキオカくん、探偵役は立場上、不思議という言葉は使いづらいのだよ。だって『ほえー、不思議ですねえ』なんて言ったらキミ、素人と一緒じゃないか」

「探偵……役?」

「まさかキミ、京極堂を知らないんじゃあるまいね」


 まったくこの同僚は。オレと同年タメのくせに、つまりオッサンのくせに。オレらの世代で京極堂の憑き物落としシリーズを経験していない者があるだろうか。

 ぼくらの世代で戦争を経験していない者があるかい、とは京極堂のセリフである。言ってみたかっただけ。

 そんなわけで、この同僚に陰陽師探偵キョウゴクドウ超能力探偵エノキヅのことを懇切丁寧に教えてやった。ま、明日になったら忘れているだろうけど。

 同僚タキオカのいいところは、その高い忘却能力である。おかげでこっちは好きなセリフを何遍でも言えるってわけ(笑)


 だが、さすがのタキオカも「見ているのに見えていない(*註)」には感銘を受けたらしく、このフレーズをときおり職場で使うようになった。

 オレらの仕事は監視業務だから、けっこう身につまされる言葉だったりするのだ。いっこうに「あれ……あのキャラ、何でしたっけ」と京極堂の名はおぼえてくれないのだけれど。



*註……京極堂の有名な警句のひとつです。

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