可
「人の本性は善だからね」
最近お気に入りのセリフを何気なく職場で言ってみた。テレビをあまり見ないオレが唯一、毎週見ている大河ドラマの受け売りだ。
「違いますよー、人の本性は悪ですって大原さん」
同僚のタキオカが笑いながら言った。ふん、この男はそっち側か。
世の中には、何の疑いもなく、人の本性が悪だとのたまう輩がいる。べつにそれ自体、悪いことでも不思議なことでもありはしない。
逆に性悪説サイドからすれば、のうのうと性善説をのたまう連中のほうが信じられないだろう。
「だって世の中には人殺しとか犯罪とか、いっぱいあるじゃないですかー」
人の本性が善か悪か論じても、じつはあまり意味がない。どこがスタートでどこをゴールとするかによっても違ってくるしね。
たとえば赤ん坊は無垢な存在だ。世の中にこれ以上「善」なものは存在しないだろう。だが悲しいかな、その善のかたまりも大人になると汚れて「悪」に転じる可能性がある。
結果が悪であれば人は性悪説を推すだろう。だがスタート地点が「善」であったことを忘れちゃいないかい?
また本来「悪」であったとしても、「善」に転じることだってあるんだぜ?
それにしても、なぜ職場で冒頭のセリフを吐く経緯に至ったか、そこのところがまったく思い出せない。きっと大したことじゃないだろう。
以上は鵜狩様の御作『奇』の企画に提出させていただいたネタ、の本歌取りみたいなものです。本歌取り?




