カイコウ屋
そこそこ有名な中華チェーン店で日高屋というのがある。わざわざルビを振る必要もないのだが、この読み方が後々重要になってくるので憶えておいてほしい。
その日高屋で食事をしていたときのことだ。オレの近くの席にご年配の男性がいた。ここでは仮にお爺ちゃんと呼ぼう。
お爺ちゃんが若い男性の店員に何やら話しかけている。どうやら大した内容ではなく、かといって店員も無下にできないような話らしい。
どうも日高屋の他店舗のことを話しているようだ。
「このカイコウ屋っていうのは、駅の西口にもあるみたいだねえ」
お爺ちゃんの言葉を近くで聞いていたオレは首を傾げた。カイコウ屋? なんだカイコウ屋って……。
「ええ、ヒダカ屋は駅の西口と北口にもございますよ」
店員は気を利かせてカイコウ屋をヒダカ屋に直して調子を合わせた。
「いろんなところにあるんだねえ、カイコウ屋っていうのは」
いや、だから、いま店員さんがそれとなく訂正してくれたでしょ、お爺ちゃん。……それにしても、どこをどう読めば日高屋がカイコウ屋になるのだろう。
オレは腑に落ちないまま店を出た。そして、その日のことはしばらくのあいだ忘れていた。
ある日の帰り道、何気なく日高屋の看板が目に入った。おおっ?
読める、カイコウ屋って読めるぞ! どういうことかと説明すると、日高屋の「日」の真ん中の棒がかぎりなくブロック状になっていて「回」の字に見えるのだ。
お爺ちゃんの目には回高屋と映っていたのだろう。カイコウヤーっ! 最高やーっ(笑)
面白いでしょ、これ。ちょっとした推理物みたいでしょ。え、面白くないって? そう思ったあなたは、当エッセイを全否定したことになります。
番外編で全否定って(笑)




