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なにYOU天然!  作者: 大原英一
本編
3/47

3.教師と上司

3 2012/11/28


 教師と上司について考えてみた。

 両者の違いは、なんだろう。むろん両者は別ものだ、本当にそうだろうか。

 オレは派遣が長いので、いわゆる「生命線」を握っている上司というやつに、あまりお目にかかったことがない。

 そういう一蓮托生みたいな上司像は、いまは古いのかもしれない。まあ、一般的な上司像だ。

 教師像もこれまた、いろんなバリエーションがある。人生の師と呼べる人から、サラリーマンっぽいやつ、有能なビジネスマンまで、さまざまだ。

 どれがいいとか悪いとか、一概にはいえない。人生の師は必ずしも教師ではないし、もしかすると上司かもしれない。クロスオーバーする部分は、たしかにある。


 フク子先生のことを、ふと思い出した。中学一年のときの国語の先生だ。

 フク子先生は、おばあちゃん先生だったが、戦前生まれの芯の太さと、がっちりしたガタイが印象的だった。

 フク子先生が優しかったとかオレをいいほうへ導いてくれたとか、そんな話をオレがするはずがない、と賢明な読者は察知しているだろう。正解です。

 正確にいうと、フク子先生とそれほど接点があったわけではない。週に何時間か、ふつうに国語の授業をしてもらっただけだ。

 が、非常に忘れがたいエピソードがある。


 フク子先生は、授業の冒頭にたいてい、漢字の小テストをおこなった。

 速攻で答え合わせをする、ごくごく小規模のものだったが、それでも一〇分か一五分くらいはその小テストに時間を割いていた。

 四五分の授業で一五分だ。彼女自身が教える時間は三〇分弱となる。フク子先生、なかなか抜け目がないぜ。

 まあ、それはヨシとしよう。小テストをおこなうことにも、なにも問題はない。が、その採点方法に問題が大アリだった。


 彼女はなんと、生徒に採点させたのだ。

 もちろん、生徒本人に採点させると、不正がでる惧れがある。なので生徒同士で答案を交換させる。(基本、後ろの席の生徒と交換だった)

 これで不正がおこる心配はない……わけないだろう!

 生徒同士が結託していたら、どうすんの?

 逆パターンもある。片方の生徒がもう片方に、悪意をもって、辛い採点をするというケースだ。

 実は、オレがこのケースの被害者だった。

 オレの後ろの席には、ちょっと不良っぽい、あきらかに頭の悪そうなやつがいた。そいつがオレの解答を、フク子先生が板書した模範解答と一致しているにもかかわらず、おもしろがって、不正解の採点をしたのだ。


 あー、思い出したら腹が立ってきた。オレはたしか、フク子先生にあとで文句をいった気がする。その不良もどきに、直接文句をいうのは怖かったし。

 だが、この漢字の小テストがどのくらい続いたか、そもそも成績に絡んだのか、そういった細かいことを、オレは憶えていない。

 今にして思えば、斬新なシステムだったなあ、と感じる。


 教師は上司ではない。上司ならば、かならず全員分の採点をしなくてはならない。

 その業務を部下に投げたら、それは職務放棄にも等しい。

 教師は上司ではないから、生徒を信頼してもいいのだ。そういう穏やかな空気が昭和の時代にあったことは、たしかだ。


 教師の役割って、なんだろう、と思う。社会にでて通用する知識やスキルを身につけさせることか。それなら予備校の講師とか専門学校の講師とか、その道のエキスパートがほかにもいる気がする。

 フク子先生のように、自分はラクをしつつ(失礼!)、生徒をがっつり信頼した評価システムを構築した人って、やっぱり器がデカイなあ、と思うのです。メチャクチャだけど。


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