23.竜宮妄想
23 2013/02/14
なろう作品のとあるエッセイで、浦島太郎について論じているものがあった。
浦島太郎にメッセージ性はあるのか、と。
昔話や寓話には、たしかに、なんらかの教訓が含まれていることが多い。浦島のそれは何なのか、と。
ちょっと遠いところから話をはじめよう。
たとえば桃太郎に教訓やメッセージ性はあるだろうか。悪い鬼を退治しに行く、これはいわば勧善懲悪の話だ。いや、見方によっては、これは忠臣蔵のような復讐譚ではなかろうか。復讐譚、忠臣蔵が? あれは喧嘩両成敗の話だろう……。
とまあ、おわかりのように、話の受けとり方は人それぞれだったりする。だからメッセージ性なんてものは、それを言い出した人の一解釈でしかないのだ。
浦島は不思議な話だ。
竜宮城から帰還した太郎は、けっして開けてはならぬといわれた玉手箱を開けてしまい、その結果お爺ちゃんになってしまう。
中から煙が出てくるんだっけ? 何が出てこようと、お爺ちゃんになった事実は変わらない。現実って残酷だ。
さあ疑問点は山ほどある。
まず、開けてはならぬといわれたものを、太郎はなぜ開けたのか。また開けたいと思ったのか。
そこはまあ、人情でしょう。だいたい、開けてはならぬものを、なぜ乙姫さんは渡したのか。開けてくれってことでしょう、これは。そうとしか聞こえない。めっちゃポジティヴ。
「恥ずかしいから、ここでは開けないでね」
太郎にはそう聞こえたのかもしれない。そういって乙姫さんはウィンクしたかもしれないし、しなかったかもしれない。
すべては憶測にすぎない。だが、太郎がとった行動のひとつの説明にはなる。なんの話やねん(笑)
あれ、竜宮城に行くときは、助けた亀の背に乗って行ったんだよね。じゃあ帰りは? まさか同じ亀が送るところまで面倒見てくれたの? 面倒くせー(笑)
「本当にアリガトウございました」
とかいいながら、亀は海へ還って行ったの? いい人だー、じゃなくて亀だー。
もしかすると、玉手箱を開ける前から、太郎はすでにお爺ちゃんだった可能性もある。だって月日が経つのも忘れるくらい豪遊したんでしょう? 竜宮城の経営も傾いたんじゃないかな。もうお前、いい加減帰れよって(笑)
じゃあ玉手箱の存在意義って何だろう。
オレが思うに、これは太郎の創作だと思う。つまりウソだ。さんざんいい夢見せて、最後にこの仕打ちかよ……っていう、ようするに負け惜しみだ。
乙姫さんサイドは、感謝こそすれど、太郎を恨む理由はない。彼女たちは太郎をもてなし、彼に尽くした。それでも太郎は竜宮城を憎まずにはいられない。完全に逆恨みである。
太郎にしてみたら、
「お前ら土産のひとつくらい渡せよ、つーか、いっそオレをここに住まわせろよ」くらいの勢いだったのではないか。
あの、亀を助けた善人の口から出た言葉とは思えない。
……という妄想ですからね? とは、うちの残念な同僚タキオカの口ぐせだ。(登場二度目)




