15.シャドウ
15 2013/01/22
いきなりですが、シャドウって、なんだと思います?
アイ・シャドウのシャドウ、シャドウ・ボクシングのシャドウ、です。日本語でいうところの影、ですね。
オレは往年のデヴィッド・ボウイではないので、アイ・シャドウはしない。アイ・シャドウをシャドウと略して呼ぶかどうか、知らない。
シャドウ・ボクシングをシャドウと略すことは、まあまあ、あるようだ。
頭の中でシャドウ(イメージ・トレーニング)してみる、みたいな使い方だ。
ウチの残念な同僚に、タキオカという男がいる。年齢はオレと同じ三七だ。
彼は独特の言い回しをよく使う。そのうちのひとつに、シャドウが含まれる。
「明日のシステム本番運用にむけて、シャドウしておきます」
こんなふうに彼はシャドウを使う。
周りにはいちおう、意味は伝わっているようだ。オレもまあ、意味はわからんでもない。だが、なんとなく、ひっかかる……。
前述の使い方でいえば、イメトレしておきます、という意味になる。だったら最初から、イメトレしておきます、といえばいいじゃないか。
ようするに不親切なのだ。自分の使いやすい言い回しをすることによって、周囲に頭の中で翻訳することを強いているのだ。翻訳こんにゃくか(笑)
そもそもシャドウ・ボクシングというのは、仮想の相手を見立てて、実際に体を動かすトレーニングである。イメトレの要素もあるが、完全に同じではない。
イメトレとシャドウ・ボクシングのあいだにまず意味の隔たりがあって、シャドウ・ボクシングとシャドウのあいだに略語という隔たりがある。
二段階も隔たりがあれば、違和感をおぼえて当然だろう。
じゃあたとえば、シャドウ以外に、どんな言い方をすればいいのか。
じつは、ほかに適切な言葉はたくさんある。
「明日のシステム本番運用にむけて……」
準備しておきます。
リハーサルしておきます。
シミュレーションしておきます。
ロープレ(ロール・プレイング)しておきます。
など、である。
ロール・プレイングというのは本来、役割演技という意味だから、勇者でもエンジニアでも好きに演じたらいい。
少なくともシャドウよりかは全然いい。
影しておきます……って、ふつうに考えても、意味わかんないよね。
だが、まあ、オレはタキオカ大先生の言い回しは嫌いではない。
こんなふうに言葉の意味と思考のプロセスをたどっていく作業は、けっこう楽しかったりする。
忙しいときに、わけわかんない言い回しをされると、かなり腹立つけどね(笑)