14.キャプつば・ザ・ファイナル
14 2013/01/19
前回の続き……キャプつば編、今日で完結です。
『ボクは岬太郎』という短編で、スパルタ教育ママがでてきたところまで、だったね。
スパルタ教育ママって、そういえば、最近見なくなった。
教育熱心な母親は、もちろん今でもいるのだろうが、ハイソで過保護でSMの女王様みたいなメガネをかけているスパルタ教育ママは、もはや絶滅してしまったようだ。
ハジメの母親は、なにも息子が憎くて、彼がサッカーをやることを反対しているわけではない。
その逆で、ハジメがサッカーはおろか、どんなスポーツも苦手だということを、母親は痛いほど熟知しているのだ。息子のブザマな姿が見ていられないのだ。
ハジメはハジメで、この情けない状況をなんとか克服したいと考えている。彼だって岬くんのようなプレーができるようになるとは、端から思っていないだろう。
ある日、草サッカーチーム同士で試合がおこなわれた。
岬くんは当然、強力な助っ人として町内チームに招へいされた。それはいいのだが、彼はなんと、この試合にハジメも出してあげないかと皆に提案する。
町内チームの皆は難色を示した。が、せっかく参加を承諾してくれた岬くんの申し出を、むげに断ることもできない。それに岬くんがいれば、かるく四、五人分の働きはしてくれるだろう。
ハジメの人数としてのカウントがゼロでもマイナス1でも、充分おつりがくる。
そういうわけで、ハジメは味噌っかす的なポジションで、無事スタメン入りを果たす。プライド・ゼロか(笑)
だが、プライドを捨ててもこの状況から逃げださなかったハジメは、やはり賞賛に値する。オレの涙腺は、すでにウルッときている。
なぜだろう。なんでダメなやつが試合にでると、こんなにも胸が熱くなるのか。もういっそ、チーム全員ダメ選手にしたいくらいだ。
(じつは、翼くんがやってくる以前の、石崎くんがキャプテンだったころの南葛が、まさにこの状況だった。翼くんやロベルトの尽力により、南葛は息を吹き返したのだ)
試合中、ハジメはこれでもかといわんばかりに、スットコドッコイ度を炸裂させる。その試合に、どういう経緯か忘れたが、スパルタ教育ママが駆けつける。
「ハジメちゃん、もうよしなさい。あなたには無理なのよ」
「イヤだよ、ママ。最後までやらせてよ!」
ああ、もう涙が……。
ピッチへ戻ったハジメに、岬くんが絶妙なクロス・ボールをあげる。
「ハジメくん、ボールは友だちだ。飛んで!」
岬くんの声に合わせ、ハジメが石崎くんばりの顔面ダイヴをかます。
ゴオオオーーール!!!
ハジメのヘディング(顔面)シュートにより、町内チームは貴重な一点をもぎとる。
「やった……やったよママ!」
「ハジメちゃん……」
びっくりしたのは母親だろう。まさかハジメがこんなにやれるなんて、思ってもみなかったはずだ。岬くんに感謝ですね。