12.キャプつば
12 2013/01/14
『キャプテン翼』について語っちゃおうかな。オレにとって、けっこうハードルの高い仕事になりそうだ。
『キャプテン翼』を漫画のどのカテゴリーに位置づけるか、難しくも楽しい作業だ。
スポーツ漫画であり、キャラ萌え漫画であり、パワー・バランス漫画(?)であり、そして未来予測漫画である。
順番に説明していこう。
まず、スポーツ漫画は誰の目にも明らかだよね。それも、いわゆるスポ魂ものではなく、さわやかでスマートな感じが売りになっている。
だが、よっく読んでみると、ぶっ飛んだ設定が目白押しだ。
翼くんの父親は船長だ。外国などを長い期間航海する、でっかい船の。
サッカー・チームのキャプテンと船長をかけたのだろうが、やり過ぎである。
しかも、これが翼くんの恩師、ロベルト・本郷を生む伏線になっているのだから、驚嘆するしかない。
ロベルトは日系ブラジル人で元プロ・サッカー選手だ。試合中の事故で網膜剥離と診断され、選手生命を絶たれる。
その後、自暴自棄になった彼は酒に溺れ、ついに入水自殺を図る。その危機を救ってくれたのが、大空船長(翼くんの父親)だったというわけだ。なんて重い(笑)
大空船長の薦めで日本へやってきたロベルトは、天才サッカー小僧・大空翼に出会う。
でもロベルト、このときまだウイスキー的なものを飲んでいるからね(笑)
まったく、けしからん(オレ?)
次のカテゴリーへ進もう。キャラ萌え漫画だというのも、衆目の一致するところではなかろうか。
同時代の『キン肉マン』も、たしかにキャラ漫画だが、こちらは男子にとってのロボットや戦隊ヒーローものと似た趣きがある。腐女子メインではないのだ。
当時は腐女子なんて言葉はなかったし、そもそもこの呼び名が適切かどうかもわからない。
だがオレは意外にも、腐女子に対し肯定的だ。熱烈なファン、とほぼ同義くらいに受けとっている。
『セイント星矢』が登場するまで、『翼』が女子にもっとも支持された少年マンガだったのは間違いない。
みっつ目のカテゴリー。パワー・バランス漫画ってなんやねん、という話だ。
戦術漫画といいたかったのだが、そこまで緻密でも戦略的でもないんだよなあ(笑)
要するに、翼くん率いる南葛が強すぎるので、他のライバル・チームとどうバランスをとるか、その一点に心血を注いだ漫画である。
小学生大会のときの南葛メンバーは、翼くんと岬くんに加え、ゴールキーパーに若林くんまでがいる。これで、どうやって負けろというのか(笑)
そこで作者先生は頭をひねって、若林くんをケガで決勝まで離脱させるという苦肉の策をとった。岬くんにも微妙にケガをさせた。
中学生になると、若林くんはドイツへ、岬くんはフランスへ行ってしまった。まさに力のリストラだ。
しかし結果的に、この一見貧相な南葛が、最強だったりする。物語的にも、この時期がもっとも熱くて面白い。
まさに奇跡的な力の配分、計算してできるものではない。
その後、舞台はワールド・ユースへと移っていく。世界中から強豪が現れると、日本もドリーム・チームを組まざるをえなくなる。
こうなると(わかるよね?)面白くないんだわ、これが。
かつては豪華と思えた国内のライバルたちが、どんどんモブ・キャラに身を落としていく。
後の世にドラゴンボールがハマったパワー・インフレという罠に、『翼』はその初期症状をみせているのだ。
いい感じですね……続きはまた次回!