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なにYOU天然!  作者: 大原英一
本編
1/47

1.なにゆうてんねん...

1 2012/11/23


 子どものころの話だ。

 たしか小学二年の遠足のときだったと思う。

 ウチの小学校では五年生まで毎年、同じ場所に遠足に行くのだが、印象に残っているのは二年生のときと五年生のときだけだ。

 五年生のときは最後の遠足だし、多少成長しているので、憶えていて当然だろう。ようするに、それ以前の遠足はほとんど記憶に残っていないということだ。二年生のときを除いては。

 小学二年の遠足が記憶に残っているのは、強烈なエピソードがあったからだ。強烈だと感じはじめたのは、大人になってからだけれども。


 遠足の楽しみといえば、やはりお弁当だろう。

 ふだんは給食だから、お弁当自体がそもそも新鮮だ。

 遠足という場なので環境も違うし、景色もいい。おいしくないわけが、ない。


 オレは親友のムラマツ君と一緒にお弁当を食べていた。

 ほかにも何人かの友だちが一緒だったかもしれないが、残念ながら憶えていない。

 ムラマツ君が印象に残っているのは、彼が親友だったからではなく、強烈なエピソードに関わっているからだ。ちなみに、彼とは三年生にあがるときのクラス替えで別になったきり、話をしていない。小学校低学年のときの親友なんて、そんなものだろう。(オレだけ?)


「おいしいね」

 と、誰かがいった。うっわ、ぜんぜん憶えていない。ムラマツ君ではなかったと思う。オレでもない。やはり三人以上で食べていたのだろう。

「外で食べれば、なんでもおいしいんだよ」

 と、オレがいった。だから、「おいしいね」といったのはオレではないのだ。繰り返すが、ムラマツ君でもなかった。

 なぜなら、彼はこのあと、とんでもない台詞を口にしたからだ。

「ウ〇コでもか?」


 こいつ、なにゆうてんねん……。


 当時(いまから三〇年近く前)はまだ、関西系のつっこみは関東圏では定着していなかった。小学二年生のオレは、当然そんな便利な言葉があるとは知らず、リアクションがとれずに困った。

「バカ、食べ物の話だよ」

 結局オレはそう返した。普通すぎる。


 ムラマツ君は、きっと、冗談をいったつもりだったのだろう。だが、冗談にも程があるということを、小学生だったオレはこのとき、はじめて学んだ気がする。

 小学生というのはアホなので、こういう下品なジョークでも受けたりするのだが、これを大人の世界で、たとえば花見の席などでやったら、エライことになるだろう。

 ここらへんが、子どもと大人の境目なのかな、という気が今はしている。

 その境目は、子ども時代にはなかなか気づかないものだ。大人になってから、ああ、そういえばあのときのアレって……と、急にわかったりする。


 だから、ムラマツ君には感謝している。

 ムラマツ君、オレを大人にしてくれて、ありがとう。オレは、きみのおかげで、こんな立派な大人になったよ。

 追伸。空気や景色のいいところで食べても、おいしくないものも、あるからね!


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