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誰カノ記憶


 私はあの日を境に直接的ないじめを受けなくなっていた。

 奴等は、ただ私に暴力を振るうよりも、もっと別の方法で私を痛めつける事ができると気付いてしまったから。


 いじめの標的を、私の最も大切な存在へと切り替える。


 とても正気とは思えないその作戦は、今までのどんな嫌がらせよりも効果的、そして驚異的に私の心を蝕んでいった。



「ねぇお姉ちゃん。どうして私、こんなひどい目にあってるの?」


 ごめんなさい。


「いじめられてたのはお姉ちゃんでしょ?」


 ごめんなさい。


「私ね、今まで友達もいたし、学校も楽しかったんだ。でも、この一週間で全部壊れちゃったの」


 ごめんなさい。


「ねぇ。これから私は……ううん。お姉ちゃんはどうしたらいいと思う?」


 家族が寝静まった深夜。

 学校でいじめを受けるようになってから、妹は毎晩私の枕元に立って、狂ったように喋り続ける。


 私は一度も返事をしていない。

 それでも、妹は一人で私のことを責め続けていた。




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