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五時限目、「あぁ、最高にパンチの効いたキッスだったぜ」


「どうだ? お目覚めのキッスは効いたか? ん?」

「……あぁ、最高にパンチの効いたキッスだったぜ。お前の顔面に十倍にして返してやりたいくらいだ」

「ヘイヘイ! ストーップ! あんたたち、またドンパチやるつもり!?」


 臨戦態勢をとる俺達の間に割って入ってきた先ほどの女性が、ひとまず俺達をソファの上に座らせる。

 俺達は困惑しながらも、とりあえず腰を落ち着けた。


「はぁーい、聞き分けがよろしい。今後この校長室でドンパチするようなら、あんたたちの頭ん中のもん全部ミキサーに詰め込んで、美味しいミートパテをこさえてから飼育小屋にバラまくからね」

「ははっ! それ最高!」


 先生の小粋な冗談に思わず笑ってしまった。

 隣のハゲはよく理解出来ていないようだが、俺はこういった芝居の掛かった台詞が大好きだからな。


「こ、こほんっ。それじゃとりあえず話を始めるけど、まず私はこの学校の校長を務めてる早乙女由紀(さおとめ ゆき)よ。よろしくね」

「ほー、校長先生って初めて見たけど結構若かったんだな? 夏樹、お前知ってたか?」

「いや知らなんだ」

「あんたたちねぇ、中学生の分際で大事な式サボってたわけ?」


 確かに入学式とかそう言った類のものは、かったるいの一言で片付けてたからなぁ。

 今思うと、マジで不良ぶってた自分が恥ずかしいです。もちろん今は更生しましたけど。


 それはハゲの方も同じらしく、めずらしく反省顔を浮かべていた。


「ま、中学生なんて一番勘違いしやすいお年頃だから、仕方ないと言えば仕方ないけれど。よかったじゃない。不良ぶったまま進学よりナンボかましだったでしょ?」

「……」

「……」


 そんな追い討ちをかけないでください先生。ボク達恥ずかしくて死んじゃいそうです。


「とっ、ところでこんな朝っぱらから話ってなんなんすか?」


 恥ずかしさに耐えきれなかったハゲが、冷や汗をだらだらと流しながら話を逸らす。


「あぁ、そうだったそうだった。あんたたちに何点か忠告しておきたいことがあったのよ。それと、校長先生からのお願いもね」


 忠告とお願いねぇ。

 俺はてっきり、半年ぶりの学校だからクラスに馴染めないと思うけど頑張ってね。的な励ましを受けるのかと思っていたのだが、そうでもないらしい。


 俺達は頷いて先を促した。


「あんたたちが入院した頃ってさ、ぶっちゃけこの学校荒れてたでしょ? どっかのヤンチャコンビが毎日毎日暴力沙汰ばっかり起こすもんだから、校長の私は肝が冷え冷えだったわよ」

「へぇ、そんな馬鹿な奴等が居たんですね」

「……目の前にね?」


 はい。ごめんなさい、俺達でしたね。



 校長先生のお言葉通り、この学校は荒れていました。

 男子生徒達は主に二つの勢力に別れていて、毎日飽きずに勢力争いを繰り返していました。


 ちなみに、その勢力のそれぞれのリーダーを勤めていた人物が、まぁ……恥ずかしながら俺と、隣の栄一だったわけです。

 俺と栄一は、他の生徒達に『二凶』などと呼ばれておりまして、実にヤンチャな奴らの支持を集めておりました。


 そして半年前。そろそろこの長き戦いに終止符を打とうということで、二つの勢力のリーダーを勤めていた俺と栄一が例の歩道橋で一騎打ちをやったのですが。

 結果、あれですね。トラックの奴が台無しにしちゃったわけです。


 そんなわけで、今この学校の治安がどうなっているのかは全く知りませんが、多分ロクなことになってないと推測できますね。

 まとめ役の居なくなった組織がどうなるかなんて一目瞭然ですから。



「先生、俺なんとなく話が読めてきたんですけど。つまりあれですよね? 俺達がいなくなった後、残った馬鹿共が好き勝手暴れるもんだから、更に風紀が乱れたってことで俺達にもう一度馬鹿共をまとめて欲しいってことですか?」

「うーん、それはちょっと違うかなぁ」

「……そ、そうですか」

「ぶッ、ぶふっ、ぶはははははは!! だっせぇ! 馬鹿がカッコつけて滑ってらぁ! だぁーっはっはっはっはぶほぉ!?」


 黙ってろハゲ。


「……実はね、逆なのよ。風紀は乱れるどころか、ここ半年で圧倒的に良くなったわ」

「はぁ、なんでです?」

「丁度あんたたちが入院した頃にね、転校生が来たの。とっても可愛い女の子だったから、他の男子生徒達は浮ついてたわ。でも、それも束の間……」


 校長先生はそこで一旦話を止めて、窓の外に目を向けた。

 自然と彼女の視線を追いかけると、窓からは学校の中庭が伺えた。


「あれは、さっきの」


 その中庭に、今朝、並木道で出会った女の子がいた。

 女の子は一人で草抜きをしているようにも見えるが、何故あんなところで、しかも一人で奉仕作業をしているのだろうか。


 そんな風に考え込んでいると、不意に先生が話を続けた。


「……それからたったの一週間。この学校は、一人の女の子によって統治されたわ」

「え?」


 俺は驚いて、中庭の女の子を凝視する。

 その転校生って、まさか。


「お察しの通り。その転校生が、今中庭で奉仕作業を頑張っている彼女。霧島皐月(きりしま さつき)さんよ」

「お、おぉー」


 さ、流石は俺の惚れた美少女。只者じゃなかったって事だな。


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