表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「step」  作者: 華南
37/42

夢の住人 その7

Act.37 夢の住人 その7





「貴方、何様のつもりで人をじろじろ見ているの?


私、貴方に値踏みされる筋は無いんだけど。」


強烈な言葉だった。


一瞬、自分が何を言われたのか考える事が出来なかった…。



初めて夏流に白樺学園で出会った時、彼女の印象は俺の中で異質だった。


そう、自分の回りにいる女達と何もかもが違っていた。


まず自分に媚を売らない、興味を持たれない、存在すら意識してもらえない。

「坂下忍」と言う存在が彼女の中に全然無い事に、自分の中で苛立があったのも事実だった。


何故、彼女にそんなにも自分の存在を誇示したいんだろうか?と何度も自分の中で自問した。


彼女を無意識に探す自分に気付いた時、俺は己の行動を何度も笑った。


そして日に日に彼女の存在が俺の中で膨れ上がっていた。


感情の抑えが限界だと感じた俺は、遂に夏流に告白した。


そう、自ら初めて交際を申し込んだ。


夏流が欲しかった…。


心の中で彼女に自分を意識して欲しい、異性として自分を求めて欲しいと何度も願う自分がいた。


交際を一方的にスタートさせたあの日、偶然俺は夏流があの時の少女だと言う事に気付いた。


その気付きが、目覚めるが為に封印した過去を呼び起こすとは…。



7年前、俺は夏流と救急で出会った。


義姉の朱美を介して。


夏流が初めて俺に微笑んで挨拶した時、自分の視界が光で満たされた事に驚いた。


意識がその光に呼び寄せられ俺は、心を閉ざしながらも今迄聴こえなかった音が、少しずつ自分の意識の中に流れ込んでいた。


それも夏流の声だけが。


何故、彼女の声だけが俺の心に響くのか、俺はいつも夏流との逢瀬の中で考えていた。


楽しい話、夏流の日常に起こる学校での悲しい出来事、そして母への思い…。


夏流は俺に何時も自分の心情を包み隠さず語っていた。


多分俺に対して、一番自分に近い存在だというのが彼女の中にあったのだろう。

そして母親と同じ境遇の俺に同情もあったのも感じた。


だけど一番強く感じたのは…、彼女の孤独だった。


誰にも拭えない哀しみと孤独。


会う度に俺の心に伝わる彼女の孤独が俺の心を強く揺さぶった。


そしてそれは俺の中に「ある感情」を芽生えさせていた。


そう、僕が君の側にいるよ。


君の哀しみは僕が受け止めるよ。


君の孤独は僕が癒すよ。


だから、君の心からの笑顔を僕に向けて…。


僕の側で幸せだと言う君を感じさせて。


僕は絶対に君を裏切らないから。


君も僕を心から求めて欲しい。


目覚めた僕を誰よりも必要だと言って欲しい。


僕のこの心の傷を君に知って欲しい。


そして僕の存在が許されるモノだと言う事を君に証明して欲しい。


僕は、僕は…。


君が誰よりも欲しい…!


膨大な光が僕の意識を飲み込んで再生を始める。


「僕」と言う意識が、新たな「僕」によって守られて、人格が作られていった…。



そう、夏流を強く求めるこの感情が、「坂下忍」としての俺を目覚めさせていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ