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「step」  作者: 華南
25/42

自覚

Act.25 自覚



「最近の忍て、なんかこう得も知れぬ色気を漂わせているとは思いませんか?」


「そうよねえ。


確かにこう、見ていると体の奥底がぞくぞくと震える感じは確かに」


「まあ、流石、忍さん。


私の自慢の孫ですこと。


誰かさんと違って、麗しい事。」


「本当に。


どうして同じ坂下家の男性なのに、忍とこう出来が違うのかしら。


我が息子ながら、「少し」情けないわよね。」


「あら、最大限よ。


お母様。」


「朱美、それは禁句ですよ。


一応、貴女の兄なんだから。」


「そうです」


「…」


少し離れた場所で珈琲を飲んでいた豪は、盛大に顔を顰め、3魔女を見つめていた。


(はいはい、悪うございましたね。

有り難い事に、俺は忍を違って、貴女方を引きつける様な魅力は一切持ち合わせはいませんよ。


しかし、毎回忍が相手をしなくなった鬱憤を、俺に対しての嫌みで晴らさないで欲しいよな…。)



最近、坂下家の3魔女達の休日は、忍の話題でお茶を開くのが恒例となった。


その場に強制的に毎回付き合わされる豪は、ほとほと困っていた。


婚約者とのデートもこのお茶会の所為で、休日はいつも夜しか出来ない。


(まあ、今年中には挙式を上げ新居を構えるから、この拷問とも言える茶会参加は結婚を機に、多分無くなるだろう。


そう踏んでいるが、この3魔女の事。


絶対に俺の婚約者を引き込んで、もっと頻繁に催す可能性を漂わせている。


いや、絶対にそうだ。


怖い事は、美樹がこのお茶会に興味を興味を持ち、積極的に参加すると言い出す事だ。


美樹はまだ、忍を直に見た事が無い。


今度の日曜にでも逢わせようとは考えているが、今の忍は祖母達が言う様に壮絶な色気と言うか、フェロモンを漂わせている。


逢わせた途端、俺の事よりも忍に夢中になるだろうな。


まあ、恋愛感情ではなくて、アイドルにハマる感じだとは思うが。


これで4魔女になったら、俺の立場は…。


頼むからこれ以上被害を出さないでくれ、忍!)


悲壮感漂う豪の姿を見て3魔女たちは、「本当に冴えない男」と同時に呟き、壮大な溜息をついた…。



屋上では、夏流が透流との突然の再会に表情を無くしていた。


(どうして、透流くんがここに…?)


「久しぶりだね、夏流。

逢いたかった。」


柔らかい微笑みを浮かべ夏流にタオルを差し出す。

震える手でタオルを受け取り、見つめ直す夏流の目は潤んでいた。


ぽつり、と涙が頬を濡らした。


「夏流…」


夏流の頬に触れて涙を拭い、何度も何度もカタチを確かめる。


目を見開き透流の行動を見つめてる。


「綺麗になったね。

思っていた通りだ。」


透流の言葉に、夏流は目を瞬きそして、ぷと、吹き出した。


「いやだ、透流くん。

カッコいいのに、相変わらずね。」


「そっか」


「うん」


身長の高さも顔の造形も、確かに忍の方が勝っている。

だけど、透流の言葉も笑顔も裏が無く、とても温かい。


ずっとずっと、好きだった笑顔だ。


そして自分達の存在が、この笑顔に陰りを与えてしまった。

そう思うとここで透流と話すこと自体罪だと、夏流は自分を叱責した。


夏流の心の機微を感じたのか、透流は諭す様に話しかけた。


「夏流はずっと、自分を責めてるけど、夏流が悪い訳ではない。

責められないといけないのは、夏流ではなく俺の存在だよ。」


透流の言葉に夏流はすかさず言葉を遮った。


「それは違う!


私の存在がなかったら、私達との出会いがなかったら、達流おじさんは。


おじさんは事故で死ぬ事はなかった。」


「…それは夏恵おばさんもだろう、夏流。


俺たちがいなかったら、あんな風に交通事故に巻き込まれず、意識不明になる事はなかった…


ずっと、言いたかったんだ。

自分を責めないで欲しいって。


それを言うのに時間がかかったけど。


でも、やっと言えた。


夏流…。


俺は今も夏流の事が好きだ。


ずっと、好きだった。


俺たちが異母兄妹だとずっと悩んでいたときも、俺は。


夏流の事を異性として、ずっと想っていた」


透流の衝撃とも言える告白に夏流は言葉を失った。


「…え」


「ずっと、好きだったんだ、夏流」


ふわりと自分を包む優しさに夏流は目を見張った。

そして、加わる腕に力に目眩した。


(抱きしめる腕がなんて優しいんだろう。


なんて温かいんだろう…。


ずっと、望んでいた。


そうだ。


そうなんだ。


私はまだ、透流くんの事を…。


透流くんの事を好きなんだ。)


心の中に鎮めていた想いは透流との再会によって、動き出したのであった。


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