序章
心地よい日射しが、深く静寂な森に降り注ぐ。
いつもならば心安らぐここも、今は恐怖と不安で頭が痛くなるほどに落ち着かない。
「小僧。そこの穢れた我が一族を寄越して貰おう。抵抗すればどうなるかは……わかっているな?」
目の前に立ち塞がる、常識外れに巨大な鳥がその長いくちばしを使わずに、話しかけてくる。鳥は炎のように輝く羽翼を持ち、羽毛は僅かに光を秘め、周囲をぼんやりと照らしている。
美しい。見た時素直にそう思った。
「…………」
「……エセル?」
隣にいる、眼前の鳥に比べれば小鳥のような大きさの鳥が、不安そうな瞳をこちらに向けている。
「…………」
その瞳を真正面で受け止められなくて、俺は目を逸らした。
親友で、仲間のはずのこの鳥を見るのが、今は一番辛い。
「ボクは……ボクはこいつらなんかのところにいるよりも、エセルと一緒にいたい! 一緒に戦いたい!」
そんなのわかってる。
三年の付き合いなんだ。それくらいはわかって当然だ。
……なのに、声にはならなかった。
「エセルはボクの、たった一人の親友だ。生まれて初めての、自分よりも大切な仲間だ。だから……答えて、エセル。エセルの意思を……思いをボクに伝えてよ!」
俺を包み込める程に両翼を目一杯に広げて、まだ成長途中の鳥が見上げてくる。心なしか、その顔は今にも泣き崩れそうだった。
「…………」
だけど。
それでも、俺は決して沈黙を破らない。
いや……破れない。
「……ねぇ、何か言って……言ってよ……」
その深い青色の瞳から、一筋の雫が流れ落ちる。声は震え、まともに話せていないのは傍から見ても確かだ。
――少しでも気を抜けば、俺もそうなるのだろうか。
「エセルぅ……っ!」
……やめてくれ。
「ボクは……ボクは……っ!」
やめてくれ。
「エセルっ! ボクは君を――」
もう、もうそれ以上……
「ぅ……う、わあああああああああっ!!」
少年の悲鳴が森中を駆け抜け、集っていた鳥達は来たときより新たに数を一つ増やし、白昼の青空に消えていった。
それから二年の月日が流れた。
どうも皆様、児玉みことです。
初投稿の作品なので至らない部分も多々あります。ご指摘して頂けると有難いです^^
お読み下さった皆様ありがとうございます。これからも連載を続けますので宜しくお願いします。
では次話へレッツトライっ!