07 ボス
レベルの落ちたボスが出てくるといいんですが、そううまく行くものでしょうかね。
「これからもよろしくお願いします!」
「俺たちもこれからも一緒に冒険できるのが嬉しいよ」
「あたしも!もっと役に立つからね!」
「まぁ~、この仕事、国からも金はいるしぃ~、ワリがいいからねぇ!」
「…これからも宜しく頼む」
試合後、4人の自陣で抱き合って喜ぶ。
…フィーさん、そうだったのか。
国からも支援があったんだね。
また1週間後、と約束して、僕は4人と別れた。
4人は表彰され、何か勲章を貰っていた。
ダイヤモンド級冒険者に勝ったとして、何故か僕迄含んでダイヤモンド級冒険者となった。
次の日の魔法修練の時間、ビゼットがこそこそと聞いてきた。
「お前、冒険者とかやってるんだってな?魔法の上達が早いのって関係あるのか?」
「そうだね、実際に敵が居ると、欲しいと思った効果の魔法を思いついたり、使えなかった魔法が咄嗟に使えるようになったりするよ」
「ふーん…そうか…ん――…」
俺も新魔法を登録出来るかも知れねぇのか…と呟く声が聞こえる。
冒険者するのだろうか?怪我しないといいな。
でもハイヒールまで使いこなせるなら大丈夫かな?
結局ビゼットは、先日の闘技会に来ていたダイヤモンド級冒険者達と一緒に冒険に出る事にしたらしい。
あくまで緩く、危険のないダンジョンを選抜してゆっくり進めていくようだ。
僕達はリーダーと相談して、少し難易度を落としたダンジョンなら、ボスのレベルも下がるのかを確認しに、以前より少し難易度の下がったダンジョンに行く事にした。
緑の深い、森の中にある洞窟だ。
「全10層。初心者を卒業して少し経ったあたりの冒険者が向かうダンジョンだ。道中の敵も弱く、その割に素材が良く取れる。調査には丁度いいか、というダンジョンの筈だぞ」
「ん~、あたしも異論ないよ!ボス以外は手ごたえなさそうだけどね!本来はアイアンリザードだっけ?」
「それが出るとは思えないんだけどねぇ~。リヴァイアサンより格下が出れば御の字じゃないかな~」
「…」
ミルさんの言う通り、出てくる雑魚は皆が瞬殺していた。
僕の拡張鞄にどさどさと獲物が入っていく。
そう時間も掛からず、ボス層に到着する。
フィーさんが罠を解除してから、僕達は中へ踏み込んだ。
広いボスフロア、奥の方に見える影はかなり大きい。
「…ベヒモス!」
「下がってないじゃん!!?」
「うあーこれは何処行ってもこのクラスが出てくるんだろうね」
「我に苦難を耐える力を!ストロングディフェンシブストレングス!」
「エリアバリア! リフレクトマジック!ハードプロテクション!体力強化。力増加。速度増加。魔攻増加!」
僕は掛けられるだけの支援を皆に掛ける。
そしてのっそりと出て来たベヒモスに弱体魔法を掛ける。
「ハイスロウリー!アンチストレングス!アンチマジックディフェンス!アンチディフェンス!」
そしてレンドさんの剣に魔法を掛ける。
「属性変換、聖」
ベヒモスの突進をアズさんが受け止め、ぎりぎりいなしている。
其処へ切りかかったレンドさんの剣は、固い皮を貫通してベヒモスの首元に傷を付ける。
「凄いなデリル!攻撃が通るぞ!」
「爆ぜよ滅せ我が敵を!エクスプロージョンロック!!」
破裂する岩がベヒモスを襲うが、効いては居るが少し効き目が薄いようだ。
ミルは土魔法使いだ。
そしてベヒモスは土属性。
相性が悪い。
「あああもう!折角超級魔法覚えたのに!」
そして僕にふわりとした感触が降りて来た。
これは――
「沸き立て、マイティブラッド!」
すると、レンドさんが付けた傷から大量の血液が迸る。
「グォァアアアアア!!!グガァ!!!」
暴れようとするベヒモスを、アズさんが必死で抑え込んでいる。
その間にもどんどん血が噴き出し続け、徐々に力の弱ったベヒモスがぐらりと揺れ、その場に倒れ伏した。
倒れ伏した後にもまだまだ血が噴き出し続け、血液の分だけ体積の減ったベヒモスが最後に残った。
辺り一帯が血の海だ。アズさんもレンドさんも血塗れになっている。
「これはまた…」
「凶悪な癒術だな」
ビシャ、と盾や剣についた血を血ぶりして大まかに落とし、布で顔を拭う二人。
汚れ防止は強かった。
鎧は血塗れだが、その下の服には染みもないようだ。
エクスカリバー程の消費はない。
僕はまだ魔法を使える。
「怪我はないですか?」
「いや、なんとか無事だ。押し切られればやばかったが、弱体化させてくれたおかげだな。助かった」
「俺も一刀入れた甲斐があったというか、それがこんな風に魔法に使われるなんて思わなかったぜ」
ベヒモスはほぼ首筋の切り傷以外は血抜きが完全にされているだけの状態で僕の拡張鞄に入れられた。
ギルドに戻るとマスターが溜息をついた。
「噂は本当みたいだな。今度はベヒモスか…。血塗れではあるが、全員怪我はないのか?」
「全部返り血です。誰も怪我してません」
「ふむ…このベヒモス、完全に血抜きがされているようだな。そういう癒術を坊主が使った、と言った所か?」
「わぁ凄いねマスタ~!アタリ!」
「しかし切り傷があるな。レンド、腕を上げた…というか、魔剣を買ったのか?」
「デリルの支援で聖剣にして貰ったんです」
「なるほど、そういう癒術もあるのか。良かったな。魔剣は高いからな」
「はい」
「今回は血が採れないが、それでも白金貨1800だな。お前らのお陰でギルドは凄く潤っとるわ」
「ん~、今回は他のメンバーも頑張ったし、皆は白金貨300、デリル君は600でどうかな」
「いいんじゃない?」
「僕だけ多いのに、いいの?」
「俺たちは十分だよ。貰いすぎなくらいさ」
そして雑魚の清算をし、こちらでも金貨がじゃらじゃらと鞄に入る。
その後、以前と同じようにギルド併設の酒場でわいわい盛り上がり、夜には解散になった。
部屋に戻って風呂に入ってベッドに入ると、心地よい疲れでぐっすりと昼まで眠った。
■家族
「ゆじゅつし?だから勝手に傷が回復していた…?悪魔の子じゃなかったと!?」
「嘘…あんな化け物みたいな力なのに…希少スキルの持ち主…?」
「一国に1人居るかどうかの希少スキルだそうよ…」
しーん、とその場が静まり返る。
「デリルは…デリルだったのか…?」
「そのようなの…」
母親は顔を覆って泣き始める。
「デリルを今まで私達は…蹴ったり殴ったり…ごはんを与えなかったり…」
「嘘よ…お兄ちゃんがあんな化け物みたいな力を持ってるはずないもの…」
妹はいやいやをするように顔を横に振る。
「今は王宮に住んでるわ…逢いに行ける場所じゃない…もう私の可愛いデリルには逢えないの…」
泣き声で母が告げると、他の二人も涙目になる。
「私…お兄ちゃんに酷い事した…謝る事も出来ない…の?」
「俺は…あいつを刺してもすぐに治るから…今まで…いや、やっぱり悪魔の子に違いない、あんな傷が勝手に癒えるなんて…」
「ゆじゅつしの中でも高位の者にしか出ない特徴だそうよ…」
「そんな事を今更!認められるか!!」
父親は顔を真っ赤にして自分の部屋へ戻る。
「…私もちょっと落ち着いて考えたい…」
妹も子供部屋に戻っていく。
残された母親は、ただただ後悔する事しか出来なかった。
やっぱりボスだけ群を抜いてレベルが上がるようです。そしてまたデリル君に変化が…?




