06 闘技会
皆と仲良く冒険したいデリル君と、実力者の下で安全に冒険して欲しい上部。
「国の上の方々からは、PTメンバーを変えろと言われてるわぁ」
「えっ…そんな…僕はミルさん達がいいんですけど…」
「その皆を危険に晒すの?」
「っ…それは…」
「もっと実力の高いメンバーに入れ替えをしろと言う事みたいねぇ」
「…はい…」
上の決定に僕はしょんぼりと肩を落とす。
その時、息を弾ませてミルが扉を開けてやって来る。
「超級魔術!!覚えたわよ!!――あたしは付いていってもいいわよね!」
「あらあらあら」
「アズもレンドもフィーも皆、今超級に挑戦して、力になれるように頑張ってるわ!皆デリス君の事を気に入ってるから、一緒に居たいの。デリル君、待ってて。週末はまた皆で冒険しよ…?」
「そうねぇ。多分今週末は選抜が行われるでしょうねぇ。上が用意した新メンバーと試合形式で実力を確かめさせて貰う事になるわぁ。――それだけ、高位癒術師は貴重で大事なの。一緒に居たいならかなりの努力が必要なのよぉ?一緒に冒険するだけの関係を維持する事と比べて、どちらに利があるかきちんと考えてね?」
ギリ、とミルは歯を噛み締め、キッとメルドラーナ様を睨んだ。
「上等よ!あたしは諦めずに研鑽する!それでも負けたら…、潔く諦めてやるわよ…でも勝つ!」
泥で汚れた鼻をふんっと鳴らしてミルは腕を組む。
メルドラーナ様はそれを見て苦笑する。
「解ったわ。私からも新メンバーに通達し、上に闘技会の申込みもしておくわねぇ」
ミルはぺこりと深く一礼し、部屋を出て行った。
「フン、雑魚の機嫌取りだけは上手いみたいだな!」
負けん気に火が付いたのか、ビゼットは中級魔術を順調にこなして行っているようだ。
…そんなにエクスカリバーが使いたいのだろうか。
多分、僕は戦う彼らに支援する事は許されないだろう。
ただ、心の底から応援する事しか出来ない。
「…あれ、デリル君、頭の上に何か…うっすらと…」
情けない顔で悩んでいると、メルドラーナ様が目を瞠った。
「光に透ける程薄いから気づかなかったけど、光輪があるわ…リヴァイアサンを倒したからかしらぁ」
「光輪!?えっなんでそんなのが僕に!?」
「…神子への階段を上がっているって事かも知れないわねぇ」
そんな階段は別に上がりたくないんだけども。
楽しく皆で冒険出来る方が嬉しい。
「…神子になったら何か良い事でもあるんですか?」
「世界規模での支援魔法が使えると言われているけれど、過去に例がないので確たる事は何も言えないのよぉ」
世界規模での支援魔法。
ピンとこない。
どう言う時に何に使うんだ?
ぽろ、と涙が落ちる。
「…僕はそんなのよりミルさん達と楽しくダンジョンに入りたかったです…」
「デリル君…でも、歴史上初の神子になれれば、今まで出来なかった事が出来て、デリル君が今まで目を瞑らざるを得なかった事が改善出来る可能性があるのよぉ…例えば、旱魃に苦しむ農家の村を救ったり…」
そんな事は考えた事もなかった。
でも、食べ物がないのは苦しい。
そんな目に合う人は居ない方がいい。
それでも皆との時間の方を取りたくなるのは僕の我儘なのだろうか。
闘技会の日が来た。
ダンジョンで敵と戦わないと僕は今新しい魔法は生み出せていない。
第一試合、リヴァイアサンの大きさを模した岩に、どれだけダメージを与えられるかを競うらしい。
「スタート!」
審判の掛け声と共に二人の体から魔力が立ち上る。
「爆ぜよ滅せ我が敵を!エクスプロージョンロック!!」
「灰塵と帰せ全てを燃やし尽くせ!エクストラバーニングフレイム!」
二人とも超級魔法だ。
だが、土魔法を得意とするミルの方が進行が速い。
青年の魔法がどろどろと岩を溶かしている間に、爆裂する岩がどんどんと巨大な岩を破砕していく。
先に破壊しきったのはミルだった。
ミルの勝ちだ。
青年はそれから暫くして岩を熔かし切った。
「…へへ。あたしの勝ちだね!でもレネックさんの魔法も凄かったよ!」
「ふう。負けるとは思わなかった。もっと火力を上げないといけないな」
二人は気持ちよく試合場で握手をし、お互いの陣営に帰っていった。
第二試合は騎士同士の対戦だ。
刃引きしたとはいえ、金属の剣だ。
怪我しないか気になって仕方がない。
「スタート!」
これは騎士同士の御前試合ではない。
冒険者としての戦いだ。
蹴りや素手、何でもありだ。
急所への攻撃は認められていない。
実力が均衡しているのか、二人の動きはまるで剣舞のようだ。
ギリギリで見切り、反撃を叩き込む。
それもまた見切られる…そんな応酬が15分ほど続いた後、隙があったのか、レンドさんの蹴りがフェルティーナさんの腹にヒットする。
体勢を崩したフェルティーナさんの首に剣を当て、レンドさんは勝ちを示す。
「蹴りなんて…あんたは騎士失格よ!」
「冒険者としての選抜だから、騎士失格の戦い方でいいんだよ」
「…私は負けたとは思ってないからね!」
手を差し伸べたレンドさんの手を叩き返し、フェルティーナさんは自陣へ戻った。
レンドさんも肩を竦めて自陣へ戻る。
第三試合は盾の兵士の試合だ。
土魔法の大岩や弓兵の弓、水魔法などの障害から味方を守れるかという障害物突破試練だ。
「あんたが俺の相手?ボク負けないからねぇ!よろしくぅ!」
「…宜しく頼む」
「やだなぁ暗いなぁ。もっとテンション上げてこ!」
差し出されたロッサーグの手にアズさんは握手し、背を向ける。
背中合わせ、両端から飛来する攻撃をそれぞれ捌く仕様だ。
「…んん、ではスタート!」
「苦難よ我に集中せよ!アウトフェース!」
「我に苦難を耐える力を!ストロングディフェンシブストレングス!」
アウトフェースを掛けたロッサーグは、全ての障害が大盾の中央に吸い込まれ、後ろへの余波はない。
だが、岩をどけたり砕いたりするのに苦労し始めた。
アズさんは身のこなしで全ての攻撃を縦の中央に来るよう受け止め、岩は盾で殴るようにして砕いて破片が後ろに飛び散らないよう受け止めている。
ロッサーグは2個目の大岩を受け止め損ねて岩に潰される。
振り返ったアズさんが岩を砕き、僕を呼ぶ。
「デリル!」
「はいっ、ハイヒール!」
直ぐに駆け付けた僕はハイヒールを掛ける。
重症だったロッサーグさんは見る間に元の姿に戻る。
…服は破れているが。
「たは…負けちまった~…。回復も後処理もサンキュな~!」
「岩はかなり破壊力があった。アウトフェースだけでは耐えられまい」
「…だな。ちぇ、あんたの勝ちだよ!」
アズさんの勝ちだ。後は斥候を残すのみだ。
第四試合は斥候の勝負だ。
ボス部屋のロックの状態を解析し、限りなく近づけた石の扉が試合会場に設置される。
ふと僕は気づく。フィーさんの体から魔力が感じられる。
不思議に思いながらも、勝負を見守った。
「スタート!」
扉を開いたもの勝ちだ。
どちらも開けなかった場合、難易度を落とした扉を用意してあるという。
スタートと同時に、隠し持っていた工具を二人が取り出すが、あからさまにフィーさんの工具の方が少ない。
それを見たヴァネッサが、ふ、と笑った。
フィーさんは全ての道具を駆使して扉の隙間をこじる。
ガチャガチャした音が30分程続いた後、不意にフィーさんの手元に魔力が集中し、それを受けてガコッと音が響いて開いた。
「なっ…そうか…魔力…!」
「そう。最後の仕掛けには魔力を込めないと開かない。以前ボス部屋の扉開けようとして気づいたんだよね。魔力を身に着けるの苦労したぜ~!ヴァネッサちゃんが良ければコツ教えてあげよっかぁ~?」
「…遠慮するわ。私は私で身に着けて見せるから。今回は負けね」
フィーさんの勝ちだ。
ミルさん達が全員勝った!
凄い…皆努力したんだ…!
僕は感動の余り涙ぐんだ。
ミルさん達が手を振る。
僕はそれに向かって大きく手を振って返した。
「皆デリル君と一緒に冒険したかったのね。凄く頑張ったのねぇ」
「はい、皆凄いです!嬉しいです!」
会場の上座で座っていた偉い人たちは何やら苦虫を嚙み潰したような顔をしているが、何故だろう。
「国王と対立してる派閥の肝いりメンバーだったのよ、今回の人達は」
…派閥。
ちょっと良く解らない。
「…まだデリル君には早かったかしらねぇ。まあ、上の人にも色々居るのよぉ」
「…はい」
上の人とやらの考えは解らないけれど、僕はミルさん達と別れなくて済むんだ。
じんわりと嬉しさが胸を温めた。
また皆と一緒に冒険出来るようですね。30分掛かるとはいえ、




