05 女神の試練
デリル君には才能があるようですね
「…湖沼のダンジョンだったよな?」
「はい」
「…リヴァイアサンに見えるんだが?」
「俺にもそう見えます」
「今回だけなのか、今後ずっとなのかが解らないので、湖沼のダンジョンには調査を入れた方がいいと思います」
「お前らで勝てる相手じゃなかったろ!!」
「…確かに俺たちじゃ歯が立ちませんでした。倒したのはデリル君です」
「――癒術師がどうやって敵を倒すんだ!!?」
「なんかでっかい剣を喚んで一刀両断でした」
「エクスカリバーって癒術です…」
「お前…それ使える奴なんて500年程現れてないって聞くぞ…超級癒術のトップじゃねえか!」
はぁ…と溜息をついてどかりとマスターは椅子に掛ける。
「お前らの誰一人掠り傷もない…支援も完璧か。デリル、カードを貸せ。ゴールドまで上げて置く」
「えっ!じゃあ俺ちゃんも!!俺一人だけシルバーは酷くない!?」
「ぁあ…リヴァイアサン退治のPTに居たしな…まあいいだろう」
「やった!ミルシャちゃんと一緒!」
「でも本来貢献出来てたのは多分この坊主だけなんだろうがな。あのクラスの魔物は魔剣でもなきゃ傷も付けられねぇ。良かったな、坊主が居て。――傷も綺麗なものだな。白金2000だ。これ以上は出せん」
「は…2000!?うわあ…えらい額だが、殆どデリルの手柄だしな…」
「あたしら100ずつ貰って、残りはデリルでいいんじゃない?そんくらいしか働いてないもん」
「あー、一応他の雑魚の素材もあるんだが」
「そっちは均等でいいと思うよ。支援してくれてたじゃない」
「むしろリヴァイアサンの取り分を貰うのが申し訳ない…」
「まあ…時間稼ぎ代って事で?」
お金の話は余り解らないので任せているとどんどん話が進んでいく。気が付くと、プラチナに輝く硬貨や金貨、銀貨がじゃらじゃらと袋に詰め込まれていた。
「一気にお金持ちだねデリル君!邸が建つよ!」
「えっそんなに高いんですか、この白いお金!?」
「リヴァイアサンの素材なんて、そうそう手に入るものじゃないんだよ」
「そもそも倒せる人間が殆ど居ない」
「デリル君は凄いことをしたんだよ?」
そんなに凄い金額なら、僕も大きいマジックバッグを買ったら皆の役に立てるかも知れない。
「じゃあこれで一番大きいサイズのマジックバッグを下さい」
「!?」
「一番大きい…坊主、稼いだ金がすっ飛ぶぞ?」
「いえ、皆の為になりそうなところにお金を使いたいんです」
「…ふむ。そら。白金1500だ。リヴァイアサンが10匹は入る」
「はい!ええと、1、2、…」
見かねたギルドマスターが、すぐに1500枚を数えてくれる。残金は皆と同じだ。
「…良かったの?デリル君…」
「はい、これでいっぱい持って帰れますね!」
「いや、滅多にあんな大物は出ないからな?」
「まあまあ、雑魚敵山ほど倒して素材採るのもいいじゃんね。チリツモって言うじゃん」
「…オーバーサイズ」
わいわいと騒ぎながら、ギルドでの打ち上げをする。
2日休みだが、1日は体を休めるように、とPTメンバーから言われ、2日の休みのうち、1日は冒険、1日は休暇、というサイクルで動く事になった。
リヴァイアサンの皮部分は剥製にされて、王家に飾られる事になったらしい。
肉は美味く、内臓は薬になり、骨は武器の素材になるらしい。
捨てる部分がないモンスターだという事だった。
皮も本来は防具に使用されるらしい。
固くて刃が通らなかったもんね。納得だ。
ギルドのご飯も、食事処に負けない程美味しかった。
特に冒険が成功して気分が上がっていたからか、凄く楽しい食事になった。
ご飯後は、皆で王宮まで戻り、魔法省まではミルシャさんと一緒に戻る。
「じゃあまた次の休暇に冒険しに行こうね!多分今回は異例だから、あんな敵はもう出ないと思うから!」
「解りました、いつもはあんなに大きな敵は出ないんですね?」
「そうそう。だから安心してね!じゃ、おやすみ!」
思ったより疲れていたのか、僕はぐっすりと眠って昼近くまで目を醒まさなかった。
休日が終わるまで僕は、新たに生み出した魔法を書ける範囲で書いていく。
まだ文字を全部覚えた訳じゃないので歯抜けな表になった。
次の日の午前、メルドラーナ様に紙を提出し、歯抜けの部分を口頭で補填する。
メルドラーナ様は歯抜けの部分を書き足してくれた。
「ハードプロテクションはとても使えそうね!速度増加なんかのバフ魔法もとてもいいわ。中級と高級あたりかしらね。教科書に書き足しておくわ」
「お役に立てて嬉しいです!」
ビゼットさんは何だかイライラした顔をしている。
「あ、あと、エクスカリバー使えました」
「まあ!!!まあまあまあ!!凄いわね!此処で再現できるかしら?」
「此処でやると、建物と人に被害が出ます…」
「あら…そんなに大きい攻撃魔法だったの?」
「はい。リヴァイアサンを一刀両断出来るサイズです」
「リヴァイアサン!!??デリル君、冒険って何処に行ったの!?」
「リヴァイアサンだと!?嘘つくな貧民!あんなのダイアモンド級冒険者が20人程居ないと倒せないんだぞ!」
「本来のボスは違うらしいんですけど、ボス部屋に行ったらリヴァイアサンが何故か居まして…」
「…女神の試練……」
「え?」
「女神の試練かも知れないわ。今後冒険に行くときは気を付けなさい。次回からもボスが強力になっている可能性が高いわぁ…」
「はぁ!?こんな奴に女神の試練だと!?あるわけない!メルドラーナ様騙されちゃ駄目ですよこんな貧民の言う事!!エクスカリバーだって本当は使えないんだろ!?」
「…めがみのしれん…?」
「試練をこなせば神子になれるという厳しい試練なのよぉ。この試練で死亡する件もあると聞くわ。過去に…1000年くらい前に1度だけあったそうなのだけど、神子になる前に死亡したと聞いているのよ」
「貧民の神子!ハッありえないね!!そういうものは俺にこそ相応しいというものだ!」
「まあ…演習場なら声を掛けて皆に退避して貰って試すことが出来ると思うわ。…構わないかしらぁ?」
「あ、はい。大丈夫です」
僕達は演習場に移動し、場所を使っていた魔術師達に声を掛け、一旦フィールドを開け、僕は念の為建物などに被害が及ばないようにバリアを張った。
「使うと魔力を全て使い切るので、魔力ポーションを飲ませて貰えますか」
「解ったわぁ」
「…我に害なす敵を滅せよ!エクスカリバー!」
あの時と同じ、全ての魔力を吸い上げられる。
そして空に巨大な刃が形作られ、地面に向かって振り下ろされる。
ガバァン!!!と大きな音を立てて地が割れる。
ビゼットは飛び出しそうな程目を見開き、絶句している。
メルドラーナ様も驚いた顔をしている。
「これは…確かに室内では出来ない癒術ねぇ…」
そしてへたりこんだ僕に慌ててメルドラーナ様がMPポーションを飲ませてくれる。
「土魔法使いに頼んで治してもらわないと、もう此処は使える状態じゃないわね…立ち入り禁止の札を立てておかなければならないわぁ」
大きな亀裂が入り、崖のような状態になっている。
此処で誤って落ちれば軽い怪我では済まないだろう。
使用人らしき人々が、危険の札を持って駆け寄り、設置していく。
その後は土魔術の階層へ行って処理を頼みに行ったようだ。
「メルドラーナ様。俺ももうちょっと進んだらこれが使えるんですか?」
初めて見る興奮したような顔でビゼットは詰め寄る。
「そうねぇ。ちょっと先になるけど、頑張ったら使えるかも知れないわねぇ。呪文は解明して貰ったのだし」
「ふぅん…デリルが解明したってのは気に入らないが、習得しやすくしてくれたのはまあいい」
くく、と笑うビゼットが、一体何処でエクスカリバーを使う気なのか気になる。
人に迷惑を掛けそうな予感しかしない。
僕達は地魔術師達に後を任せ、鍛錬部屋に戻った。
ビゼットは先を楽しみにするように、ピュリフィケーションを成功させた。
浄められた空気が気持ちいい。
「よく頑張ったわねぇ。ビゼット。では次の中級魔法に進んで構わないわぁ」
「はい!」
今までと違ってビゼットにやる気が見られる。僕に絡まれないだけ有難い。
「デリル君は新しい魔法を色々とイメージしてみてね」
「はい」
と言われても、漠然としていて何をイメージしていいか解らない。
皆と冒険に行った時、リヴァイアサンと相対した時なんかに何が使えれば役に立っただろうかと思いを馳せた。
――例えば、敵を弱体化出来れば…あの皮には剣が通らなかった。
脆くすれば剣だって通ったかも知れない。
「アンチディフェンス」
――攻撃力も削げればもっと良い。
「アンチストレングス」
「アンチマジックディフェンス」
――機動力も削いでアズさんの負担を減らしたい。
「ハイスロウリー」
「…まあまあ。相手の抵抗値に勝たなければならないから上級魔法と言ったところかしら。色々思いついてくれて有難いわぁ」
メモを取りながら、メルドラーナ様が言う。
でも僕自身は、これでちゃんとリヴァイアサンを皆が倒せるのか確信出来ない。
何か他にもないだろうか。
そうだ。
魔剣が必要だと言っていた。
そういう特性を付与したり出来ないだろうか?
「属性変換、聖」
僕には聖属性のものにしか変えられないが、属性付与とは違い、剣の特性自体を聖の剣へと変えるこの魔法ならなんとかなるんじゃないかと僕は思った。
「あらあら…凄い魔法ね…これは超級に入れておくわねぇ」
…一度エクスカリバーで魔力を使い切っている僕は、MPポーションの分だけではこれが限界だ。
ふう、と溜息をついて座り込む。
メルドラーナ様はその様子を見て、気づいたように言う。
「魔力を1度使い切っていたわねぇ…忘れていたわぁ。今日はデリル君は終わりで大丈夫よぉ。MPポーションの濫用は余り良くないからねぇ」
「はい、少し部屋で休んでから授業に行きます」
少しふらつきながら僕は部屋で横になり、小一時間ほど眠った。
それだけでも結構回復したようで、倦怠感は消えていた。
ごはんを食べに食事処に行くと、ミルシャが手を振っている。
僕はご飯のプレートを受け取ると、ミルシャの隣に座った。
今日のごはんも美味しい。
「あのね、ミル。僕が冒険に出ると、ボスが強くなる可能性が高いみたいなんだ」
「ぶっ。え?どういう事!?またリヴァイアサンみたいなのが出るの?」
「…うん、女神の試練ってメルドラーナ様が言ってた」
「あちゃ~…それは…あたしらでは役に立てなさそうなんだけど~」
「敵を弱体化させたり、剣を聖剣にする魔法は使えるようになったんだけど…」
「うーん。魔法や剣が通じるならいける…かなあ…。エクスカリバーもあるし…これは皆で相談しないと返事出来ないなぁ」
困った顔をしながら、ミルは首を傾げた。
PTメンバーは継続か解散か。




