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04 ダンジョン

PTメンバーは良い人たちです。楽しく冒険できるといいですね。

 勉強は、お爺ちゃん先生が解りやすく僕のペースに合わせて教えてくれる。


 僕は自分の名前だけは書けるようになった。


 計算も、少しだけ出来るようになった。


 教科書の文章はまだ読めないけれど、少しづつ頑張っていこう。


 この国の歴史は、似た名前の人がいっぱい出て来て、正直覚えられる気がしない…。


「急がなくていいからの。ゆっくり覚えていけばいいんじゃよ」


 お爺ちゃん先生は笑顔が可愛い。


 くしゃりと顔を綻ばせて笑う。


その笑顔に励まされながら僕は頑張った。



 癒術の訓練を完全に無視する訳にはいかなかったらしい。


 ビゼットは次の日の朝にも姿を見せた。


 ただし、不機嫌満載の顔でこちらを睨みつけながら。


 ビゼットはハイヒール、僕はエクスカリバーを何度も使おうと訓練するが、一向に成功しない。


 ただ、昼になる前に、ビゼットはハイヒールを成功させた。


 ふ、とビゼットの頬が緩む。


「お前が停滞してる間に俺様が追い抜いてやる。見てろよ貧民!」


 上機嫌にそう言うと、部屋から出て行った。


「…現存する書物の中で癒術の最高魔法をやってる事は言わない方がいいみたいねえ」


「はい、言いません」


「もしかしたらデリス君は癒しに特化していて攻撃魔法が不得意なのかもしれないわねぇ。でも腐らずに頑張ってねぇ。これが使えたら、後は自分で使いたいと思った魔法があれば編み出してくれていいのよ?」


「いや、そんな事が出来る気がしません…」


「まぁまぁ、焦らずに、これからもエクスカリバーの特訓をしましょうねぇ」



 そんな感じで2日が過ぎ、ビゼットはピュリフィケーションがもう少しで成功しそうだった。


 僕は進展がない。


 そして休日。PTメンバーが僕を迎えに来てくれた。


「あたしはもう自己紹介要らないと思うけど魔術師のミルシャよ。よろしくね!ミルって呼んでくれていいよ」


 次に騎士のお兄さんがバイザーを上げてにかっと笑う。


「俺がパーティーリーダーを務める。騎士のレンドジークだ。解らない事は聞いてくれ!よろしく頼むぞ。おれもレンドと呼んでくれて構わない」


 その次に、細身の男性が前に出る。


 なんだろう。


 凄く存在感が薄い。


「俺っちが斥候のフィリッツさ。好きなものは可愛い女の子!ミルシャちゃんも狙ってるからね!」


「もう断ったでしょう!?」


「ちっちっ、七転び八起きって言うじゃんね~?あ、フィーって呼んで構わないよお」


 次に前に出たのは、厳めしい鎧と盾を装備したマッチョなお兄さんだ。


「…アズール。盾だ」


「あ、不機嫌な訳でもなんでもないよ!アズっちは寡黙というか…必要最低限しか喋らないの。彼もアズって呼んでいいから。特に冒険中は連携の必要があるからフルネーム呼んでると間に合わない事もあるし、皆略称でね。デリスは…略す必要なさそうね」


「皆さん宜しくお願いします、精一杯頑張ります。僕のワガママの為にPTを組んで頂いてありがとうございます」


 するときょとんと眼を見開いた皆が笑い始めた。


「あははははっ、此処にいる面子はね、王宮に勤めながらも冒険者として活動してる者ばかりなのよ!」


「そうそう、休日のみだからそんなにランク高くないけどな。俺まだゴールドランクだぞ」


「あっれ!?レンド抜け駆けした?俺っちまだシルバーなんだけど!?」


「以前のスタンピード要請時に戦闘職だけ呼ばれたからな。それだろ」


「そそ。あたしもゴールドだよん」


「…」


「アズっちもゴールドだよ」


「ガーン…俺っち仲間外れ…」


「斥候が必要な場面じゃなかったからなあ」


「後方支援にビゼット呼ばれてたんだけど、あいつビビって来なかったでやがるのよ。腰抜けよね」


「んじゃギルドに行こうか。デリスにはちょっとハードル高いかも知れないけど、俺らには物足りない、くらいの場所を選ぶ心算だけど、問題ないか?」


「はい、僕は後ろから支援するだけですので守って下さい」


 それでも一応、買ったナイフはローブの下に隠し持っている。


 ギルドへ行くと、マスターがメンバーを見て難しい顔で唸っていた。


「ランク差が酷い。普通ならとても容認できる構成じゃないんだが…坊主の重要度を考えると致し方なし…か」


「湖沼のダンジョンに行こうと思うんですが」


「はぁ!?坊主はウッドランクだぞ!?」


「でも、癒術は高位まで全て修めたって聞いてますよ」


「高位癒術が使えるのか…それならちゃんと役に立てそうだな…」


「そうそう、冒険に一緒に行ってもそのレベルのダンジョンならあたし達で守り切れるでしょ?」


「むむむむう…仕方ない…認めてやるが、例外だからな!」


 ふんっと鼻息を吐き出したマスターは、依頼書を取ると、受領の判を押した。


「やったぁ!絶対デリス君は守りますんで!」


「ああ、約束しよう」


「デリスは女の子じゃないけど、ちゃあんと俺っちは仕事するぜぇ」


「…」



 ローブは裾を引きずる程長くは無く、意外と動きやすい。


 ただ、白という色は汚れやすそうで気になる。


 汚れ防止と強度増加の魔力糸で布が編まれていると聞いてはいるけれど。


 湖沼のダンジョンと言うだけあって、沼が中心にあり、その脇道を通る形でPTは進む。


 水面から離される形で僕は隊列に配置された。


 暫く進むとザバッと水面から角を持った大きな魚が飛び出してくる。


 アズさんが水面に戻さぬよう角を滑らせるように壁に激突させる。


 後はレンドさんが頭を落とした。


 解体も鮮やかで、拡張の魔法が掛かった鞄に素材を詰めている。


 てっきりまだ敵は居ないと思っていた僕は、慌てて癒術を掛ける。


「エリアバリア!リフレクトマジック!」


 物理と魔法、両方の防御魔法を掛ける。12時間は持つはずだ。


 自分達には余裕のある狩場だと言ってた通り、さくさくと獲物を狩っていく。


 ヒールの出番がない。


 ふわっと体に魔力が立ち上るのが解った。


「…体力強化。力増加。速度増加。魔攻増加」


 4度僕たちの体が違う色に輝いて、身のこなしが軽くなる。


「お。なんだこの魔法。凄いな体が軽いし力が漲る」


「あ、其処踏んじゃダメっす。罠です」


「おわ、もっと早く言え!」


 ひゅ、と毒矢が飛んできたが、バリアに弾かれて地面に落ちる。


「おお…デリス凄いな…」


 その後は罠の忠告が遅れる事もなく、戦闘も卒なくこなし、階段の途中で昼休憩を取る。


 食事処のおばちゃんに、特別に作って貰ったお弁当だ。


冷めてても凄く美味しい。


 ほっこりしながら美味しそうにお弁当を頬張っていると、何故か全員に見られている事に気づく。


「な、なにか顔についてますか?」


「いや、そこまで美味しそうに飯食われるとこっちも美味く感じるなあと思ってな。食事処のおばさん達も喜ぶだろうな」


「だって、美味しいですから!こっちに来る前は、狩ったばかりの獲物の皮を剥いで、塩もなしで焼いて食べて、野草と木の実で飢えを凌いでましたから…。こっちに来てから食事がこんなに美味しくて楽しいって知りました!最高ですね!」


 何故か全員に頭を撫でられた。


「そういや俺、お前を連れて来たヴェリナに聞いたことあるわ。酷い虐待を受けて路上でマウントを取ってぼこぼこに殴ってる母親からお前を保護したって。碌な家じゃなかったんだな…」


 レンドさんはまたわしわしと僕の頭を撫でる。


「ええっ何それ最低じゃん…母失格だね」


「血塗れでズタボロの服着てたらしいぞ」


「…もうそんな母親要らなくない?」


「あ、いえ、家族みんな僕の事悪魔か化け物だと思ってたんで…」


「うわ。最低」


「…」


 アズさんが無言で優しく頭を撫でてくれる。


 僕はスッとナイフで薄く自分の腕を切る。慌ててメンバーが止めようとしたが、その傷がみるみる癒えていくのに驚いて目を瞠った。


「これを見られちゃって、お前は悪魔だって言われて…高位癒術師の特徴らしいんですけど」


「なるほどねぇ。それにしても、悪魔って決めつける前に調べれば良かったじゃんね。短絡的な家族だねぇ」


 フィーさんには頭をぽんぽんされる。ご飯が喉に詰まりそうになった。


 頭を撫でられすぎて、髪はぐちゃぐちゃになったけど、なんだか嬉しかった。


 頭を撫でられるなんていつぶりだろうか。


 なんだか僕の話で盛り上がりながらお昼を食べ終わり、最下層を目指す。



 最下層は一面が僕の膝までの水に浸ったフロアだった。


 巨大な影が奥に見える。


「…は?ここのボスはアクアハイドロフィッシュだったろ!?」


「なんで…なんで…?」


「…リヴァイアサン」


「ちーっとこの戦力じゃ足りないじゃんね…」


 大きな口から吐き出される水のブレスを吐いて来る。


 アズさんが盾を翳すが、そんな程度で防げる量ではない。


 全員が吹き飛ぶが、バリアとリフレクトが作用したようだ。


 半分くらいの勢いで水のブレスがリヴァイアサンに返る。


「ギャォオオオオ!!」


 鱗に掠り傷がついた程度だが、リヴァイアサンは怒ったようだ。


 ザバザバと水を掻き分けながら突進してくる。盾では防げそうもない。


「散開!」


「ハードプロテクション!」


「ロックランス!」


 新しく思いついたより硬い物理防御癒術を全員に掛け、その場を飛びのく。


 ミルシャの魔法がリヴァイアサンの頭を下からカチ上げてこちらの被害を避ける。


 だが、その固い皮膚を貫くことが出来ない。


 ボス部屋の扉は、僕達が入った瞬間に閉じた。


 逃げられない。


 フィーさんがなんとかこじ開けられないか色んな道具を使って試している。


 リヴァイアサンは今度は大きく口を開けて僕達を飲み込もうとする。


 一番装備の重いアズさんが飲み込まれそうになっている。


「ロックバレット!」


「ぐ…斬れねえ…!」


「…ッ!!」


 その時、僕の中で何かが膨れ上がった。


「我に害なす敵を滅せよ!エクスカリバー!」


 膨大な光が僕の中の魔力をありったけ吸い上げてリヴァイアサンより少し大きい剣の形を取る。


 そのままリヴァイアサンの頭を斬り落とし、ぶわっと光が破片となって飛び散る。


「アズさん!大丈夫ですか!」


「バリアが牙を弾いてくれた。無事だ。礼を言う」


「助かった、本当にありがとう、デリル」


「まさかこんなボスが出るとは思いもしなかったわ。危険な目に合わせてごめんねデリル」


「くはぁ~結局扉破れなかった、悪ぃ…助かったよデリル」


 全員に礼を言われながらも僕はへたりこんでいる。


 魔力切れで動けない。出発前に渡されたMPポーションを震える手で取りだして呷った。


 少しだが魔力が回復し、動けるようになる。


「皆のお陰でエクスカリバーが使えるようになったよ。連れて来てくれてありがとう」


「癒術に攻撃魔法なんてあったんだねえ…相当高位の魔法なんじゃないのか?」


「うん、超級で一番上の魔法」


「えっじゃあもう癒術全部習得済?」


「本に載ってるのは全部だね」


「うわあ。ビゼット悔しがるだろうなあ…」


「多分悪魔や死霊に特攻効果があるみたいだよ」


「…なあ、これ解体ナイフ通らないんだが、誰か大容量のマジックバッグ持ってないか?」


 一人リヴァイアサンを解体しようとしていたレンドさんが困った顔をする。


「あ、あたし持ってる。素材持ち帰れないの嫌だから、大枚はたいて買ったんだよ」


 ズルズルとミルシャのバッグに巨体のリヴァイアサンの体と頭が飲み込まれていくのは不思議な光景だった。


 最後にリヴァイアサンの髭がちょろりとはみ出て居る。


「ん。ギリギリだったみたい」


「入って良かったな」


「リヴァイアサンの素材なんて捨てて行ったら勿体ないからねぇ~」


「…ん」


 其処からはさっさとダンジョンを抜けて皆でギルドに戻った。



エクスカリバーが使えたことで、デリル君は後は自分で魔法を編み出していくしかないですね。

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