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03 先輩

先輩は家柄でも国唯一の希少スキルの持ち主だった事もあり、相当甘やかされたお坊ちゃんです。

「侯爵家出の俺が、お前みたいな貧民出のチビと一緒に訓練する?冗談じゃないね!」


「あらあらあら。でも癒術師としての格はこの子の方が上よ?」


 食事処で朝ごはんを食べ、呼ばれた時刻に最上階の長の部屋に入った瞬間に行き成り青年に指をさされた。


 言い合いをする二人の間に口が挟めない。


「はぁああああ!?有り得ないね!僕がこんなのに負ける日なんて来ないね!」


「あらあら…負けるのが怖くて一緒に訓練出来ないって言っているように聞こえたわぁ?」


「そんな訳ないだろ!エリートで希少能力を持った尊い血の僕が!負ける訳ないんだよ!」


「あら。それなら一緒に訓練しても問題ないわね?」


「…クッ…解ったよ」


「そんなところで小さくなっていないで、こちらにいらっしゃい、デリス君。まあ、ビゼット君は少しおさらい、と言う事で少しの間付き合ってちょうだいね」


「…チッ」


「ではまず、相手を癒そうと思いながら、ヒール、と唱えて下さい」


「ひーる」


「ヒール」


 ふわっと僕とビゼットさんの手から光が放たれるが、僕の方が若干光が大きい。


 それを見たビゼットさんは目を見開いた。


「一発成功…?しかもこの光の量…」


「はいはい、続けますよ。次は相手の状態異常、毒とかそういうものを浄化する事をイメージして、キュア、と唱えてください」


「きゅあ」


「キュア」


 少し色の違う光がまた2人から放たれる。


 これも僕の方が光が多い。


 ビゼットさんの顔が不機嫌そうになる。


「次は身を守る魔法です。自分に相手からの攻撃が届かないよう、自分の周りに透明な壁を築くようにバリアと唱えてみて」


「ばりあ」


「バリア」


 シャボン玉のような丸い壁が僕の周りに展開される。


 隣のビゼットさんは驚いた顔でこちらを見ている。


「…なんで1回で成功すんだよ、おかしいだろ!俺はこれを習得するのに1月掛かったんだぞ!!?お前なんかズルしてるんじゃねえのか!?」


 魔法を唱えているだけなのに、どうズルをするのだろう。


 僕は首を傾げる。


 すると、ビゼットさんに舌打ちされ、睨まれた。何が悪かったのだろう?


「デリス君は優秀ねえ。では、ちょっと中級魔法にも挑戦してみましょうか。1回で出来なくても落ち込まなくていいからね」


 その言葉を聞いた瞬間、ふふん、とビゼットさんは得意げな表情になる。


「範囲内に居る全ての人を癒したい、と強く念じながらエリアヒール、と唱えて下さい」


「えりあひーる」


「エリアヒール」


 ぶわっと床に魔法陣が描かれ、其処から光が立ち上る。


 僕の出した光の床はビゼットさんの倍ほどはあった。


「あら。中級魔法も1発ですか。本当に優秀なのねぇ。高位癒術師ってこういうものなのかしらぁ」


「…ってられねえ。やってられねえ!どうせメルドラーナ様が手を貸してズルしてんだろ!!一発で成功する筈ないだろ!!おかしいじゃねえか!」


「あらあら。待ちなさい。次は丁度貴方が練習中のハイヒールですよ!指導員として、ここでの鍛錬放棄は認められません」


「ぐっ…」


「大怪我を負った重傷者を癒すには、ヒールでは足りません。そういう場合にハイヒールを用います。重傷者をイメージして、それを治すことを想像しながらハイヒール、と唱えて下さい」


「はいひーる」


「…ハイヒール」


 僕の手から虹色に光る大きな光が生まれる。


 ビゼットの手からはヒールの白い光が漏れている。


「ビゼット君は虹色の光が出せる迄ハイヒールの練習をしていてね。デリス君は瘴気を払って場を清める魔法を試してください。聖なる空間を意識しながらピュリフィケーションと唱えて下さい」


「ぴゅりふぃけーしょん」


 さあっとこの場が聖なる気で清められたのが解った。


 中級魔法を網羅していき、上級魔法に差し掛かった辺りでバンッ!と大きな音で扉を閉める音が響き、ビゼットさんが部屋を出て行ったのが解った。


「あ…」


「うーん。君が優秀過ぎたようね…今まで国唯一の癒術師だとちやほやされてきて、甘やかされてきたからねぇ…癇癪を起したようだわぁ。まあ、何処まで使えるか、このまま試してみましょう。次は――」


 上級魔法もほぼ1発でこなしてしまえた僕に、メルドラーナ様は目を丸くする。


 上級魔法の中でも難易度の高い、瀕死の人間を1発で健康体に戻し、欠損も治すエクストラヒールには3度掛かった。


「凄いわ…後は未だ使えた者が殆どいないという超級魔法しか残ってないわぁ…あの子が拗ねても仕方がないレベルだわ。死んで3分以内のみ、死者を復活させる事ができるリザレクション。強くこの人を失いたくない、と念じながらやってみてね」


「…りざれくしょん」


 鋭い光がその場に突き立とうとしてふわりと途中で解けた。


 5度繰り返すと、突き立った光が渦を巻くように人型を模して緑色に輝いて消える。


「どうやら成功ね…これは才能という言葉で終わらせていいものなのかしらぁ…」


 それからも超級魔法をこなして行ったが、その日、これが最後の魔法だと言われた『エクスカリバー』だけは成功できずに終わった。


「うーん、もしかしたら魔法全て、呪文なんかが有るかも知れないけど失伝しているのよぉ。何か頭に浮かぶ言葉なんかがあったら口に出しちゃってもいいからねぇ。午後はお勉強の時間だったわね、また明日いらっしゃい」


「はい!」


 食事処でまず昼ご飯を食べる。


 市井の人は1日に朝昼夕と3度ご飯を食べると聞いていたが、体が飢えから完全に開放されて喜んでいるのが解る。


 食べ終わった食器を返しに行こうとすると、いきなり足を引っ掛けられた。


「あっ…」


 ガシャン!パリィン!!


 騒々しい音を立てて食器が落ちて割れる。


 トレイは木製だった為無事だった。


 その上に転んだ僕は体のあちこちをガラスや陶器で切られた血塗れの姿になる。


「おやおや痛々しいな!何もないところで転ぶなんて流石貧民だ。王宮に不釣り合いなんだよ。出て行けよ」


 ぽろぽろとガラスや陶器の欠片が落ちて勝手に傷が癒えていく。


「は!?何だお前それ!バケモンかよ!」


「ちょっとビゼットやりすぎよ!いっつも身分を笠に着て偉そうにしてるのも気に入らなかったけど、子供にこんな怪我をさせるような奴だとは思わなかったわ!!」


 使用人の人達が、慌てて割れ物の処理を始める。


「はぁ!?癒術も使えないそこらの凡庸魔術師が俺様に物言いすんのか。なあミルシャ、お前このチビの冒険者パーティに入れたからって調子こいてんの?」


「その何処から来るのか解らない上から目線マジやめてくれる!?魔法省に入ったからには役職以外での身分は関係なくなるんだからね!しかもその様子じゃ新入りのデリス君に負けたとか?初日で?ぷぷ!」


「うるせえ!!!」


 カッとしてビゼットさんがミルシャさんを殴ろうとした間に入る。


 かなり容赦のない拳が僕の頭を殴る。


 こんな攻撃を女の人にするなんて!


 ぐらぐらする視界が徐々にハッキリしていく。


 鼻の下が熱いと思ったら鼻血が出ていた。

「デリス君!!」


「…ふん。勝手にしゃしゃり出て来た報いだな」


 ミルシャさんに抱き起される頃には僕は回復していた。


 ズタズタになったシャツで鼻血を拭く。


「…服は足を引っ掛けたあんたが弁償だからね。メルドラーナ様に報告しとくから!」


「はん、そんなはした金なんかいつでも払ってやるよ!チッ、けったくそ悪ぃ」


 そう言うと、ビゼットさんは食事処から出て行った。


「さっきビゼットも言ってたけど、あたしが冒険者の依頼に同行する魔術師、ミルシャ。後は騎士から1名、斥候から1名、盾兵から1名の5人PTだよ。宜しくね。それにしても本当に自然に怪我が治るんだね…高位癒術者って凄いね」


「あ…、こちらこそ、庇ってくれてありがとうございます。PTも、宜しくお願いします!冒険、楽しみです!」


 僕達はしっかりと握手した。



PTメンバーは良い人そうで良かったですね。他のメンバーも良い人だといいと思います。

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