10 玩具
今回は見た目楽しそうなダンジョンに挑戦です。
僕はメルドラーナ様に新魔法の報告に行き、褒めて頂いた。
その後はお爺ちゃん先生の授業を受ける。
ちょっとづつ計算も出来るようになり、2ケタの掛け算と割り算が出来るようになった。
依頼料の割り算もこれで出来るだろうか?
前回のダンジョンでボスを倒した後から、左に足輪が出現している。
また少し色がほんの少し濃くなった気がする。
腕と足はまあ、装飾品として納得出来なくもないのだけど、頭の上に浮いている光輪は、誤魔化しようがなく人間から離れていく事を示している。
ふう、と溜息をつく。
偶にこの装身具が反応する事がある。
大体は敵対国の方角に向けてぴくっと動くだけだけど、なんだか嫌な予感がした。
「今回はデリル君が楽しめそうなダンジョン選んでみたんだよ!」
「どんなダンジョンなの?」
「へっへ~、着いてのお楽しみ~♪」
「そうだな。今回のダンジョンはデリル君向けだな」
「同意」
意味深な言葉ににこにこ笑っている皆を見てると期待が膨れ上がる。
ダンジョンに着くと、派手派手しい看板が目に入った。
「へっへー!通称オモチャダンジョン!敵が全部オモチャ型なの」
「ダンジョン内も凄く可愛くてあたしもお気に入りなんだよ」
支援魔法を掛け、足を踏み入れるとビックリ箱の姿をした敵が襲い掛かってくる。
サクッとレンドさんが切り捨てる。
「基本的にドロップ品はぬいぐるみが多いんだけど、白金貨を落とす敵が稀に出るの」
「あっ出たぞミミックだ!」
素早く足元に噛り付いて来るミミックを盾で弾き、弾かれたミミックをメルさんがロックバレットで仕留める。
ポンっとコミカルに消えたミミックの場所に、白金貨が落ちている。
「しょっぱなからラッキー!」
レンドさんは大きな熊のぬいぐるみを相手にしている。
その瞬間、キンッとバリアが何かを弾き返す音が連続して響く。
玩具の兵隊が銃でこちらを狙っている。
レンドさんが強引にバリアで突き抜けて兵隊を全部薙ぎ倒す。
「流石バリアあると楽だな!此処来るといっつも怪我塗れになって早めにダンジョン出る羽目になっちゃうんだけど、今回はボスまで行けそうだな」
横合いから飛び出した等身大のオモチャの馬車が突っ込んでくる。
素早く回り込んだアズさんが盾で受け止めている間にレンドさんが馬を始末する。
だが、客車部分も扉が噛みつくようにして襲ってくる。
またアズさんが器用に受け止め、レンドさんが両断する。
それぞれの形態をミニチュアにしたようなぬいぐるみがぽんぽん落ちる。
…くまのぬいぐるみは可愛かったのでこっそり確保した。
ここのダンジョンは兎に角敵の物量が多い。
1匹1匹はそう強くなくても、なかなか前に進めない。
それでも、ミミックの2匹目を仕留めたころ、やっとボス部屋まで辿り着いた。
此処には敵が居ない為、皆で少し小休憩を取る。
「ボスの予測がつかないわねー…商売の神エルンゼドア?」
「いやいや、神は出ないだろ」
「ミミックキングとかいるのかなぁ~?」
「聞いたこともない」
「本来はキングテディベアよね」
「っしょ、あい、罠解除したよん。そろそろ行く~?」
ぎいい、と音を立てながらボスフロアに入ると、今までとは比べるまでもなく、小さな影があった。
3m程の人型で、ピエロの恰好をしている。
「ハイスロウリー!アンチストレングス!アンチマジックディフェンス!アンチディフェンス!」
弱体化を掛けている最中にも、お手玉しているカラフルなボールを此方へと投げつけてくる。
「我に苦難を耐える力を!ストロングディフェンシブストレングス!」
アズさんは強化すると、仲間に当たりそうな玉だけ受け止める。
以前のようにバリアを突破される事は無い。
それに顔を歪めたピエロが心臓に似た形の大きな玉を投げつけて来た。
ゾワっと嫌な予感がすると共にふわりと何かが舞い降りた。
「ダイヤモンドシールド!」
一度だけどんな攻撃でも防ぐ魔法だ。
べちゃりとシールドに当たった球は、今までと違う規模で大爆発を起こしたが、ダイヤモンドシールドが自ら壊れる事と引き換えにダメージはないようだ。
ふわっとした感覚がまだ降りて来る。
「その身を構成するものよ、我の要請に応え塵と化せ フュージョンダスト!」
びくっと体を震わせたピエロがめちゃくちゃに暴れる。
暴れながら、その身から塵が舞う。
アズさんは必死でその余波が此方に及ばないよう防いでいる。
レンドさんは不規則に振るわれる腕や足に、近づけないでいる。
「爆ぜよ滅せ我が敵を!エクスプロージョンロック!!」
ミルさんの魔法は相性が良かったようで、爆ぜた部分が塵になるのを加速した。
やがて全身が塵になり、塵の中から虹色の王冠のようなものが現れた。
「…キングマッドピエロ…という所か…?」
「――遠隔攻撃型は近づけなくて役にたてねえ…すまん…」
「あたしは貢献できた!」
「…」
「アズさんは毎回凄く頑張ってくれてますよね。ありがとうございます!」
「それが俺の仕事だ」
ぽい、とレンドさんが王冠を僕の鞄に入れる。
…足輪は両足に嵌まった。
なんだろう。次は首にでも何か嵌まるのだろうか。
「なんじゃこりゃ。見た事もない素材だ」
やっぱりあのピエロはイレギュラーだったようだ。
ギルドマスターが矯めつ眇めつ王冠を見ている。
「…解析」
マスターが聞き慣れない呪文を呟く。
そして目を見開いた。
「装備すると全ての状態異常を回復し、徐々に傷などを回復する機能がある。相手の嘘も見抜ける」
「凄いアイテムですね…外交官なんかに持たせると効果が凄そうだ」
「呪いなんかで悩んでる人にも効きそう…むしろ王様が付けた方がいいんじゃない?」
「白金貨4000だな。今なら潤ってるからこちらで買い取れる。以前のオークションは白金貨8000だ。1割貰うので7200だな。合計11200枚だ」
じゃらじゃらと白金貨が山と積まれる。
「一人2230枚ね。凄いわこんな稼ぎ、有り得ない!デリル君最高!」
「あ、デリルだけ2232枚な。ミミックの分は貰っておいてくれ」
「えっミミックは僕は倒してないですよ」
「ボスをメインで倒してるだろうが。毎度言ってるけど、俺らが貰いすぎなんだからな?」
「同意」
「に、しても大分キラキラしてきたねえ装身具。綺麗~」
「そうなんですか?僕は光輪に困ってるんですけど…」
「なんでぇ~?神々しいよぉ?」
「それが嫌なんですよ、僕はただの人間で居たいのに、離れていくみたいで…」
お約束のようにギルド酒場で打ち上げする。
今日はいつにも増して豪華な料理が並んでいる。
美味しい。
夢中になってご馳走で頬を膨らませていると、また背後で誰かが消える気配がした。
振り向くが誰も居ない。
ただ、ご飯を食べていたビゼットのPTメンバーがまた驚いた顔で手を止めていた。
「…なんで懲りないのあいつ…執念凄すぎじゃない?」
「あ…やっぱりビゼットさんだったんですか?」
「うんうん、こっちからはバッチリ見えてたよぉ~。なんかスープ掛けに来てたぁ」
「執拗」
ビゼットさんは相変わらずのようだ。
なんとか和解出来たらいいなあとは思うのだけど。
夜遅くまで騒いで、それからミルさんと一緒に魔術棟に戻った。
部屋について風呂に入ってからこっそりくまのぬいぐるみを取り出し、抱っこして眠った。
両手両足が装身具で埋まりましたね。次は何処に現れるのでしょうか。




