第18話_約束のシャッター音
火曜の夕方六時。浅草寺の本堂前は、観光客で賑わいながらも夕刻特有の落ち着きを帯びていた。
智哉と愛乃は並んで立ち、スマホを見つめている。審査会の投票結果が送られてくる時間だ。
愛乃は手を組み、祈るように呟いた。
「どうか、伝わりますように……」
通知音が鳴り、智哉が画面を開いた。
表示された結果に、一瞬言葉を失う。
「……勝った。僅差だけど、俺たちの写真が一位だ」
愛乃は目を見開き、次の瞬間、笑顔が弾けた。
「やった……!」
二人は思わず抱き合った。通りすがりの人々が驚きながらも微笑む。
智哉は小さく囁いた。
「ありがとう、愛乃さん。君が一緒にいてくれたから勝てた」
「私こそ……智哉さんとじゃなきゃ、ここまで来られなかった」
ふと、智哉はカメラを取り出した。
「この瞬間、撮っておこう」
愛乃も笑い、手にしていたカメラを構える。
同時にシャッターが切られる——。
カシャ、と響く音は、初めて出会った雨の日のシャッター音と重なった。
智哉は撮った写真を確認しながら言った。
「これからも、君と一緒に撮りたい」
愛乃は頷き、指切りを差し出した。
二人の小指が絡み合い、静かに誓い合った。
浅草の空には、薄紫の夕空が広がっていた。
それは、新しい物語の始まりを告げる色のようだった。