第14話_撮るべきもの
土曜の早朝。町工場の会議室には、智哉と愛乃、航平、悠大、莉菜、アリヤが集まっていた。
窓の外にはまだ淡い朝日が差し込み、皆の顔に決意の色を映している。
「工場の再建について、クラウドファンディングを活用しましょう」
悠大がホワイトボードに資金計画を示した。
「地域のみんなが応援してくれる仕組みを作れば、短期間でも目標金額に届く可能性があります」
莉菜が勢いよく言うと、アリヤも頷く。
「私はリターン用のギフトを企画するよ。下町らしい職人の技を活かした限定品を考えてる」
航平は一瞬迷ったが、ゆっくりと口を開いた。
「……ありがとう。本当は、もう諦めかけてた。でも、みんながいるならもう一度立ち上がれる」
智哉は黙ってカメラを握り直す。
「だったら、写真も組み直します。これまで撮ってきた“景色”じゃなくて、この工場とここで働く人たちを主役にしたい」
愛乃が驚いて智哉を見る。
「取材の方向を変えるんですか?」
「うん。俺たちの物語をそのまま作品にする。勝ち負けだけじゃなく、この地域の未来に繋げたい」
その言葉に、愛乃は微笑んだ。
「じゃあ私も、キャプションや構成を考えます。写真だけじゃなく、見る人が“感じる”展示にしましょう」
会議は熱を帯び、具体的な役割分担が次々と決まっていく。
最後に、航平が小さく笑った。
「お前たち、いいチームだな」
智哉はファインダーをのぞき、みんなの笑顔を切り取った。
それは、これから撮るべきものがはっきり見えた瞬間だった。