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第13話_告白の手帳

 金曜の夜十時。病院の屋上には、都会の光を遠くに眺める静けさがあった。

  智哉はベンチに腰を掛け、手の中のカメラを見つめていた。航平の顔色がようやく戻り、安堵したものの、胸の奥には不安が渦巻いていた。

  その時、足音が近づき、愛乃が現れた。

  彼女の表情には迷いと決意が混じっている。

 「智哉さん……ごめんなさい。私、ずっと仕事に逃げてました」

 「……愛乃さん」

  愛乃はバッグから小さな手帳を取り出し、差し出した。

 「これ、見てほしいんです」

  ページを開くと、手書きの言葉と写真のラフスケッチが並んでいた。

  そこには「智哉と歩いた日」「初めて笑ってくれた瞬間」など、取材での出来事や気持ちが細かく書き留められている。

 「私、ずっと誰かに頼るのが怖かったんです。でも智哉さんと出会って、自分の弱さも含めて信じたいと思った。……だから、もう隠さないで言います」

  愛乃は深呼吸して、はっきり言った。

 「好きです、智哉さん。取材の相棒としてじゃなくて、一人の人として」

  夜風が二人の間を通り抜ける。

  智哉はゆっくりと立ち上がり、手帳を胸に抱きしめた。

 「俺も……同じです。最初はただ頼りになる人だと思ってた。でも今は、それ以上に大切なんです」

  気づけば、二人は抱き合っていた。

  互いの体温を確かめるように、静かに肩に手を回す。

 「審査会……どうする?」

 「もちろん、二人でやりましょう。これは、私たちの物語なんですから」

  愛乃の目には決意の光が宿っていた。智哉も力強く頷く。

  病院の屋上に響いたのは、遠くの街のざわめきと、二人の新たな約束だった。

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