王の宣言
小さい町からしばらく歩く。疲れたマリーはある提案をウィリアムにした。
「馬車を出す事はでしないのですか?」
「……誰が馬車を運転するんだ?」
「……確かに使用人はおりませんものね。」
「黙って歩け。」
「はぁ……」
「疲れたのか?」
先を歩くウィリアムは立ち止まってそういった。後ろ姿からその表情は掴めない。
「……はい。少し。」
どうせまたバカにされるのだろう。そう思いながらも素直に答えてみる。
「マリー・ヴィル。」
「はい!」
ウィリアムはマリーを無理に姫抱きした。
「きゃ?!」
ウィリアムはそのまま行くぞと言って歩き出す。その足取りは重々しい。
「大丈夫ですから!こんなっ!?」
「いいから黙れ。舌を噛むぞ。」
「……」
マリーはウィリアムに任せて見ることにした。初めて姫抱きされたマリーは少しドキマギしている。しばらくして木の影にウィリアムはマリーを下ろした。
「少し休む。」
「私も少し休めたので次は自力であるきます。」
ウィリアムはそうかと短く言うと魔法で水を出し、水分補給する。
「あの……」
「飲むか?」
ウィリアムはマリーにコップに入った水を差し出す。
「ありがとうございます。」
ウィリアムは口は悪い。だが、何処が憎めないような気がしていた。ウィリアムは直ぐにまた足を進める。マリーはある提案をした。
「ウィリアム様、魔法で王都まで飛べないのですか?」
「…………その手があったか!?」
ウィリアムは驚く。最初からそうしていればよかったのでは?と、マリーは思ったが、ウィリアムが気を悪くしないように口を噤んだ。
「マリー、掴まれ。」
「はい!」
マリーの手を取り、ウィリアムは王都へと飛ぶ。目を開けるとそこは、王都だった。王都では、多くの人達がいきかっていた。空飛ぶ馬車、歩く人形など多くの物があった。
「ウィリアム様!着きました!さすがです。」
「当然だろ。行くぞ。」
「どちらに?」
「王城にだ!」
ウィリアムは堂々と王城へと向かう。マリーは慌ててウィリアムの顔を手で隠した。
「なっ?!何をする!?」
「ウィリアム様!私達は追われた身です。堂々と街を歩くのはよくないかと……」
「……そうだな。」
ウィリアムは顔を魔法で仮面と帽子で隠す。マリーには頭巾とマスクをさせた。
「これならいいだろ?マリー。」
「はい。」
こうして2人は王城へと向かう。警備兵のたっている王城の門に、つくとマリーはウィリアムに問う。
「どうやってはいりましょう?」
「簡単だ。こうすればいい!」
ウィリアムは魔法で門を吹き飛ばした。
「?!?!」
マリーは開いた口が塞がらない。
「う、ウィリアム様?!何を?!」
「行くぞ!」
マリーの手を取ったと思うとウィリアムはそのまま兵達も吹き飛ばして城の中へと歩きだす。ウィリアムは城の階段をマリーを引きずって歩く。
「ウィリアム様!やりすぎです!」
「うるさい!俺に指図する気か?!」
私に見せたあの優しいウィリアムは何処にいったのだろう?と、マリーは狼狽した。ウィリアムに止まるように言うが耳に入らない。止めろようとして兵士達が槍を持ってやってくる。ウィリアムは次々とその兵士達を吹き飛ばす。
「ウィリアム様!おやめください!!ウィリアム様!!」
「黙れ。」
「……!」
マリーの声はウィリアムには届かない。ウィリアムはマリーの魔力回復の力を使い、回復しながら兵士達を吹き飛ばす。そうこうしているうちに魔法部隊が到着し、ウィリアムを魔法で攻撃する。しかし、ウィリアムの魔力はマリーによって底なしになっており、誰もウィリアムを止められない。
「素晴らしい。この力があれば……」
ウィリアムはマリー力に満足している。マリーは吹き飛ばされる兵士達を見て心を痛めた。
「ウィリアム様!おやめください!」
「マリー、よく見ろ。俺は誰1人傷つけてはないぞ。」
「え?!」
吹き飛ばされた兵士達は確かに吹き飛ばされているだけで怪我のひとつもしていなかった。
「……ウィリアム様。申し訳ありません。私の目が節穴でした。」
「良い。気にするな。」
そう言ってウィリアムはマリーの手を引いて王の間へとたどり着く。
「よお、父上。」
ウィリアムはそこに居るはずの国王にそういった。しかし、そこにいたのは国王ではなかった。
「残念だったな。ウィリアム。今、この国の国王はこの私。」
「なっ?!馬鹿な?!どうして……?」
王の間の王の座に座っていたのは第一王子だった。
「そして、私の妻を紹介しよう。おいで。」
いきなり背筋が凍る。
「ここよ?」
「「?!」」
マリーとウィリアムの後ろに立っていたのはエリザだった。
エリザはそのまま第一王子の隣に歩いてゆく。
「この国は第一王子いや、国王たるこの私。チャーリーが占拠した!」
その声は確かに響き渡る。自らが国王であると……。