攫われる新郎
マリーが身体を乗っ取られたまま数日がたった。ウィリアムとエリザの結婚式がついに始まってしまう。
「ウィリアム様、このドレス!最高だと思いませんか?特にこのダイヤなんて素敵なんでしょう!」
「……」
「何か言いなさいよ!」
「……エリザ。」
「はーい。」
「本当はマリーはまだ生きているんだろ?」
「……だったら何?」
「マリーを、自由にしてやってくれないか?」
「……ウィリアム。貴方がマリーを愛しているのは知ってるわ。素直になれない可愛い坊や。」
「やめろ!」
「ふふふ、マリーも聞いているかもね?貴方がマリーを死なせないために私との結婚を承諾し、第一王子殺害の罪を被ったこと、彼女にはいったの?まあきいけど。そして、今、また貴方は私と結婚する。馬鹿よね?本当…」
マリーはその言葉に思い当たる事がいくつかあった。
(え、素直になれない?まさか……)
そう、マリーに対していつも酷い事を言ってきたウィリアム。でも、それは愛情の裏返しだったのだ。ウィリアムはマリーのことを愛していた。
(ウィリアム様……。)
(悔しい?でもね?貴方がいけないのよ。貴方ごときが全てを手に入れるなんて許さない。)
(エリザ……)
結婚式が始まり、粛々と式が行われる。そして、ウィリアムとエリザの誓いのキスの時だった。
「ちょっと待ったーー!!」
「「?!」」
静寂を破る者がいたのだ。
「この結婚には反対だ!!」
それは消えたはずのチャーリーだった。
「?!何故?!どうやって?!」
「兄上遅い。」
ウィリアムがそう言うとチャーリーは苦笑いしてエリザを突き飛ばしてウィリアムを連れていく。
「バカね!ウィリアムには死の魔法をっ……?!」
「その魔法ならとっくにとかせてもらった!」
ウィリアムがそういうとチャーリーとウィリアムは式場から逃げる。
「させるか!!」
エリザが魔法を使おうとするが使えない。
「?!何故?!」
(ウィリアム様!今のうちに!!)
(おのれ!マリー!私の邪魔を!!)
こうしてウィリアムはチャーリーと共に逃げてゆく。マリーはエリザを止めることしかできなかった。