現実と言う悪夢
「私こそが救国の聖女!うふふ、はははははははっ!」
エリザはマリーの顔で醜く笑う。
「マリー!マリーは?!」
ウィリアムは狼狽する中、チャーリーだけは正常だった。
「エリザ!さっきまでの話しは本当なのか?!私を仮死させたなど…」
「はい、チャーリー様。ですが、そんな事どうでもよいではありませんか。貴方は私が聖女になる為の駒。そして……」
チャーリーはいきなり苦しみ始める。
「なに、を……」
「もう用済みよ?真実を知った貴方は私の味方にはならないでしょ?なら、消えてもらうわ。」
「そんなっ!エリザ?!」
チャーリーは吐血しながら崩れてゆく。その形がみるみるうちに消えてゆく。エリザの魔法である。
「私こそが最強の聖女!この子は魔法を使えないから魔力は私の身体より落ちたけど、私は魂の魔力で魔法を使えるの!さあ、次は……」
エリザはウィリアムの方を見る。
「貴方の番。ウィリアム。」
「エリザ……マリーを、マリーを返せ!!」
「はあ、バカね。返す?もう消えたわ!貴方には私と結婚してもらう!」
「?!」
「そうすればほしいものも全て手にはいるわ!富や名声、地位だって私のモノよ!」
「……そんな事のためにマリーを!」
「そんなこと?ふんっ!お坊ちゃんにはわからないでしょうね?毎日、毎日、明日食べるものにも困って盗みを働き、暴力と空腹に耐える日々なんて!!お前にはわからない!!」
エリザの魔法によってウィリアムが大きな影の手に捕まえられる。
「くっ!」
「お前達がのうのうと生きている間に何人死んでると思う?考えもつかないだろう?!」
ウィリアムは何も言えなかった。エリザは間違っている。だか、エリザの言葉は現実を語っていた。
「貧民層の女の言葉なんて誰も聞かない!故に私が聖女になって、全て手に入れると決めた!!」
ウィリアムを大きな影は握りつぶさんとする。さらに、エリザは何かの魔法をウィリアムにかけた。
「さあ、私と結婚なさい?ウィリアム!!今、お前に私に逆らったら死ぬ魔法をかけてやったわ!お前にはその道しか生き残れない!!」
「……わかった。」
(………ここは?)
マリーの意識はまだ消えていなかった。ぼんやりと身体を通してウィリアムが見る。
「さあ、誓いのキスをするのよ!」
エリザは動けないウィリアムにキスをしようとする。
(いやっ!やめて!ウィリアム様!!)
マリーの声は聞こえない。それを聞いているエリザはニタリと笑う。
エリザはウィリアムにマリーは消えたと伝えたが本当は自分とウィリアムを見せつけるために少し残したのだ。
エリザとウィリアムが唇を重ねる。
(いやーーー!!)
(ああ、可哀想なマリー、ざまあみろね。)
(エリザ!私に変わって!出ていって!)
(残念だけどもう無理よ?)
(ウィリアム様!ウィリアム様!逃げてください!!)
「さあ、楽しい結婚式を準備しなくっちゃね?」
エリザの醜い笑い声だけがその場に響いた。