破滅
「マリー・ヴィル!お前を国外追放とする!」
それはよくある悪役令嬢物語のような話でした。私、マリー・ヴィルは、婚約者だった第二王子ウィリアム・ビルヘルム、その浮気相手のエリザ・フルールに陥れられたのです。公の場で断罪され、そして国外追放を言い渡されました。ああ、なんて理不尽なんでしょうか。私は何もしていないというのに……。こうして、国外追放された私だったのですが……。
「マリー!お前が国外追放だなんて何かの間違いでは?!」
「おお、かわいいマリー!どうしてこんなことに……。」
マリーの父も母も、両親は嘆き悲しんだ。
「だから、あんな王子と婚約などさせたくなかったんだ!」
「お父様!いけません!誰かに聞かれでもしたらっ……!」
慌ててマリーが父の愚痴を止める。
「しかしだなぁ、マリー。あの極悪王子だぞ?お前の相手にするのは私としても嫌だったんだ!」
「マリー、国王がどうしてもとおっしゃるので私達は貴方の婚約を認めざるをえなかった。でも、私もお父様も反対だったのです。そしてこんなことになってしまうなんて……。」
「いいんです。お父様、お母様。私は1人でも国外で生きていけます。死刑になるよりは良いですから……。」
「マリー……」
「ううっ、マリー。」
マリーの父も母も嘆くばかりである。そうこうしているうちに時間がきてしまう。マリーは国外へと馬車で連れていかれる。
「……極悪王子、か。」
極悪王子、ウィリアム・ビルヘルム。その悪名は高く、誰もが彼を避ける。そんな彼と婚約が決まったのは第一王子が死去した時であった。国王は第一王子の婚約者だったマリーを第二王子の婚約者にあてがったのである。当時第二王子にはエリザ・フルールが婚約者としていた。だが、跡取りを公爵家の令嬢と結婚させたいがために国王はマリーを婚約者に変えたのだ。2人は愛しあっていたのだろう。ずっとマリーを陥れ、婚約破棄させることを仕組んでいたのだ。極悪王子の名前は第一王子を暗殺したのは第二王子のウィリアムではないかと言う噂が拡がったからである。当時、第一王子は原因不明の病に犯されていた。原因は分からず、そのまま病によって帰らぬ人となった。はずだった。それが第二王子の仕業だと言われるようになったのは第一王子の葬儀の場にて第二王子が大暴れしたからである。そんなエピソードがマリーの頭の中を駆け巡る。どうすれば良かったのかと、そう思っていた時、馬車から降りるように言われる。国外に着いたらしい。
「ここが、国外……。」
森が鬱蒼と茂り広がっている。何も無い。あるのは暗い森だけである。マリーは魔法が使えない。貴族でありながら貴族しか使えない魔法が使えないのである。何もできない自らの無力を悟る。しばらくぼぅとしていると豪華な馬車が通る。そして、自分の前で止まった。
「?」
馬車から1人の男が出てくる。
「?!」
極悪王子である。
「あの、何をしに?」
「……」
ウィリアムはバツが悪そうに顔を逸らした。
馬車は彼を下ろすと通り過ぎてゆく。王子はマリーに向かってくる。そしてこう言った。
「マリー・ヴィル」
「はい。」
「俺と結婚しろ!」
「はい?」
不定期更新ですがよろしくお願いします。