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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
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反撃の狼煙1

防衛省の通信センターでは、電子レンジ…もといマイクロ波の有効性に関する詳細な報告とともに、異星人の集団降下に関する情報が各国へ送信されていた。

冴島は端末を操作し、日本政府としてこの新たな事態にどのように対応すべきかを考えていた。


「マイクロ波の有効性の詳細を伝えるとともに、この情報を共有し、各国の動向を確認する必要がある。

侵略者の目的をさらに掘り下げる手がかりになるかもしれない」


会議室の空気は緊張に包まれていた。

これまで日本国内だけで進められていた調査が、今や国際的な規模へと広がりつつある。

各国の軍事機関や防衛戦略部門から続々と問い合わせが入り、日本政府としての対応が急務となっていた。


「まずは南米での状況を詳細に確認する。その後、米軍とも連携しながら国際的な対応策を進めるべきだ」


響子が画面の端でうなずきながら、通信チームへ指示を出す。


「米軍との緊急戦略会議を要請します。米軍所属のジョーンズ氏から直接、現地の情報を受け取る必要があります」

「米軍所属?よくそんな人物とのコネクションを持っていたな」

「例の映像を提供してくださった民間人である蓮池智之氏を通じて…ですが」

「…また彼か…まあ良い。繋いでくれ」


冴島はジョーンズとの暗号化通信を開き、最新の情報を求めた。

数秒後、端末が応答し、ジョーンズの顔がスクリーンに映し出される。


「日本側の状況はどうだいミスター」


「国内では電子レンジの発したマイクロ波がドローンに影響を与えた可能性がある。この現象を応用できるか検討中だ」


ジョーンズは目を細めながら答えた。

「へえ…そいつ興味深いな…実は、南米でも異星人の降下とともに、一部の通信障害が発生している。これが関連している可能性はあるか?」


冴島は即座に島津博士へ通信を繋ぐ。


「博士、南米で発生した通信障害についての分析が可能か?」


島津博士は報告書を確認しながら答えた。


「周波数帯を調べれば、類似点があるかどうかを特定できます」


この国際的な連携によって、異星人の技術的な脆弱性を解明し、反撃のための戦略を組み立てる道筋が見え始めた。


「ミスター・ジョーンズ。米軍と日本の自衛隊、あるいは政府との間で連中に対抗するための装備開発を共同で行えないだろうか?」

「ふむ…進言してみよう。ちょっとのんびりとコーヒーでリラックスしていて良い状況でもなさそうだ」

「頼んだ。こちらの合意は速やかに形成しておく…邪魔するものは排除するくらいの覚悟はできている」


冴島の言葉に笑いながら、通信は閉じられた。

それから数時間後、ホワイトハウスから各種兵器群の共同開発を是認する旨の連絡が届けられた。


米軍との正式な技術連携を進めるため、日本の防衛省と米軍司令部の間で緊急戦略会議が開催された。

会議室には、日本側の軍事技術担当官と米軍の兵器開発チームが集まり、ジョーンズはその場で進行役を務めることになった。


「電子レンジのマイクロ波が敵の通信やドローンの制御システム、そしてドローンが展開していた防御フィールドに影響を与えたことは確認済みです」


冴島が資料を掲示しながら説明する。


「この技術を戦術レベルで応用するために、米軍と共同で兵器の開発を行う必要があります」


米軍技術部門の責任者であるロバート・ハンセン大佐が頷きながら応じた。


「興味深い理論です。我々も現地での戦闘データを分析しているが、このマイクロ波の影響は無視できない」


騒がしいほどの議論の末にジョーンズは会議テーブルを指しながら提案を出した。


「ここで具体的な開発プランを整理しよう。我々が検討しているのは以下の三種類の戦術兵器だ」


- 高出力マイクロ波放射装置(MPD)

- 地上部隊で運用可能な兵器

- 高出力のマイクロ波を一定範囲内に放射し、侵略者の通信を遮断

- 基地防衛や都市防衛に活用


- 航空機用マイクロ波チャフシステム(MCS)

- 戦闘機や偵察機に搭載可能

- 飛行中にマイクロ波を散布し、敵の電子システムを攪乱

- 空中戦での優位性確保


- 広域マイクロ波防御ネットワーク(MDN)

- 地上施設に設置する防御システム

- 侵略者の活動地域を制限し、通信干渉を強制

- 長期的な対抗策として各都市に展開


「これらを実用化できれば連中に対して実効性のある攻撃が可能となります。双方の努力に期待します」

「良いと思う。我々日本の政治家は兵器には詳しくないが防御ネットワークの構築は確かに必須だ。民間人のいない政府など価値はないからな」

「では、私…ロバート・ハンセン大佐の名で合意書に署名します。そちらはミスタ冴島が?」

「ええ。私が署名を行います」


会議の結論を受け、日本の防衛技術研究所と米軍の兵器開発部門が合同で試作品の設計に着手した。

開発拠点は米国と日本の軍事施設に分散し、最短期間で実用化を目指す体制が構築された。


「試作第一号は航空機搭載型から始める。戦闘機の運用データを基に調整し、次に地上兵器へ移行する」


ジョーンズの言葉にハンセン大佐も同意する。


「速やかに試験機を組み上げ、フィールドテストを実施しよう」


防衛省と米軍の共同開発によって、これまで未知の存在だった異星人の技術に対抗できる兵器が次第に形になっていく。

これが、人類の本格的な反撃の始まりだった。


共同開発が進む中、防衛省と米軍司令部の間ではマイクロ波兵器の試作が着々と進められていた。

初期段階では、地上部隊用の高出力マイクロ波放射装置(MPD)と航空機用マイクロ波チャフシステム(MCS)の試作が重点的に進められており、それぞれが実戦投入可能な段階へと近づいていた。


最初の試作品である地上部隊用のMPDは、日本国内の防衛技術研究所で完成した。

試験場では自衛隊の兵士たちが装置を運用し、周囲の侵略者の通信にどの程度の影響を与えることができるかを確認していた。


「設定したマイクロ波の周波数帯により、ドローンが制御不能になり停止することを確認しました」


技術担当者が結果を報告すると、響子は端末のモニター越しに現場の状況を見守った。

停止したドローンは、電子機器の干渉を避けるためのシールドを持つと考えられていたが、今回の試験ではそのシールドを突破できる可能性が示された。


「これは大きな進展です。装置の出力をさらに最適化し、広範囲での運用が可能になるよう調整を進めましょう」


響子が技術チームに指示を出す一方で、米軍側では航空機用のMCSの開発が進んでいた。


ジョーンズが開発チームとともに進めていた航空機用マイクロ波チャフシステムは、戦闘機に搭載される形での試験が行われた。

シミュレーションでは、飛行中に広範囲にマイクロ波を散布することで、侵略者の通信網に重大な混乱をもたらすことが確認された。

また、実験的に行われたドローン群への散布においても、複数機が機能停止や物理的破損などの結果が得られた。


「チャフシステムは、敵の通信を撹乱するだけでなく、敵のドローンに対する効果も期待できます」


ジョーンズは試験データを確認しながらハンセン大佐に報告した。


「これが実戦で投入可能になるまで、さらに調整を進めます」


試作機の成功に基づき、防衛省と米軍は侵略者に対抗するための共同作戦計画を策定した。

この計画では、地上部隊と航空部隊が連携し、侵略者の通信網を断つことで反撃を開始することが目指されていた。


「航空機用チャフシステムが空中から敵を攪乱し、地上部隊用マイクロ波兵器が敵の拠点に直接攻撃を加える。この二つの兵器を統合運用することで、侵略者の行動を封じ込める」


冴島は作戦計画書を確認しながら、響子やジョーンズと意見を交わしていた。


「日本国内だけでなく、南米や他国でもこれを展開する必要があります。侵略者の行動がさらに広がる前に、国際的な対応が不可欠です」


ジョーンズは頷きながら返した。


「各国の軍事機関にもこの技術を共有し、全地球規模の連携を図るべきだ。それにミサイルに搭載すれば宇宙船への直接攻撃も可能になる」


この段階で、日本政府と米軍は技術開発の成果を国際的な場で共有し始めた。南米での降下を観測している国々とも情報を交換し、同様のマイクロ波兵器の開発を支援する体制が構築されつつあった。


「侵略者の通信網を制御できれば、彼らの活動範囲を著しく制限できる。我々は反撃の準備を整える段階にある」


冴島は国際連携会議で各国の代表に向けてこう述べた。

これにより、技術開発と作戦計画がさらに加速されていった。


防衛省と米軍の共同開発チームは、兵器群の開発による副産物として、ついにマイクロ波発生装置をミサイルの弾頭に組み込む技術を完成させた。

この新型ミサイルは、侵略者の宇宙船やドローンに対して直接的な攻撃を可能にする画期的な兵器だった。

ミサイルの弾頭部分には、高出力のマイクロ波発生装置が搭載されている。

この装置は、発射後に目標付近でマイクロ波を放射し、侵略者の通信システムや防御フィールドに干渉する仕組みだ。

さらに、誘導システムを強化することで、宇宙船の特定部位を精密に狙うことが可能となった。


「これで宇宙船の防御フィールドを突破できる可能性が飛躍的に高まります」


島津博士が設計図を指しながら説明すると、ジョーンズも頷きながら応じた。


「これが実戦で効果を発揮すれば、侵略者の優位性を大きく削ぐことができる」


試作ミサイルは、米軍の試験場で初の発射テストを迎えた。

標的として設定された模擬宇宙船に向けて発射されると、弾頭が目標付近でマイクロ波を放射し、模擬通信システムを完全に無力化した。


「目標の通信が遮断され、防御フィールドも一時的に無効化されました」


技術担当者の報告に、冴島は深く頷いた。


「これで宇宙船への直接攻撃が現実のものとなる」


試験の成功を受け、マイクロ波ミサイルは量産体制に入った。

日本と米軍の共同作業により、地上発射型と航空機搭載型の両方が開発され、侵略者の宇宙船に対する反撃の主力兵器として配備されることになった。


「これで侵略者に対抗するための武器が揃った。次は実戦での運用計画を立てる必要がある」


冴島は響子やジョーンズとともに、侵略者の宇宙船を標的とした作戦計画を練り始めた。

これが、人類の反撃の新たな一歩となる。





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