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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
6/31

侵略者の目的1

たった6話目にして矛盾点がないか不安…!


通路を進んだ奥に小型の宇宙船が見えている。

あんな物が降下しているなどどこの情報にもなかったが、現実として停止していた。

まるで引き寄せられるかのように通路を進む。

広い空間の手前、その扉が見える。

ガラスも付いており、中を覗けそうだ。


通路の奥、警告灯の光が反射するガラス越しに、智之は小型の宇宙船へと続く輸送ラインの全体像を初めて視認した。


脳と内臓を詰め込んだ有機コンテナが、無音のトンネルを滑るように運ばれていく。

トンネルの先には、巨大な吸入口——あれが小型の宇宙船だ。


だが、目を引いたのは、その横に並ぶ複数の透明カプセルだった。

その内部に浮かんでいたのは、分解されていない、ほぼ無傷の人間の遺体。


年齢も性別もまちまちだ。だが、共通していたのは——頭部と胸部が発光していたこと。


(発光……何か、印がつけられてる?)


一部の人間は、解体される前に「選別」されているようだった。

脳を摘出されるものと、保存されるもの。

その違いは何か?


智之はポケットから小型録音装置を取り出し、震える手で記録を開始する。


「……流通ライン、臓器は小型の宇宙船へ直送。

 複数のカプセルに保存された遺体あり。頭部と胸部に共通した発光。

 明確な選別基準が存在する模様……これは——」


その時、不意に視界が乱れた。

耳の奥に「ザザッ」とノイズが走り、視界の端に異形の影が映った。


——ドローンだ。


智之はすかさず体を屈め、隙間から設備の裏へと滑り込む。

物音一つ立てず、息を止める。

ドローンは通路の先で一度立ち止まり、わずかにセンサーを揺らした。

——だが、そのまま離れていった。


(……危なかった。あれ以上奥へ進めば、もう戻れなかったかもしれない)


息を吐いたその瞬間、壁面のターミナルに映し出された、異星言語と図像が目に入った。

その図像は、人間の脳に伸びる無数の接続線。

そして中央には、**小型の宇宙船の中枢部に"並列化された脳"**が配置されている模式図。


(……利用してる。神経ネットワークとして、脳を……)


智之の中で、ひとつの仮説が固まりかけていた。


——侵略者は、人間の臓器を「資源」として扱っている。

そして、脳は「情報処理装置」として利用している。

それは、兵器なのか、記憶の保存か、あるいは種の統合か。


智之の喉が鳴った。


この基地はただの臓器処理場ではない。

ここは、人類という種族の「解体マニュアル」に基づいた、選別と利用の場だったのだ。


光は最小限。

そこには機械音すらなく、静寂が支配していた。

更に観察していると…。


その中心——何かがいた。


影のように立つ異形の存在。

何故気づかなかった…!?


胴体はあるのにクラゲの頭部、腕は長く、全体に膜のようなものをまとっている。

背には複数の突起が伸び、まるで脊髄が外に露出しているようにも見えた。


(……異星人……!)


智之は息を止め、ポケットから小型の記録装置兼カメラを取り出す。

素早く、だが確実に構える。


カメラの光学ズームが自動で調整される。

焦点が合った瞬間、液晶にその姿がはっきりと映し出された。


(これが……“奴ら”の正体……!)


シャッター音はしない。完全無音の記録。

連続静止画と短時間の映像を、保存用データに記録する。


だがそのとき——


異星人の頭部がゆっくりとこちらを向いた。


目は、なかった。

だが確かに、“見られている”という感覚が智之を貫いた。


背中に氷の柱が突き刺さったような感覚。


次の瞬間、カメラの画面が一瞬だけ砂嵐のように乱れた。


(干渉された……?)


だが、記録装置の表示は**「保存完了」**のまま変わっていない。


(撮れている……俺は、やった……!)


恐怖に支配されながらも、智之はカメラを懐にしまい込み、静かにその場を離れた。

視線を感じる背中に、全神経を集中させながら。


智之は基地を後にし、冷たい夜風の中を慎重に歩き始めた。

背後に感じる視線のような感覚を振り払うように、足音を極力抑えながら進む。

追跡されている確証はないが、油断は禁物だった。

街は静まり返り、建物の窓はどれも暗い。

人々は恐怖に駆られ、家の中に閉じこもっているのだろう。

智之はその静けさを利用し、影を縫うようにして移動を続けた。


彼は路地裏へと足を踏み入れる。

広い通りを避け、狭い道を選ぶことで、ドローンの巡回ルートから外れることを狙っていた。

途中、遠くから微かな羽音が聞こえた。

智之はすぐに壁際に身を寄せ、息を潜める。

音は徐々に近づき、やがて通り過ぎていった。


「まだ見つかっていない…」


彼は慎重に周囲を確認し、再び歩き始めた。

だが、緊張感は一向に薄れない。

基地で見た異星人の姿が脳裏に焼き付いている。

あの視線、そしてカメラに干渉された瞬間の感覚――それらが彼の心を重くしていた。


智之は次の曲がり角で立ち止まり、地図を確認した。

帰宅までのルートはまだ半分以上残っている。

だが、焦りは禁物だ。

彼は近くの廃ビルに目を向けた。

窓ガラスが割れ、内部は荒れ果てている。

ここで少し休むべきかもしれない。

ビルの中に足を踏み入れると、埃っぽい空気が鼻をついた。

智之は慎重に階段を上り、二階の窓際に腰を下ろした。

外の様子を確認しながら、深呼吸を繰り返す。


「あと少しだ…」


彼は懐にしまった記録装置をそっと触れた。

これが人類にとって重要な手がかりになるかもしれない。

その思いが、彼の疲れた体にわずかな力を与えた。


休息を終えた智之は、再び路地裏を進み始めた。

途中、何度かドローンの影を見かけたが、幸いにも気づかれることはなかった。

やがて、自宅の近くにたどり着く。

周囲を確認し、異常がないことを確かめた上で、彼は静かに玄関の鍵を開けた。

家の中は暗く、静かだった。

智之は靴を脱ぎ、リビングのソファに腰を下ろした。

緊張が一気に解け、全身の力が抜けていく。


「無事に戻れた…」


彼は記録装置を取り出し、テーブルの上に置いた。

そのデータがどれほどの価値を持つのか、今はまだ分からない。

だが、これが侵略者の謎を解く鍵になると信じていた。

智之は深く息を吐き、目を閉じた。

だが、脳裏には基地で見た光景が鮮明に浮かび上がる。

あの異形の存在、そして運ばれる人々の無惨な姿。

とんでもなく恐ろしいことが起こっている。


「これで終わりじゃない…」


彼は静かに呟き、再び目を開けた。次に何をすべきかを考えるために。


ジョーンズへ情報を渡すか?

いや、それでは対応が遅くなる…彼が居る地域では現場レベルでの迅速な行動が可能にはなるだろうがそれだけだ。

いかに米軍とはいえ将官でもないジョーンズが上層部へ情報伝達するにはそれなりの時間を要するだろう。


ならば自衛隊を通じて政府へ情報を渡すか?

残念ながら政府内部に直接連絡を取れるようなレベルの友人は居ない。


智之は手帳をめくり、相応しい相手を探す。

…居た。

自衛隊内部に親しい友人が。


智之は自宅の薄暗い部屋でパソコンを操作していた。

通信ツールが起動し、接続先に選んだのは、自衛隊員の冴島響子だった。

彼女とは以前のボランティア活動で知り合い、信頼できる人物だと確信している。

しかも1等陸佐…普通の軍で言えば大佐。

政府への伝達もそこまで難しくもないだろう。


「響子、俺だ。急ぎの話がある」


画面に響子の顔が映る。彼女は制服姿で、背景には自衛隊基地の通信室らしき風景が広がっていた。

智之の声に反応し、眉をひそめる。


「智之、どうしたの。こんな時間に連絡してくるなんて」


智之は声を低め、慎重に切り出した。


「映像データを入手した。奴ら——侵略者の姿と行動の証拠だ。これを託す」


響子の表情が一変する。


「侵略者の証拠…具体的には?」


智之はパソコンの画面を切り替え、記録装置からデータを転送する準備を始めた。


「映像を送る。輸送基地で直接目撃したんだ。これが全てだ」


数秒後、データが転送されると、響子の端末に通知が届く。


彼女はそれを慎重に確認し始めた。

画面に映し出される異星人の姿、そして基地での異様な光景。

響子の瞳が緊張で鋭くなる。


「これが本物なら、非常に重要な情報よ。分析が必要だけど、これは政府に直接届けなければならない」


智之は深く息を吐いた。


「それができるのはお前しかいない。響子、頼む」


響子は一瞬迷うような素振りを見せたが、すぐに小さく頷いた。


「分かった。このデータを兄に渡す。彼なら確実に動いてくれる」

「兄…内閣の冴島か」

「そうよ。彼は現場の情報を軽んじない人間だ。このデータが彼に届けば、政府の対応も変わる可能性がある」


智之は少しだけ安心した表情を浮かべる。


「響子、気をつけてくれ。これを渡す途中で何が起こるかわからない」

「あなたもね。今後はもっと用心して行動して」


通信が途切れる直前、響子は短く「任せて」と言い残し、画面が暗転した。

智之は椅子に深くもたれかかりながら、胸に広がる不安と安堵が混ざり合うのを感じていた。

自分の役目は果たした。あとは彼女を信じるしかない。


響子は緊急通信を終えると、端末の画面を見つめたまま一瞬だけ息を整えた。

智之から受け取ったデータは、侵略者の正体を暴く可能性を持つ。

だが、それが本物かどうかは、精密な分析を行わなければならない。

あの蓮池智之ともあろうものが捏造した映像など送ってくるとは思えないが、現状では無意味な映像ではないと確信を得てからでなければ兄の手を煩わせることなどできない。


彼女は椅子から立ち上がり、基地内の情報解析部へ向かった。

扉を開けると、数名の自衛官が端末を操作しながら最新の戦況データを精査している。

響子は部屋の中央に進み、最も信頼できる情報解析官の一人である田村のデスクへ向かった。


「田村、このデータを解析してほしい」


響子は端末を手渡し、その画面に映る映像を示した。

田村は眉をひそめながらデータを受け取り、確認し始める。


「何の映像ですか?」

「民間人からの情報提供よ。侵略者の姿が記録されている可能性がある」


田村は目を細め、画面に表示された映像を再生する。

その場にいた他の解析官たちも、画面に映る異様な存在に視線を向けた。

静寂が訪れ、部屋の空気が重くなる。


「これは……」


田村が息を呑んだ


「この映像が本物なら、我々が得た情報の中でも最も直接的な証拠となる」


響子は腕を組んだ。


「できる限りの解析をして、映像の信憑性を確認せよ。偽造の可能性はないか、何か異常なデータが埋め込まれていないかも調べるんだ」


田村は深く頷き、すぐに作業に取り掛かった。周囲の解析官も次々に端末を開き、データの精査を始める。


「解析には多少時間がかかると思いますが、優先して処理します」

「それでいい。何か分かったらすぐに報告してくれ」


響子は部屋の中央で指示を出しながら、次の動きを考えていた。

兄の冴島にこの情報を渡した以上、政府が動くまでの時間は限られている。

しかし、映像からして異星人が視線をこちらに向けていた以上、敵がこちらの行動を察知している可能性もある。


「早く解析結果を出す必要がある」


彼女は低く呟いた。

時間との戦いが始まっている。





読んで頂きありがとうございます。

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