侵略の幕開け4
筆者の知能の限界…どこまでやれるでしょうか?
――報道は動き始めたが、その裏に潜む真意はまだ見えない。
智之はテレビに映るニュース速報をじっと見つめていた。
『政府は侵略者との通信を試みる決定を下す』
その赤い文字がスクリーンを横切り、キャスターが穏やかな口調で内容を読み上げている。
しかし、その言葉が穏やかに聞こえるほど、背景にある緊迫感が伝わってくる。
智之は、これが果たして正しい手段なのかを確信することはできなかった。
「交渉か…敵の目的が交渉可能なものなら、政府は正しい選択をしたかもしれない。」
智之はそう呟きながら、手に持っていた携帯を握り直した。
ネット掲示板やSNSで目にした情報が頭を巡る。
交通管制の混乱、通信障害、軍の動き――それらは全て、敵の計画的な行動に思えた。
もし侵略者の目的が完全な支配であれば、交渉は単なる時間稼ぎに過ぎない可能性がある。
智之は窓の外に目を向けた。街は静かだ。深夜の時間帯も相まって、人々の生活が一時停止したかのような印象を受ける。その静けさが、彼に一層の違和感を抱かせる。
智之は再びネット掲示板にアクセスした。
一般市民から寄せられる断片的な情報が、どこかに重要な手がかりを含んでいるかもしれない。
『政府が交渉を試みるが、これは成功するのか?』
『自衛隊の動きが増えている。都市封鎖の準備か?』
『この交渉で敵がどう動くか…最悪の事態になる可能性はある。』
情報は錯綜していた。
智之は慎重に読み進めながら、特定のキーワードを探す。
政府が交渉を開始したことで、侵略者側に動きがあるかもしれない――その兆候を読み取る必要があった。
智之はそう思いながら、ネット掲示板を見つめ続けた。
政府が交渉を開始することで何が起きるのか。
彼の思考は次第に深く、静かな焦燥がその胸を占め始める。
静けさが破られる瞬間。
智之はネット掲示板の情報を読み続けていた。
その中で、誰かが「街に異変が起きている」と投稿していた。
これまでの沈黙が破られる兆しなのだろうか。
彼は不安を抱えながら、画面に集中した。
そして、その投稿が更新される。新たな目撃情報が寄せられていた。
「UFOから大量の小型ドローンが降下している!街中に飛び回っているぞ!」
「ドローンが異常な動きをしている。どこに向かっているのか分からない。」
智之は背筋が寒くなるような感覚を覚えた。
それまで静かだった侵略者が、ついに動き出したのだ。
彼は窓の外を見た。
遠くの空に小さな点が次々と現れ、それがまるで群れをなして降りてくるように見える。
その点が近づくにつれ、それが小型の無人機――ドローンであることがはっきりと分かった。
無音に近い滑らかな動きが、さらに不気味さを増している。
「何をしている…?」
智之は自問する。
その時、つけっぱなしにしていたテレビから警報音とともにアナウンサーの緊迫した声が発せられた。
『速報:侵略者が無人機を発進。政府が動きを追跡中』
智之はテレビ画面に目を向けた。このニュースを目にした人々がどう反応するのか。街の静けさが不気味に感じられる中、彼は一層慎重に動きを考えなければならないと自覚していた。
ドローンの不気味な群れは、静けさを破壊した。
智之は窓の外を見つめていた。
空を埋め尽くすように広がる小型ドローンの群れが、まるで自分たちの存在を誇示するかのように動き回っている。その動きは滑らかで、異様に統率されていた。
遠くで悲鳴が聞こえた。
智之は視線を走らせる。
街角に集まる数人の民間人の頭上にドローンが現れ、一瞬の静止の後、それは鋭く低空に降りてきた。
「なんだ…?」
智之は息を呑んだ。
ドローンが人々を包囲するように動き回り、その後、素早く何かを操作する音が響いた。
その動作はほとんど機械的で感情が見えない。
しかし、その結末は恐怖を伴っていた――ドローンが何かを発射し、民間人を拘束するような装置を展開する。
彼らは叫びながら抵抗するが、その声は無情にも機械の動作音にかき消される。
一人、また一人とドローンによって捕獲され、引き上げられるようにして消えていく。
「これは…」
智之は呟きながら、拳を握りしめた。
侵略者は人類に対する攻撃の第一歩を踏み出したのだ。
その目的が何であれ、明らかなのは、彼らが対話ではなく力で支配を試みているということだった。
政府の会議室は再び騒然となっていた。
スクリーンに映る各地の映像では、ドローンが民間人を捕獲する様子が次々と確認されていた。
「これは戦争だ!」
一人の閣僚が叫び、机を叩いた。
「冷静に!」
冴島が鋭い声を上げる。
「敵はまだ全面的な攻撃を仕掛けていない。捕獲は人類に対する心理的な挑戦だ。我々が暴発すれば、次はもっと大規模な行動を起こすだろう。」
「では、どうする?人々が捕らえられているのを放置するのか?」
閣僚たちの間で激しい議論が続く。
「まずは現状を国民に周知し、敵の意図を探るしかない。」
冴島は続けた。
「敵の行動を読み取れる者を招集し、対策を練るべきだ。」
「拐われた民間人はどうするんだ!」
「今は無事を祈るしかない」
ニュース速報が再び流れる。
『速報:ドローンが民間人を捕獲。政府は国民に警戒を呼びかけ』
画面に映るその文字が、人々の間に新たな恐怖を広げていく。
その頃防衛省内では、緊急対応が別の形で進行していた。
会議室に出席できなかった一人の高官――彼は、自衛隊に緊急発進を命じた。
彼の胸には焦燥が募り、民間人の捕獲を止めるべく、どうしても一手を打たなければならないと判断したのだ。
「防衛ラインを越えて侵略者が侵攻を続けるようなら撃墜せよ。」
その言葉が、部隊の指揮官に伝えられる。
こうして、数機の戦闘機が夜の闇を切り裂くように発進していく。
パイロットたちは、スクリーンに映る侵略者の宇宙船を目視しながら、それぞれのポジションを維持する。
「目標を視認した。」
戦闘機の先頭機が通信を入れる。
巨大な宇宙船はまるで黒い影のように夜空に漂い、その巨大なシルエットは圧倒的だった。
戦闘機のレーダーが異常を検知し続けている。
飛行物体から放射されるエネルギーは、人類の技術では計り知れないものだった。
「攻撃許可を。」
パイロットの声に応じ、地上の司令部から短い指示が送られる。
「撃て。」
ミサイルが一斉に発射される。夜空を切り裂くような軌跡を描き、宇宙船へと向かう。
しかし――その直前、宇宙船の周囲に青白い光が広がり、ミサイルを弾くような防御フィールドが展開された。
「ミサイルが効かない!」
パイロットたちは焦りの声を上げる。
次の瞬間、宇宙船から小型の無人機が大量に放出される。
ドローンたちは統率された動きで戦闘機を囲むように配置し、鋭い軌道で迎撃を開始する。
「攻撃を受けている!応援を要請する!」
戦闘機の通信が司令部に届く。
ドローンの攻撃は精密で、一機また一機と戦闘機が撃墜されていく。
パイロットたちは必死に回避行動を取るが、そのスピードと数に圧倒されていた。
防衛省の指揮官たちは、スクリーンに映る戦闘機とドローンの交戦を見守りながら、次の一手を考えなければならなかった。
「宇宙船の防御フィールドが想定以上の強度だ。通常兵器は効果がない。」
若い技術官が報告する。
その時、スクリーンに映る戦闘機が最後の攻撃を仕掛ける。
一筋のミサイルが放たれ、宇宙船の影へと突き進む。
しかし、それもまた防御フィールドに吸収されるように消えた。
「クソ…!全機撤退せよ。」
司令部からの指示が伝えられる。
夜空の闇は再び静寂を取り戻した。
しかし、その静けさは恐怖を伴っていた。
侵略者が明確に敵意を示し、自分たちの通常の兵器では太刀打ちできない…それが確定した瞬間だった。
戦場からもたらされた報告に、会議室の空気は一変した。
防衛省の通信士が緊急報告を伝えると、会議室の中はざわつき始めた。
「ミサイルが効果なし…だと?それじゃあ、どうやってあの宇宙船を止めるんだ!」
国防高官の一人が立ち上がり、机を強く叩いた。
額に浮かぶ汗が、その動揺を物語っている。
「報告によれば、宇宙船は防御フィールドを展開し、我々の兵器を完全に無効化しています。そして、小型の無人機による反撃で戦闘機が次々と撃墜されました。」
冷静を装いながらも声を震わせる官僚が、指揮所からの報告を読み上げる。
「戦力で劣ると分かっていて、なぜ攻撃命令を出したのか!」
外交官の一人が怒声を上げた。
「そんな事はこっちが聞きたい!誰が出撃を命じた!?」
防衛高官が応じ、激しい口論が始まる。
冴島はそのやり取りを見つめながら、深く息を吐いた。
慌てふためく高官たちの間で、冷静に判断する者はほとんどいない。
このままでは、決断を下すどころか、混乱が深まるばかりだ。
「静粛に!」
冴島が鋭い声を放つと、会議室の中がようやく静まり返った。
「ここで互いを責め合っても、状況は好転しない。我々が今必要なのは、次の一手を冷静に考えることだ」
彼の言葉に、他の高官たちは視線を落とす。
「だが、次の一手と言っても…どうすれば?」
一人の閣僚が弱々しい声で呟く。
「まず、敵の目的を改めて考えるべきだ。」
冴島は資料を手に取り、机に広げた。
「彼らは力を誇示することで、人類に恐怖を植え付けようとしている。我々が感情に流されれば、それこそ敵の思う壺だ。」
「だが、これ以上市民が犠牲になるのを黙って見ているわけにはいかない!」
他の閣僚が反論する。
「だからこそ、あらゆる可能性を模索しなければならない。それも迅速にだ」
冴島の声は冷静だが、そこには隠れた力強さがあった。
「短絡的な行動は、さらなる惨事を招く。それを肝に銘じるべきだ」
会議室の中は再び静寂に包まれる。そこに鳴り響くのは、スクリーンに映し出された映像の音声だけだ。宇宙船が夜空に沈黙を続ける中、地上での混乱はますます拡大しつつあった。
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