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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
30/31

幕間:????

避難所に作戦の成功を報告され、喜びに湧く人員の中、一人の人物が数名の官僚とともに静かに姿を消した。

争いの収束へ向けて各地が動き始める中、その行動は誰の目にも留まらず、慎重に計画されたものだった。

薄暗い通路を静かに進む足音。

彼らはすでに決意を固めていた。

避難所の混雑を巧みに避けながら、目立つことなく目的の場所へ向かっていく。

何かを語る者はおらず、端末への最後の通信記録も短いものだった。

すべてが終わった後、その名が指揮系統から消える。

報告にも記録にも、彼らの行方を示す情報は一切なかった。

ただ、戦いが終わり、新たな秩序が生まれる中で、彼らもまた歴史の影の一部となっていた。



薄暗い部屋の中で、数人の男たちが静かにグラスを傾けていた。

戦争の終結を祝う喧騒が外では続いているが、この部屋ではまったく異なる空気が流れている。

彼らにとっては、戦争の終焉こそが大きな問題だった。


「まったく皮肉なものだ。誰もがこの戦争の終わりを望んでいたはずなのに、俺たちにとっては破滅への序章だ」


そう言ったのは、この戦争中に莫大な利益を得ていた工場の主だった。

戦場に流れ込む大量の武器を供給し、膨大な利益を得ていた彼にとって、平和とは最大の敵だった。


「お前のところだけじゃないさ」


向かいに座った補給品の業者が苦笑しながらグラスを回す。


「俺の会社も戦争が続く限り、食料も医薬品も莫大な需要があった。でも戦争が終わった途端、不要になったんだ。取引先も次々と消えていく。今さら平時の市場に戻れって言われても、どうすればいいか分からんよ」

「それは俺も同じだ」


軍用車両を製造していた男が腕を組みながら続ける。


「戦場での移動手段として我々の技術は不可欠だった。政府は無限に資金を投入し、俺たちはそれに応えてきた。しかし、今や軍需品よりも都市開発や民間向けの輸送にシフトするだろうと言われている。俺の工場で一体どうやって民間用の車両を作れっていうんだ?」


男たちは沈黙する。戦争という巨大な市場が、平和の訪れによって消滅しつつある。


「しかし、こうなることは分かっていたはずだろう?」


グラスの縁を指でなぞりながら、一人の男が静かに問いかけた。

彼は情報分析を生業としていた。

戦況を予測し、それに応じた戦略を立てることで富を築いていたが、戦争が終わればその知識も価値を失う。


「分かっていたさ。しかし、戦争というのは終わるときが一番厄介なんだ。戦火が燃え広がるほどに市場は拡大し、金は動く。でも終戦が決まった瞬間、すべてが縮小し、停滞する。それは誰にもどうしようもない」


武器商の男が鼻で笑う。


「皮肉なことだ。平和を求めて戦ったはずの奴らが、俺たちが支えた資源のおかげで戦えたんだからな。俺たちがいなければ、この戦争はここまで続かなかっただろう」

「それは言えてる。兵器がなければ戦争はできない。俺たちが供給し、政府が買い、兵士たちが戦った。そうやって市場が回っていた。それが今、断ち切られたというわけだ」


男たちはそれぞれのグラスを見つめながら、戦争が終わった後の世界を思い描く。

彼らが築き上げた市場は、平和によって不要になってしまった。


「お前らはこれからどうするんだ?」


情報分析の男が問いかけると、武器商の男は苦々しく笑った。


「さあな。民間市場に転向しろと言われても、俺たちの設備はすべて軍用に特化している。簡単に切り替えられるわけがない」


補給品の業者も肩をすくめる。


「俺たちは市場の変化を読むことができるが、それに適応できるかどうかは別問題だ。平和になれば、人々は新しい需要を生む。でもそれが俺たちにとっての機会になるかどうかは分からん」

「俺たちは戦争が続く限り、最前線にいた。そしてそれを支えることで利益を得ていた。だが、今はもう、その市場は消えた。俺たちはただ、見届けるしかないのか?」


男たちは無言のまま、酒を飲み干した。

それぞれが自身の未来を考えながら、静かに杯を置く。

戦争が終わることを世界は祝福している。

しかし、この部屋にいる者たちにとっては、平和こそが最大の危機だった。

そして彼らは、その後の世界でどう生きるのかを、まだ見つけられずにいた。


誰かが言った。

何でもない事のように。


「なら、続けようじゃないか…連中が攻めてくるまでもそうだったように」

読んで頂きありがとうございます。

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