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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
3/31

侵略の幕開け3

合議体というものが決断力がないのは仕組み上仕方がないのですが有事の際にもそれでは困りますよね~。

ふと思い立ってPCのスリープを解除する。

SNSやネット掲示板で情報を集められないかと考えたためだ。

ネット上の情報とは馬鹿にできないものがある。

大半は無価値なシロモノでしかないが、時々物事の本質を突いた情報があったりもする。

それにこういう時には、いわゆる情報筋が有益な情報をうっかりと漏らしていたりするものだ。


智之は静かにキーボードを叩き、ネット掲示板へアクセスした。

政府の公式発表は遅く、報道機関の情報も断片的だ。

だが、匿名の市民が投稿する情報の中には、現場のリアルな動きが含まれているかもしれない。

画面に映る掲示板のスレッドタイトルはどれも異様なものばかりだった。


「未確認飛行物体を目撃した。これって本当に宇宙人?」

「通信障害が発生中…ただの故障じゃない」

「政府は何をしている?対応が遅すぎる」

「これ、戦争になるのか…?」


智之は画面をスクロールしながら、それぞれの書き込みを確認していく。

あるユーザーが、携帯の電波が急に不安定になったと報告していた。

別の書き込みでは「近くの軍施設で異常な動きがある」と投稿されている。

公式発表のないまま、憶測だけが先行し、人々の不安が加速しているのが伝わってきた。


「未確認飛行物体の目撃情報は散発的か…通信障害は局地的?これはただのシステムの問題ではない可能性がある。」


SNSのトレンドも確認する。

#異星の侵略

#謎の飛行物体

#政府は情報を隠している?


人々の間で情報が錯綜している。

これほど広範囲で異変が起きているにもかかわらず、確定情報がないことに智之は違和感を覚えた。

誰も真実を知らないのか、それとも知らされていないのか。

投稿を分析しながら、智之は次の一手を考え始める。

掲示板の中に、軍関係者や専門家の書き込みがあるかもしれない――それを探すべきか。

それとも、より直接的な情報源を求めて他の手段を取るべきか。


彼は何事かを小さく呟きながら、さらに深く情報を追うことを決めた。

集めた情報の断片が、ゆっくりと繋がり始めていた。

智之はネット掲示板の書き込みを見ながら、徐々に全体像を組み立てていく。

目撃証言、通信障害の報告、政府の対応の遅れ

――それらがひとつのパターンを示しているように思えた。


「これがただの都市機能の混乱ならば、もっと局所的なはずだ。しかし、世界各地で似たような報告が上がっている…。」


掲示板の更新ボタンを押すと、新たな投稿が目に飛び込んできた。


「警察や自衛隊の動きが不自然だ。何かを警戒しているように見える。」

「空港の一部で封鎖が始まってる。国内線が相次いで欠航。」

「自衛隊基地の近くで軍用車両を目撃。何か始まるのか?」


智之は眉をひそめた。政府の対応が遅れているとはいえ、何らかの防衛策を水面下で進めている可能性はある。

だが、それが「対抗手段として準備されたもの」なのか、「撤退を前提としたもの」なのかは分からない。


次にSNSをチェックする。

トレンドワードに変化があった。

#都市封鎖

#緊急対応

#何かがおかしい


そこに、一つ気になる投稿が紛れていた。


「政府の関係者らしき人物が、今夜中に"発表"があるかもしれないと話していた。」


智之はその一文をしばらく見つめた。

政府が情報を公開する準備を進めているならば、その内容次第で戦況は大きく変わるかもしれない。


「待つべきか…それとも、先に動くべきか…。」


彼は慎重に、そして迅速に次の行動を決める必要があった。


その頃、政府は喧々諤々の騒ぎになっていた。

当然であろう。

誰もこんな状況に陥ったことないどない。

宇宙からの訪問者などまさに前代未聞なのだ。

しかもそれが行ったことが「星の要求」だなどと言う侵略だ。

騒ぐなという方が無茶であろう。


政府庁舎の会議室には、重苦しい空気が充満していた。

深夜にもかかわらず、国内の要人たちはすでに集結し、スクリーンに映し出される各地の映像を食い入るように見つめていた。


「未確認飛行物体は降下を続けています。現在、東京、名古屋、大阪、福岡――主要都市すべてで確認されています。」


報道機関からの速報を読み上げる若い官僚の声は震えていた。


「政府発表はまだか?何をしている!」


声を荒げたのは国防関係の要職にある男だった。

額には汗が浮かび、机に拳を叩きつけながら苛立ちを露わにする。


「冷静に、まずは現状を整理すべきです。」


落ち着いた声が割って入った。防衛省の一人が、モニターの映像を指さしながら続ける。


「敵はまだ攻撃を仕掛けていません。我々に選択を迫っている可能性があります。」

「選択?降伏するか戦うか、それ以外の道はないだろう!」


対外政策を担う高官の一人が声を荒げる。彼の目には恐怖が宿っていた。

会議室の中で、賛成と反対の意見が入り乱れる。


「自衛隊を出動させるべきだ!国民を守るために!」

「今すぐ敵との接触を試み、和平の可能性を探るべきだ!」

「政府は情報を公表し、国民を安心させなければならない!」


誰もが何かを叫び、議論は混乱の渦へと落ちていく。

その混沌の中、静かに資料をめくる男がいた。

内閣の一員であり、危機管理を専門とする人物――彼は、他の者たちが騒ぎ立てる中でも冷静なままだった。


「全員、冷静に。」


その声が響くと、一瞬だけ室内が静まる。


「状況を分析する。敵の動向を慎重に読み取る必要がある」


モニターに映る飛行物体を見つめながら、彼は続ける。


「敵の行動は計画的であり、一斉降下しているが攻撃はない。これは圧力をかけている――人類が内部から崩壊するのを待っている可能性がある。」

「つまり…時間をかけて、我々が混乱するのを待っていると?」


ある者が疑問を口にする。


「そうだ。だからこそ、無駄な動揺は禁物だ。」


彼の言葉に、半ばパニックに陥っていた者たちが口をつぐむ。

しかし、対策をまとめるには時間が足りない。刻一刻と侵略者は降下を続けている。


「決断しなければならない。」


誰かが呟く。

その決断が、国の行く末を左右することは間違いなかった。


この混乱の中で、誰が理性を保てるのか。

冴島はゆっくりと視線を巡らせた。

会議室の空気は重く、焦燥と恐怖が入り混じっている。

スクリーンに映る都市の映像は静かだったが、それこそが異常なのだ。

人々が動揺しながらも何もできずにいることが、侵略者の目的なのではないか。


「全員、冷静に。」


その一言で会議室の喧騒が一瞬止まった。彼は資料を机の上に置き、静かに言葉を続ける。


「状況を分析する。敵の動向を慎重に読み取る必要がある。」


数人の者は息を整えながら冴島を見た。彼の冷静な口調は、いくばくかの理性を取り戻す手助けになっている。


「現在、未確認飛行物体は都市上空に留まっているが、攻撃を仕掛けていない。これは単なる威嚇ではなく、戦略的なものだと考えられる。」

「戦略的…?」


ある閣僚が呟いた。


「人類の内部から崩壊させる策かもしれない。」


冴島は淡々と言った。


「私たちが自ら混乱し、誤った判断を下すのを待っているのではないか。」


その言葉に、会議室の一部の者はさらに動揺し、別の者は考え込んだ。


「では、どうする?」

国防関係の要職者が語気を強める。


「座して滅びるのを待つのか?」

「もちろん違う。」


冴島は即答した。


「しかし、無駄な動きは禁物だ。敵の真意を掴むまでは、慎重に情報を整理し、最適な対応を講じるべきだ。」


その時、別の官僚が書類を広げながら口を開いた。


「…都市機能の一部がすでに停止し始めています。交通管制の不具合、通信障害、ネットワークの断絶が散発的に報告されています。」


冴島は眉をひそめた。


「敵の直接的な攻撃ではなく…これは、電子戦か?」


もし侵略者が都市機能の混乱を狙っているのなら、軍事的な行動よりも、国家の情報網やインフラへの影響を優先的に考えなければならない。

彼はそう理解すると、隣に座る情報機関の責任者に目を向けた。


「諜報部は何か掴んでいるか?」

「まだ正確な情報はありません。ただ、敵の存在によって何らかの技術的影響が発生している可能性があります。」

「推測にすぎないが、これが単なる侵略ではないことは確かだ。」


冴島は言った。


「人類は戦うのか、それとも降伏するのか…その決断を迫られている。」


会議室は再び沈黙に包まれた。

冴島は会議室の重い沈黙を感じながら、他の閣僚たちの顔を見渡した。

誰もが次の決断を待っている。だが、今ここでパニックに陥れば、侵略者の思うつぼだ。

その時、ある閣僚が口を開いた。


「まずは、各種の通信を試みるべきだ。」


彼の声は低く、しかし力強かった。

情報戦が始まる以上、敵の意図を探るには対話が必要だ。

その発言に数人がうなずき、冴島もじっとその意見を聞いていた。


「軍事的対応を決めるには、まず敵との意思疎通を試みることが必要です。」


その閣僚は続けた。

「彼らの目的が交渉可能なものなのか、それとも完全な支配なのかを見極める。それによって、次の動きが決まる。」

「交渉するというのか?」


国防高官の一人が声を上げた。

「敵の技術力を見れば、戦う術などないことは明らかだ。我々に選択肢はあるのか?」

「だからこそ、意思疎通が必要なのだ。」


冴島が口を開いた。

「彼らはまだ攻撃していない。我々が先に暴発すれば、それこそ望んでいた展開となるだろう。」


会議室にいる者たちは互いに顔を見合わせた。


「投票を取りましょう。」


その提案に、全員がうなずく。

政府高官たちはそれぞれ賛成か反対の意思を示した。

やがて結果が出る。

賛成多数――まずは敵との通信を試みる。

決定が下されると、広報担当の高官が口を開く。


「この決定を国民に周知する必要があります。」


すぐに報道機関へ通知が送られ、ニュース速報の準備が進められた。

『速報:政府は侵略者との通信を試みる決定を下す』

画面に赤い文字が流れる。国民の間に緊張と安堵が入り混じる。

恐怖の中でも、政府が動いていることを知らせる必要がある。

それが、混乱を防ぐ唯一の手段だった。

冴島はスクリーンに映る速報を見つめながら、深く息をついた。

これが正しい決断なのかは分からない。

ただ、次の展開が待っていることだけは確かだった。


読んで頂きありがとうございます。

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