暴走の果て2
マザーAI程の機能を安定的に運用する為には何が必要か?
それは優れた性能のコンピュータであったり、それらの運用を可能にする素材であったりと様々な要因が絡んでくるだろう。
その中で重要な位置を占めるのが冷却である。
優秀な演算装置になれば、どうしても発熱の問題が出てくるものだ。
異星人の技術力といえどもそこをスルーすることはできないはずであり、最も確実かつ低リスクでAIを無力化可能であるはずだ。
しかし、闇雲に冷却システムをダウンさせようとしたところでマザーAIはそれを傍観していることはないだろう。
言ってしまえば自分を殺そうとしているのだから。
ではどうするのか?
これも簡単である。
如何に処理能力が強力であろうとも同時並行で膨大な容量のデータを入力されればどうなるかは火を見るよりも明らかだ。
更に、マザーAIは異星人との対話型だ。
そうであるならば、多量のデータの入力と対話での暴走阻止、冷却システムのダウン、地上での戦闘とタスクを与えてしまえばよい。
なにしろ現在、彼女は異星人の未来のために必死になっている。
先ほど地球側からの要請で個人端末へ接続できたことから分かるように、地球で使用されている周波数帯と彼らの端末は互換性がある。
彼らが地球にやってきてからすぐにそこまで掌握されていることはあり得ないだろう。
もう掌握しているのならば、とっくに遮断まで行っているはずだ。
情報撹乱してしまえば、我々地球の勢力など組織だっての抵抗もできなくなるのだから。
響子がホワイトボードに項目を整理しながら口を開いた。
「マザーAIを無力化するためには、複数の手段を同時に実行する必要があるわ。これが私たちの作戦の主要な柱よ」
- データの過負荷入力
マザーAIに膨大なデータを送り込むことでリソースの限界を引き出す。異星人側の技術者と共同でデータ作成を進める。
- 冷却システムのダウン
旗艦内部の冷却システムを妨害し、マザーAIのコアをオーバーヒートさせる。この部分は地球側と異星人側の技術班が現地で行う。
- 地上での戦闘タスクの増加
地球側の部隊が異星人軍部と連携し、無数の戦闘タスクをマザーAIに割り振る。これにより、AIの処理能力をさらに消耗させる。
- 対話による暴走阻止
マザーAIとの直接的な対話を試み、彼女に自らの行動が矛盾していることを気づかせる。これは異星人反戦派が主導する。
「これらの作戦を同時進行で展開し、マザーAIの暴走を収束させる方向へ進めるわ」
異星人側の司令官が通信越しに頷きながら答えた。
「データ入力は我々の技術者が協力する。彼らはマザーAIの処理系統について最も詳しい知識を持っている。冷却システムの妨害についても、内部の配置情報を提供する」
反戦派のリーダーが続けて口を開いた。
「対話については私たちが担当する。我々の中にはマザーAIの設計理念を理解している者がいる。彼女が自らの行動を認識し、修正を試みる可能性がある…軍部には指導者層からの妨害を阻止して欲しい」
「分かった。部下を適当な報告で向かわせて足止めしよう」
智之が冴島に向き直りながら話を進めた。
「冷却システムの妨害は地球側の技術者が異星人側と共同で旗艦内に入り、手動で行う必要があります。そのため、異星人軍部には我々の部隊を旗艦へ誘導する協力をお願いしたい」
「旗艦内への侵入は危険だぞ。防衛システムがどうなっているか分からない」
「防衛システムの情報も提供する。それが安全に動ける唯一の方法だ」
響子がホワイトボードに次のステップを記入しつつ口をはさんだ。
「地上での戦闘タスク増加も重要ね。我々の部隊が戦闘を継続することで、マザーAIに負荷を与える。同時に作戦が進行している間の時間稼ぎにもなる」
「正直言って、どこまでの効果が見込めるかは不透明だ。各員慎重に事を進めてくれ」
智之が通信越しに異星人たちを見つめて言った。
「この作戦が成功すれば、君たちの未来はもちろん、人類の存続も守られる。地球側はこの作戦に全力を尽くすつもりです」
「我々も全力を尽くそう。これが我々の種族と君たちの未来を守る唯一の方法だ。戦争はメリットを産まない事など実例付きで見てきたはずだというのに…」
こうして、地球側と異星人側の共同作戦が正式に始動した。
マザーAIを止めるため、両者が持てる知識と力を合わせ、史上最大の挑戦に臨もうとしていた。
地球側と異星人の共同作戦は静かに始動した。
マザーAIを無力化するための計画は、膨大なデータ入力、冷却システムの妨害、地上での戦闘タスク増加、そして対話による説得を組み合わせて進められる。
両者はそれぞれの役割を果たすべく、緊張感の中で準備を進めていた。
智之は避難所内の作戦司令室に立ち、部隊に指示を出していた。
「地上部隊は戦闘を継続しつつ、異星人軍部との連携を強化すること。無数の戦闘タスクをマザーAIに割り当て、その処理能力を消耗させるんだ。ドローンや無人機は積極的に破壊するか鹵獲して隔離しろ!」
響子が横でホワイトボードを見つめながら付け加えた。
「技術班は冷却システムの妨害の準備を進めて。旗艦内部への侵入ポイントは異星人側が提供してくれるわ。これが成功しない限り、AIの機能は維持されてしまう」
博士はモニター越しにマザーAIの命令データを確認しながら、応え返す。
「膨大なデータ入力に向けた準備は整っている。我々の技術者が作成したデータを異星人側へ送信し、彼らの技術と組み合わせる。古の時限解凍ZIP爆弾だ…喜んでくれるだろう」
旗艦内部では、異星人の軍部と反戦派がそれぞれの役割を果たしていた。
司令官が部下に向けて指示を出す。
「地球側の技術者を旗艦内へ誘導せよ。防衛システムの安全を確保し、冷却システムへのアクセスを支援する」
反戦派のリーダーが通信ラインを調整しながら言葉を発する。
「対話の準備を進める。我々はマザーAIが自らの行動の矛盾に気づき、修正するよう説得を試みる。この交渉が最後の希望となるかもしれない」
技術者たちは膨大なデータを作成するシステムに向かい、マザーAIの処理能力を最大化するための準備を進めていた。
「このデータが送り込まれると、AIのリソースが限界まで使い尽くされるだろう。地球側との連携が鍵だ」
地上では、地球側の部隊が異星人軍部の一部と連携しながら激しい戦闘を続けていた。
戦場には無数のドローンと戦闘用アンドロイドが飛び交い、双方の部隊がその動きを見極めながら対抗している。
「全部隊、攻撃を続けろ!AIに処理タスクを押し付けるのが目的だ!」
地球側の指揮官が無線で叫ぶ声が響く。
異星人の部隊も指示を受けて動き、「攻撃を分散させ、AIの監視を混乱させる。地球側と戦闘エリアを共有しつつ、マザーAIに負荷を与えるんだ!」と応じた。
旗艦内では、地球側の技術者と異星人側の技術者が協力しながら冷却システムへのアクセスを試みていた。
響子が通信越しに矢継ぎ早の指示を出す。
「冷却システムの構造を解析し、オーバーヒートを誘発するための手段を見つけて。時間がないわ」
異星人技術者は冷静に答えた。
「こちらは進行中だ。旗艦の内部構造情報を送信する。これで侵入ルートが明確になるはずだ」
博士がその情報を受け取った。
「冷却システムのダウンが成功すれば、マザーAIのコアに直接影響を与えられる。これが作戦の最も重要なポイントだ」
こうして、地球側と異星人側が共同でマザーAIの無力化に向けた作戦を展開していった。
膨大なデータ入力、冷却システムの妨害、戦場でのタスク負荷、そしてマザーAIとの対話――これらが全て同時に行われることで、彼女の暴走を止める可能性が生まれ始めていた。
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