幕間:苦悩
彼らは悩んでいた。
この惑星には数十億という途方もない数の原住民が存在している。
これを駆逐するには相当な時間とコストがかかるだろう。
しかしそれをしない訳にはいかないのだ。
数が多いものはそれだけで少数派の脅威となる。
いくら技術や精神性が優越的であろうとも、原住民の数が多ければその物量でひっくり返される。
ならばやるしかないのだ。
全ては帰るべき星を失った同胞たちの未来の為に。
しかしながら自分たちの数はもう100万にも満たない…旗艦のマザーAIも擦り切れかけている。
何でも応えてくれて導いてくれた彼女に縋ることもできそうにない。
その上戦闘訓練を積んだ兵士など実際の所は5万もいないのだ。
…民間人には10万程と説明してはいるがそんな嘘もいつまで続けられるか分からない。
更に悪い事はまだまだある。
船の修繕に利用できそうな素材がもう僅かしかない。
手足となって働くドローンもこれ以上は生産できないだろう。
原住民との戦闘に使える戦闘用アンドロイドも多くはないし、共食い整備のせいで完全な機体はゼロだ。
一番の問題は士気が全く上がらないことだろう。
平和に慣れすぎた民間人は原住民との戦争に否定的だ。
この惑星の海底にコロニーを造り上げ、入植するべきとの声が最も多い。
数の問題から戦争に駆り出さなければならない以上は無下にもできないし、そうかと言って資源に恵まれた地上を諦めることもできない。
そんな事をしたら軍部は迷わずクーデターを起こすだろう。
長い間、苦労してきたのだ。
その末にあれほど魅惑的な惑星を見つけてしまったならば…。
やるしかないのだ。
我々の未来の歴史家が自分たちを「侵略の末に生き延びた愚物」と断じようとも。
全ては帰るべき星を失った同胞達のために。
「そうだろう…マザーよ」
その呟きは異星人たちの旗艦、そのマザーAIへと…確かに届いた。
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