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孤星の抗戦  作者: 轟蓮次
23/31

内情4

智之は避難所に到着すると、指定された会議室に足を運んだ。

冴島さんが待っている。

少しの緊張と責任感を抱きながら扉をノックすると、中から落ち着いた声が返ってきた。


「入れ」


智之は深く息を吸い込み、ドアを開けて中に入った。

冴島は机の上に広げた地図を見つめながらも、顔を上げて智之に目を向けた。


「言ってきたんだろう?緊急の報告があると聞いている」

「はい」


智之は姿勢を正しながら、淡々と話し始めた。


「冴島さん。ジョーンズから受け取った情報と、それに基づいて私が確認してきた内容について報告します」


冴島さんは頷きながら、手元の資料を片付け、智之の方に集中する。

智之はジョーンズの報告内容から話を始めた。


「ジョーンズが接触した異星人のグループについてですが、彼らは戦争を望まない反戦派であることが確認されました。種族全体の人数は100万以下、そのうち戦闘を行う階級にあるのは10万人未満だそうです。これらは彼からの情報だけではなく、私が直接確認して裏付けた内容です」


冴島さんの表情が少し硬くなる。


「数がそれほど少ないというのは驚きだ。しかし、それが事実ならば、侵略行為の意図と矛盾しているようにも思えるな」

「その通りです」


智之は頷きながら続けた。


「彼らの戦争には、追い詰められた種族の生存本能が背景にあります。母星を失い、宇宙を漂流する中で資源が枯渇し、自立型兵器は老朽化。技術者も不足している状況で、地球を新たな生存の場として選んだのです」


智之はそこで一度言葉を切り、冴島さんの反応を伺った。

冴島は腕を組み難しい表情をしながら独り言のように訪ねた。


「地球を選んだ理由は環境が最適だったからか?」


と問いかけた。



「その通りです。ただし、彼らの身体は地球環境に適応できない。そのため、人体のDNAを用いて自らを変化させる必要があると考えています。これが彼らの侵略の直接的な理由です」


冴島は少し険しい顔をしながら静かに呟いた。


「人間を犠牲にすることで自分たちの生存を図る…なんとも理不尽だ」


智之はその言葉に応じるように言った。


「はい。ですが、彼らの指導部が全てを支配しているわけではありません。内部には反戦派も存在し、彼らは戦争を終わらせるための方法を模索しています」


「反戦派、か」

冴島さんは少し考え込むような表情を見せた。


「その反戦派の規模や影響力について、どれほどの確証が得られている?」


智之は慎重に言葉を選びながら答えた。


「規模の詳細についてはまだ把握できていません。ただ、彼らは戦争を望んでおらず、人類との対話を望んでいることは確かです。実際に私が彼らと数日間生活を共にし、その姿勢を確認しました」


冴島さんは智之を見据え、「実際に会ってきたのか?」と問いかける。


「はい。彼らの隠れ家に行き、直接話をしました。想像していた以上に陽気で楽観的な者たちでした。その中には、戦いではなく共存を模索する者も多くいました」


冴島さんは眉をひそめながらも、「お前が感じたその印象を、全面的に信じるべきかどうか…難しい問題だな」と呟いた。


智之は深く息を吸い、つぶやきに答える。


「私も完全に信じるには至っていません。ただ、彼らの言葉や行動には確かに誠実さが感じられました。それがどれほどの意味を持つのか、さらに検討が必要だと考えています」

「その情報を整理し、具体的な行動計画を示してくれ」


智之は一瞬緊張したが、力強く頷いて答えた。


「分かりました。可能な限り詳細に分析し、報告書としてまとめます」

冴島は立ち上がり、智之を見つめながら短く言った。


「ご苦労だった。続けてくれ」


智之は敬礼し、その場を後にした。


智之が避難所の会議室に入ると、既に響子と博士がテーブルを囲むように座っていた。

響子は資料を手に取りながら、それを覗き込んでいる。

博士はノートパソコンに向かい、何かのデータを分析している様子だった。

智之は静かに席に着き、二人に向けて口を開いた。


「遅れてすまない。早速、報告内容について話をさせてほしい」

「気にしないで。こちらも準備を進めていたところだから」


博士は目を離さずに画面を見ながら、視線のみを智之に向けた。


「君が異星人から得た情報は全て整理されているんだろうね。具体的な内容を聞かせてほしい」


その態度はどこか冷静だが、興味を強く抱いていることは伝わってくる。


「まず、ジョーンズが接触した異星人の反戦派についての話だ」


智之は慎重に言葉を選びながら報告を始めた。


「彼らは戦争を望んでいない。これが最も重要な点だ。彼ら自身も戦争の結果を危惧している。しかし指導部に従わざるを得ない状況にある」

「つまり、彼らには抵抗する力がないということね」

「その通りだ。内部で反戦派と指導部が対立しているが、現在のところ反戦派が優位に立つことは難しい」


智之の言葉に響子が少し眉をひそめた。


「それなら、反戦派をどうやって支援できるかが鍵になるわね」

「君たちは彼らの陽気な性格や楽観的な態度を重視しているようだが、それが我々にとっての脅威でないと判断する根拠はあるのか?」

「実際に彼らと数日間生活を共にした。その中で彼らが戦闘を忌避する者であることは明確だと感じた。ただし、最終的な判断にはさらに確証が必要だ」

「ふむ…戦争では人間性が如実に表れるというが異星人にも当てはまるのだろうか?そうだとしたら戦地での話が信憑性を持つだろうな」


響子は資料を机に置きながら智之に向き直った。


「彼らが協力する意志を持っているなら、それを活用しない手はないわ。具体的にどんな形で協力できるか考えている?」

「まずは彼らがどのような手段で戦争を回避しようとしているのか、それを確認する必要がある。彼ら自身も具体的な案を持っているわけではないが、対話を求める姿勢は本物だ」


智之は響子の質問に真剣な口調で答えた。

博士は画面を閉じ、智之に目を向けた。


「もし交渉を試みたとして、それが成功した場合、異星人と人類は共存する道を探ることになる。それは技術的にも倫理的にも難しい問題だ。君はどう考えている?」

「博士、私もその部分については慎重に検討する必要があると思っています。ただ、戦争を続けるよりは交渉の道を模索する価値があると考えています」


智之は力強く答え、続けて言った。


「もちろん、最終的には冴島さんや指導部の判断に委ねる部分もある。しかしその前に我々が彼らの可能性を最大限に探る必要がある」

「それなら私たちが主体的に動くべきね。異星人の反戦派と再度接触して、もっと具体的な情報を集めるのはどうかしら?」


その声は柔らかいが、意志の強さが滲んでいた。


「賛成だ。次回の接触では、彼らの指導部の動向や内部の状況についてもっと詳しく調べる必要がある」

「君たちの考えは理解した。その方向で進めるべきだろう」


博士がノートパソコンをテーブルに置きながら話し始めた。


「智之君からの報告で、異星人内部には反戦派が存在し、人類との対話を望む可能性が示唆された。しかし、その真偽を確かめるには、戦場での具体的な証拠が必要だと思う」

「その通りね。ただ、戦場での情報収集はリスクが高いわ。どうやって部隊の協力を得て、正確な情報を集めるのか、それを考える必要があるわね」

「現場の指揮官に協力を要請し、戦闘に消極的な異星人に関する目撃証言や行動の記録を収集するよう頼むのが最善だと思います」

「その方法なら確かに有効かもしれないわ。ただ、情報の精度を高めるために何らかの基準を設けるべきね。たとえば、どのような状況で戦闘を避けたのかを具体的に記録させるとか」


博士は少し考え込むように頷き

「記録の形式や報告内容を統一すれば、情報の分析もしやすくなるだろう」と続けた。


智之がホワイトボードにメモを取りながら提案を進めた。

「まず、各部隊に対して以下の内容を通知します:

- 戦闘を避ける異星人の目撃情報を優先的に記録すること

- 異星人同士の内部対立や争いが確認された場合、それを詳細に報告すること

- 情報は一元化し、分析チームで精査すること

これにより、異星人内部の分裂状況や反戦派の実態をより正確に把握できるはずです」

「いいわね。でも、現場の兵士たちには、なぜこの情報が必要なのかを納得させる説明も必要だと思うわ」と付け加えた。

「その点は私が説明します。戦争の勝利だけでなく、持続可能な解決策を見つけるためだと伝えれば理解してもらえるはずです」



博士が資料を開きながら言葉を続けた。

「先日報告された情報の中に、興味深いものがあった。ある部隊からの報告によると、戦場で戦闘を避けようとした異星人が、別の異星人によって射撃されたという事例が記録されている」

「それは異星人内部での対立が表面化している証拠と言えるんじゃないかしら?」

「その行為が反戦派に対する抑圧を示している可能性がある…その射撃を行った異星人が、指導層に近い立場にあるのかも調べる必要がありますね」


響子がテーブルに手を置きながらまとめた。


「まずは現場からさらに多くの情報を集め、異星人内部の構造や力関係を明らかにすること。それが私たちにとっての最優先事項になるわね」

「その情報を基に次の行動を決める。その間に、異星人の反戦派ともう一度接触する準備を進めるべきだ」

「分かりました。各部隊への協力要請と情報収集の段取りを早急に進めます。その後、得られた情報を分析し、次の接触に活かします」


こうして、作戦会議は具体的な方針と次の行動を定めたまま幕を閉じた。

智之たちは異星人との戦争の行方を変えるため、新たなステップを踏み出そうとしていた。





読んで頂きありがとうございます。

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